【インタビュー 後編】シンガーズハイ、1stフルアルバムに2つの流儀「ロマンみたいなものと新しくて面白いもの」

■前のほうが好きとか言ったら許さない（笑）
■今のほうが良くできると思って臨んだ再録です

──という、王道あり、チャレンジありの新曲たち。あと、内山くんには歌詞で一つ聞きたいことがあって。「愛の屍」で“愛を伝えるんだ ラブソングはそれだけでいい”と言い切ったのが、最高にカッコいいなと思ったんですね。ズバッと言っちゃいましたね。

内山：そのくらいの気持ちでいます、ということが言いたかっただけなんですけど。基本的にラブソングを歌う人って、“今の僕の恋愛、楽しいです”って感じている人は、いないですからね。だいたい過去のことを後悔しながら歌ってる人のほうが多いんじゃないかな？と思うんですけど、でも僕の友達が文学が好きで、ラブソングの歌詞を聴いて、“感傷マゾ”ってよく言ってたんですよ。「ラブソングは鑑賞マゾだ」みたいなことを言ってたんですけど、その感じにはなりたくなかったんですね。ロックバンドとしてのキャラクター性にも合ってないと思うし、もう一歩進んで、“後悔があってもいい、後悔があるからこそ今の自分があるんだ”ということを言わなきゃダメなんじゃないかと考えて、それで“加害者ぶるのはもうどうでもいいから 愛を伝えるんだ”という歌詞になったんですけど。


──よくわかります。

内山：今までは、“僕のことを理解してほしい”という曲が多かったと思うんですけど、どちらかというと今回のアルバムは、そういうことを一旦捨てたようなつもりでいます。全部垂れ流すような感じで。理解してほしいとかじゃなくて、ただ自分のやりたいようにやってみようという思いが、強かったと思うので。

──この歌詞は、個人的にかなりグッときました。“夜一人になると死にたくなる”(「朝を待つ」)と歌ってた人が、“あなたの為にいつか死ねたらいい”と歌ってるから。考えすぎかもしれないですけど。

内山：ああー。でもそれくらい振り切れる精神力があったほうが、絶対に面白いよなとは思いますね。自分は今まで、学生時代の時とか、面白くない奴という見られ方をしてたんで、振り切ってみたいなというのはずっとあったんですよ。それぐらい言えるようになれたらなって、ずっと思ってはいたので。


──振り切って、完全に一歩前に進んだと思います。内山くんも、バンド全体としても。ここまで新曲中心に聞いちゃいましたけど、既発曲について、アピールポイントがあればぜひ。

みつ：初ライブからほとんど全部のライブでやってるんじゃないか？という曲が、「フリーター」や「daybreak」なんですけど、全部このアルバムのために録り直してます。ライブを始めて2年間で自分が突き詰めた“この曲に一番合うんじゃないか？”というベースの音をそのまま弾けたのが「フリーター」で、前の音源と比べても全然しっくりきますね。「daybreak」に関しては、レコーディングの時の基本的な役割として、ボーカル、ドラム、ギターは喜怒哀楽の感情を乗せる部分だと思うんですけど、ベースは安心感の部分を担っていると思っていて、だいたいの曲はそこを意識して弾いているんですけど、「daybreak」を弾いている時は本当に感情をぶつけられたというか、普段は立場的にできないことをやっていて、そのまんまライブの音を入れられた気がして、すごい気に入ってます。

──そこは大きいポイントですね。

みつ：一番自分のフェチを詰め込んでるのは「climax」なんですけどね。どう考えても、メロコアのいいところを全部詰め合わせたみたいな曲で、ライブでも一番上がるし、「climax」は全部がお気に入りですね。アルバムの最後の曲にできて良かったです。




──再録音曲は、みなさんぜひ聴き比べてください。面白いので。

ほり：「daybreak」とか、“前より速くね？”って。

みつ：これで「前のほうが好き」とか言ったら、俺は許さない（笑）。っていうぐらいの気持ちでいます。

内山：それは本当にそう。今のほうが絶対もっと良くできると思って臨んだ再録だから。

──リリースツアー、楽しみにしてます。アルバムの曲は全部やってくれますか。

内山：はい。

ほり：やれるように頑張ります（笑）。

──そして、伸びしろしかない内山くんが、これからどんな曲を作ってくれるのか。

内山：作品に関しては「なんでもやりたい」とずっと言ってたんですけど、自分の中で大きく分類できるようになってきた気がしていて。自分のやりたいことを大まかに分けると、自分がいいと思っているロマンみたいなものを作りたい自分と、単純に音楽として新しくて面白いものを追求していきたいなと思う自分もいるんですよ。聴いたことないようなタイプのものとか、J-POPとしての新しい一面を作りたいなと思ってる自分もいて、その二つをうまい具合にできないかな？というものが、今回のアルバムにはわかりやすく出てるんじゃないかな？と。


──それは重要なポイントですね。

内山：「パンザマスト」がいい例で、ああいう無骨なロックバンドっぽい音楽で、オクターブでハモるのはあんまりないよなって思うし、そういう“いいとこ取り”が今後のうちの武器になるのかなという気持ちではいますね。

──2024年も期待してます。

内山：まずはツアーを頑張ります。ぜひ遊びに来てください。

取材・文◎宮本英夫




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