【インタビュー】FAKE TYPE.、2ndアルバムに多彩な客演と真のオリジナティ「これが日本のエレクトロスウィングだ」

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■秘めてたことを取材の場で言ったほうが楽しくできる
■今、“そうだったんだ”って思いながら聞いてた(笑)


──そしてTOPHAMHAT-KYOさんは、その摩訶不思議なトラックに、変幻自在のリリックを乗せていく。たとえば「ヨソモノ」は、かなり社会性が強いリリックですけど、どうしてああいうふうになったのか。

TOPHAMHAT-KYO:これはちょっと、大きな声で言うのがはばかられるんですけど、不法滞在うんぬんの事件があったじゃないですか。あれを見て、日本にいるならルールは守ろうという視点もありつつ、帰る国がなくなっちゃった人もいるわけで、いざ自分がそうなったら、その国の文化にすぐについていけるかな?みたいな、そういうことも考えながら、自分の中で悩みつつも書いたみたいなところがあって。

──社会的な題材でありつつ、自分と向き合って書いた、私的な面も大きいと。

TOPHAMHAT-KYO:そうですね。“一歩でも外に出ればみんなヨソモノ”って、“そうだよなー”みたいな感じです。そこにアイリッシュという異国の曲調が入ってきたんで、異国繋がりで、このテーマになった気がします。やっぱり、曲調からヒントを得ていろいろ考えることが多いので。


▲TOPHAMHAT-KYO (MC)


▲DYES IWASAKI (TrackMaker)

──「FAKE SOUL」とかは、攻撃的なイメージのトラックだから、これは絶対ボースティングだろうと?

TOPHAMHAT-KYO:そうですね。“THE 俺たち”って感じです。俺、勝手にDYESの代弁をしてますから。ヴァース1が自分自身のことを言ってるんですけど、ヴァース2が“たぶんDYESってこういう考えなんじゃないかな”みたいなことを、俺が勝手に書いている(笑)。“スウィングが好きなだけ”とか、“頭からケツまでオリジナルだぜ”とか、FAKE TYPE.は、昔はサンプリングの音楽をやってたんですけど、もう今はやってなくて、DYESがイチから全部作っていることを、その言葉で表現したかったんで。

──そうか、それで“大いなる吾輩の悟り”という言葉を使って暗に示しているのか。今気づきました。

TOPHAMHAT-KYO:そうなんです。

DYES IWASAKI:“とっくのとうに卒業した嗜好品”というのも、僕が酒とタバコをやめたということです(笑)。そういうのがリリックに込められていて、この曲めっちゃ好きです。

──“やりたいこと以外やらない だけどそんな俺が好き”って DYESさん言いそうですね(笑)。最高ですね。

DYES IWASAKI:やりたいことしかやりたくないです。昔の人生が、やりたくないことをやってたこともあって、音楽で食べていくまでが辛かったので。やりたいことだけやって、生きていくのは幸せだなと思います。



──アルバム前半は、攻撃的なイメージの曲が並んでますよね。攻撃的というか、メッセージ性が強いというか。「魔祟華麗奴」もそうですけど。

TOPHAMHAT-KYO:「魔祟華麗奴」は、タイアップさせていただいたSCRAPさんの企画が、『夜の仮面(マスカレード)サーカスからの脱出』というタイトルだったので、じゃあ仮面をモチーフに作りましょうということで始まったものですね。

──“その嘘偽りの仮面じゃ 俺のこの眼は誤魔化せないぜ”とか、普通にTOPHAMHAT-KYOさんが言いそうなリリックだなと思いましたけどね。

TOPHAMHAT-KYO:やっぱり、どうしても取り繕っちゃったりするじゃないですか。でもそれは後々めんどくさくなるなって、今まで生きてきて理解してきたので。どうしてもいい顔をしちゃったりしてたんですけど、のちのち自分が苦しくなるし、相手にも勘違いさせちゃうから良くないなという、ちゃんと自分の態度を表して意思を伝えたほうが絶対にいいなと思ってたので、それを歌詞にしようということですね。


──4曲目「BARBER SHOP feat. 青妃らめ」はどうですか。

TOPHAMHAT-KYO:この曲はミュージックビデオを見てもらったら面白いと思うんですけど、ミュージックビデオの雰囲気としては…今のSNSって、断片的なものだけが表に出て、それだけで炎上しちゃうみたいな状況がけっこうあると思うんですよ。そこからアイデアを引っ張ってきて、断片的に切り取ることをやってる人が床屋さんだったら面白いなみたいな。表では床屋さんをやってるんですけど、裏では断片的なネットの情報を引っ張ってきて、そこだけ見せて印象操作してる…悪いことをやってる奴みたいな物語を作れたらいいなと思って作りました。ミュージックビデオを見てもらえば、たぶん面白くなると思うんですけど、僕らもまだ見てないので。

DYES IWASAKI:楽しみだよね。

──実際に、“床屋と銭湯は噂話の出どころ”っていう言い方も昔からありますし、面白い設定ですよね。ちなみに、青妃らめさんとはどんな馴れ初めで?

DYES IWASAKI:青妃らめさんとは、「Mister Jewel Box」っていうアオの曲があるんですけど、それを“歌ってみた”で上げてくれてて、それがめちゃめちゃ良かったんですよ。いつか一緒にやれたらいいねという話をしていて、もう“この曲だろう”ということで呼んでみました。



──そこから「ヨソモノ」を経て6曲目の「アングラ劇場 feat. nqrse」へ。これは自分たちのことを歌ってる曲ですよね。

DYES IWASAKI:これはエモい曲だよね。俺らが高校生だから15〜16年ぐらい前なんですけど、『アングラシアター(Underground Theaterz)』っていう、自作曲を投稿する掲示板があったんですよ。そこが僕らのルーツで、僕もラップの曲を投稿してて、アオもラップの曲を投稿してて、お互いのことをその時に知ってたんですよ。だから最初に“このマイクの生まれアングラ劇場”って言ってるんですけど。

TOPHAMHAT-KYO:なるせ(nqrse)ちゃんもそこをちゃんと理解してくれて、そういう歌詞を書いてくれたんだと思います。

──そして、最初に話に出た、物語調の曲としてどうしても入れたかった「Dryad」へ。言葉使いがとても美しくて、幻想的で。

TOPHAMHAT-KYO:ちょっとした絵本みたいなものを目指したんですけど、トラックのベースとなってるのがギターで。ギターって木でできてるじゃないですか。“Dryad=ドライアド”は木の精霊で、物語を書くなら木の何かがいいなと思って、じゃあドライアドを使って書こうかなっていう、これもトラックからヒントを得て書きました。

DYES IWASAKI:「Dryad」は、Johngarabushi(じょんがら武士)さんという、僕らのサポートギタリストの方がいて、ジョンさんと僕でトラックを一緒に作って、だからかなりギターがフィーチャーされてるトラックになったんですけど。

TOPHAMHAT-KYO:昔、乃木坂46がピアノで、欅坂46がギターをメインにしてるとか、そんな話を聞いたことが頭の片隅にあったので。木からギターができてるという頭があって、そういう考えに至ったと思うんですね。


──いろんなイメージが重なり合ってる。すごく面白いです。

DYES IWASAKI:トラックからの影響は、やっぱりデカいんだね。

TOPHAMHAT-KYO:そうそう。でもこういう話、二人では全然しないんですよ。だから、こういう取材の場で初めてわかる。

DYES IWASAKI:今、“そうだったんだ”って思いながら聞いてた(笑)。“なるほど”って。

TOPHAMHAT-KYO:こういう場所で言った方が面白いかな?というのもあるので。すべてわかりきったことをしゃべっても、退屈な時間になっちゃうと思うから。こういう場で、今まで秘めてたことを言ったほうが、楽しくできるかなというのがあって。

DYES IWASAKI:インタビューで何回もしゃべってると、後半のほうは“また同じことしゃべるのか”みたいな気持ちになってくるしね(笑)。

TOPHAMHAT-KYO:だから、ちょいちょい小出しにして(笑)。

──じゃあ、これ以上曲について聞くのはやめよう(笑)。飽きさせたくないし、このあとのインタビュアーさんにも悪いから(笑)。

DYES IWASAKI:いやいや、大丈夫ですよ(笑)。インタビュアーさんによっても、聞かれることが全然違うので、全然大丈夫です。楽しいです。

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