【ライヴレポート】LUNA SEA、<DUAL ARENA TOUR>を経て、輝く35周年へ「伝説の上をいく」

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LUNA SEAが、10月のKアリーナ横浜を皮切りにスタートさせた<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>は、初日にアルバム『MOTHER』のツアー<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>、2日目にアルバム『STYLE』のツアー<UN ENDING STYLE>をそれぞれ再現するという画期的な2DAYSずつのライヴとなるものだ。横浜から福岡、仙台、名古屋を巡り、12月末、ついにファイナル大阪の地へ辿り着いた。大阪2DAYSのライヴタイトルは<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023 -END OF DUAL->。その最終日はカウントダウン公演<UN ENDING STYLE -COUNTDOWN SPECIAL->として行われた。

◆LUNA SEA 画像

筆者は大阪公演の前、横浜と福岡公演にも足を運んだが、“再現”というテーマへの緊張感と初日ならではの爆発力を孕んだ横浜から、2公演目となった11月の福岡だけでも如実な変化があった。一夜限りではないからこそ、より深くに踏み込んでみようとする好奇心、もっと行けるはずだという確信は、これまでの過去作コンセプトライヴと大きく違う。そこに久しぶりのツアーを楽しむムードが加わり、どこかアットホームな空気が生まれていたのも印象的だった。

さらに、その後、2作品を再録したニューアルバム『MOTHER』と『STYLE』がリリースされ、細かい部分で施されていたアレンジや新解釈が判明する(RYUICHIインタビュー真矢インタビュー)。発表されたニューアルバムを携えてのツアー後半は、オーディエンスの理解度も一体感も格段に増したに違いない。音源を発表し、それをライヴで共有して進化させていく。今までもそうしてまっすぐ進んできたLUNA SEAの強さを、改めて証明してきたのだ。

一方で、ツアー中にあまりにも想定外な訃報が相次ぎ、メンバーにも少なからず影響があったものと察する。誰もが、いつか来る“終わり”を意識せざるを得ない状況の中、LUNA SEAはブレることなくしっかりと地に足をつけ、大阪城ホールのステージを迎えた。

   ◆   ◆   ◆


『MOTHER』の記念碑的オープニングナンバー「LOVELESS」で幕を開けたツアーセミファイナルとなる12月30日。「おまえら、会いたかったぜ!」とRYUICHIが叫び、序盤からエネルギッシュに加速していく。叫び声のようなギターが会場を蹂躙する「SLAVE」から、本能を解き放つ「FACE TO FACE」の深遠なる世界に大阪城ホールが飲み込まれた。

二部構成の前半ラストは、<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>セットリストの1つのハイライトと言える「GENESIS OF MIND ~夢の彼方へ~」。もともとレクイエム的な成り立ちを持つ楽曲だけに、壮大なサウンドスケープが人々の祈りを伴って空へ昇っていくようだった。


後半は、「IN FUTURE」「BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー」「TIME IS DEAD」と攻撃的なナンバーを畳みかけ、キラーチューン「ROSIER」で爆発。アンコールの「WISH」まで勢いを落とさずに駆け抜けた後は、ステージも会場にも笑顔が溢れていた。

アンコール以降、スマホでの撮影が可能な“#LUNAPIC”タイムは、もはやお馴染みのもの。ライヴ終了後はSNS上にレアショットが多数投稿され、ツアーの盛り上がりに一役買っていたと言える。スマホ撮影とは思えないほどの写真が多いこれら投稿は、隠すことなく“今の自分たちの姿”を広く拡散したいという自信と、“今のLUNA SEAのカッコよさ”を伝えたいというSLAVE(=ファン)との信頼関係のなせる技だろう。


「今夜で終わってしまうと思うと、ちょっと寂しくなっちゃいますね。でも、このあと一生やらないわけじゃないから。アルバムも共有したし、いつだって、またこういうカッコいいツアーができるんだから」──RYUICHI

RYUICHIから希望と野心に満ちた言葉が飛び出した<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>のファイナル。そのラストを飾るのはもちろん「MOTHER」だ。SUGIZOが12弦ギターで奏でる透明感溢れる音色に合わせ、イントロから情熱的なフェイクを重ねていくRYUICHI。ミラーボールの光がきらめく中、INORANのアコースティックギターの柔らかな音色が寄り添い、一歩一歩大地を踏みしめるような真矢とJのリズムが響き亘る。ところどころ苦しそうな部分がありつつも、アドリブを加えながら歌い切ったRYUICHIの歌声には鬼気迫るものがあった。圧巻の熱演に大きな拍手と声援が湧き、5人は穏やかな表情でステージをあとにした。


   ◆   ◆   ◆

2日目となる12月31日。<UN ENDING STYLE>および<DUAL ARENA TOUR>のファイナルであり、LUNA SEAにとって2010年以来13年ぶりとなるカウントダウンライヴ<DUAL ARENA TOUR 2023 -END OF DUAL- UN ENDING STYLE -COUNTDOWN SPECIAL->だ。いつもの終演時間にあたる22時に開演ということで、会場には少しそわそわした空気が漂っている。22時ジャストに暗転し、2023年最後の夜は「WITH LOVE」で厳かに始まりを告げた。


真矢の4カウントとRYUICHIのシャウトを合図になだれ込んだ「G.」からは、一転して驚異的なアグレッションを解き放っていく。「我がメンバーたちよ、飛ばしていくぞ!」というRYUICHIの煽りには早くも荒々しさが宿り、それに応える4人のサウンドからも、オーディエンスの歓声からも、ファイナルに懸ける気合が漲っていた。

ツアー<UN ENDING STYLE>当時のファイナル公演<UN ENDING STYLE TOUR FINAL Christmas STADIUM ~真冬の野外~>を彷彿とさせるセットリストは、大晦日に集ったSLAVEたちを讃えるように今ツアーでは初めて「SLAVE」が両日演奏されたほか、SUGIZO、INORAN、Jがユニゾンでリフを刻むセンセーショナルな響きが秀逸な「1999」、そして宇宙的な音像を描いた「Ray」からの「RA-SE-N」は、渦巻くグルーヴに呼吸を忘れてしまいそうなほどだった。RYUICHIの魂の咆哮とSUGIZOのギターソロが絡み合う間奏は、もはや狂気的と言っていい。


同時に、『STYLE』の楽曲で特に感じたのが、ツアー全体の音響バランスの印象としてJのベースサウンドの際立ち。野性味と凶暴さを剥き出しにした音作りに仕上がっていたことだ。1996年当時の骨折事件まで再現したベーシストは伊達じゃない…という冗談はさておき、他のバンドならば抑えろと言われかねない音量でも、全員の音が重なると完全なる拮抗状態になるのだから凄まじい。もちろん広大な会場ゆえ、観る場所によって音の響き方に差異があると思われるが、幅広い表現力を持つ真矢のドラムとともに低音が深まったことで、グルーヴがますます躍動的になっていると感じた。

そんな5人5様の個性と化学反応が存分に味わえるのが、前半のラストに披露された「SELVES」だった。新録アルバムバージョンでは原曲者であるINORANによってリアレンジが施され、印象が変わった曲でもある。言うなれば、ガラス細工の如き儚さから、“この熱をいつまでも”と願う愛情に溢れた楽曲へ。INORANのウィスパーボイスやコーラスも力強く、アウトロにSUGIZOのヴァイオリンが加わるライヴアレンジで、繊細でありながら骨太という新しい世界観を築き上げた。


休憩を挟み、二部構成の後半は真矢とJのリズム隊によるセッション「BACK LINE BEAST」からスタート。真矢の怒濤のドラミングから始まり、Jの獰猛なベースラインと絡み合い高め合っていく昂揚感は、このふたりにしか生み出せない。真矢が「まだまだ行けんだろ! 2023年、最後の力を振り切ろうぜ!」「大阪、おまえら最高にカッコいいぜ!」と叫び、「この会場にいる奴らも、配信で繋がってる奴らも、全員で盛り上がっていくぞ!」とJが畳みかける。夜が深まりつつある中、さらにギアを上げて後半戦に突入した。

「Déjàvu」や「ROSIER」では、LEDヴィジョンにミュージックビデオが映されていたが、20数年を経てなお、RYUICHIの眼力の鋭さを始め、全員のギラついた華やかさがまったく衰えていないことに驚かされる。常に前進する意志が滾っているから、過去の曲を演奏していても常に新しく生まれ変わり続けることができるのだ。


「みんなと共に、今夜、伝説を超えていこうぜ!」とRYUICHIが宣言し、本編ラストに「HURT」を投下。マグマを思わせる赤い照明の下、5人の音と声が何かを超えていかんと激しくぶつかり合う。それは、過去の栄光なのか、2023年に味わった哀しみなのか、はたまた1秒前の自分自身なのか。すべてを燃やし尽くすかのような気迫で“2023年のLUNA SEA”の圧倒的強靱さを示し、年内最後の1曲を完遂した。

2024年の到来まで約10分となった頃、清々しい表情で5人が再びステージに現れた。RYUICHIが「2023年もいよいよ終わりを告げようとしてるね。この瞬間を共にいられるって最高じゃない?」と語りかけ、ツアーについて「もちろん懐かしさとか、再現したいって思いもあったけど、それ以上にめちゃめちゃ新しい瞬間が多くあった」と振り返る。


“#LUNAPIC”タイムの開始を告げたタイミングで、時計が示す時刻は23:55。残り5分を繋ごうとRYUICHIがJに話を振ったり、INORANが「スマホライト照らしてみて」と提案したり、SUGIZOと真矢がその景色を撮影したりと、あくまでマイペースなのがLUNA SEAらしい。

そして、ついにその瞬間。10カウントを経てRYUICHIが「HAPPY NEW YEAR!」とコールし、そのまま「WISH」が贈られた。銀テープが舞う恒例の光景が、いつもより眩しく映る。新年の幕開けに相応しいピースフルなメロディとシンガロングが会場に降り注いだ。


続いて、「この特別な夜に…生まれたての今夜、今この瞬間にいちばん相応しい曲を。愛を込めて」と、ツアー初披露となった「MOON」に大きな歓声が上がる。RYUICHIが丸い手鏡を掲げてライトを反射させる懐かしい演出も盛り込まれ、無垢な美しい旋律に酔い痴れた。その後、2024年初のメンバー紹介へ。

「ひとつ予言しましょう。2024年は、2023年を超えて、最高な1年にしようぜ! ここにいるみんなも、配信を観てるみんなも、俺たちLUNA SEAが最高の1年にします。今年もよろしく!」──真矢

「みんなとこうやって新しい年を迎えられるなんて、ほんとに言葉がないね。バンドにとって大切な35周年を迎える年をみんなと迎えられたのは、なんか運命だよね。2023年はいろいろお世話になりまして、お騒がせもしました。2024年は(骨を)折らないようにしますので(笑)。今年もよろしく!」──J

「あけましておめでとう! 今年もよろしくね。今年35周年、LUNA SEA、結構いくよ。いくからね、ついてこれますか!? よろしく!」──INORAN

「2024年、LUNA SEA 35周年。駆け抜けますので、よろしくお願いします。そして、1年後の今頃、ここにいる全員がまた集まれるような、そういう機会を夢見て。1年後にまた会いましょう。最高に愛してます」──SUGIZO

SUGIZOに紹介されたRYUICHIは、“♪心から キミに伝えたい”と「I for you」の一節をオフマイクで届けるというパフォーマンスで愛と感謝を表現した。会場全体に響く声量はさすがである。思えば、まだ万全ではないとはいえ、公演を重ねるごとに伝わってくる彼の声の進化は目覚ましかった。間違いなく相当な努力と覚悟があったはずだが、その上で「2024年、LUNA SEAはさらに高い世界を、伝説の上をいくからね。みんなもしっかりついてきてね!」と頼もしい言葉で締め括るのがRYUICHIらしい。


「IN SILENCE」「IN MY DREAM (WITH SHIVER)」と爽やかなメロディの楽曲で彩ったあと、インターバルを挟んで再び登場したメンバーから嬉しい情報が発表された。

「2024年、LUNA SEAは、過去最大規模のツアーを行います。昨年行けなかった各地のみんなに会いに行きたいと思います。みんなの想像を超えるツアーにしたい。2024年、みんなとどこまで翔べるのか、確かめたいと思います」──RYUICHI

その言葉を受けて、正真正銘のラストに「FOREVER & EVER」が贈られた。<UN ENDING STYLE TOUR FINAL Christmas STADIUM ~真冬の野外~>の映像とリアルタイムの映像がシンクロする演出に涙腺が緩み、不朽のメロディが心に染み渡る。

初日の「MOTHER」はどこまでも神秘的である一方、「FOREVER & EVER」でのエンディングは包容力と力強さを湛えていた。1990年代という激動の時代に誕生し、2023年に新たな血を通わせて甦った『MOTEHR』と『STYLE』。ただ金字塔作品であるというだけでなく、この2作を合体させたからこそ浮かび上がる物語とメッセージに、改めてこのツアーの意義を体感した。最後にINORANが「最強のバンドが、さらに絆を最高にしたツアーになったと思います!」と語っていたように、再録アルバムと<DUAL ARENA TOUR>を通して、メンバー自身も、想像以上に大きな経験値と自信を得たに違いない。なお、大阪公演両日はU-NEXTで生配信され、2月29日までそのアーカイブを観ることが可能だ。歴史的な2日間を、ぜひ何度も堪能してほしい。


世の中としては決して順風満帆とは言えない年明けとなった2024年。まだ“過去最大規模のツアー”の全貌は明かされていないが、過去を超えて未来へ進もうとしているLUNA SEAの存在は、確かな希望としてそこに輝いている。

取材・文◎後藤寛子
撮影◎田辺佳子/岡田裕介

■<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023 -END OF DUAL->セットリスト


▼<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>2023年12月30日(土)@大阪城ホール
01. LOVELESS
02. PRECIOUS...
03. JESUS
04. SLAVE
05. FACE TO FACE
06. CIVILIZE
07. RAIN
08. GENESIS OF MIND
Drum solo
09. FATE
10. AURORA
11. IN FUTURE
12. BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー
13. TIME IS DEAD
14. ROSIER
encore
en1. TRUE BLUE
en2. BELIEVE
en3. WISH
W encore
en4. MOTHER

▼<UN ENDING STYLE -COUNTDOWN SPECIAL->2023年12月31日(日)@大阪城ホール
01. WITH LOVE
02. G.
03. END OF SORROW
04. SLAVE
05. 1999
06. Ray
07. RA-SE-N
08. SELVES
Drum solo
Bass solo
09. Déjàvu
10. DESIRE
11. TIME IS DEAD
12. ROSIER
13. HURT
encore
en1. WISH
en2. MOON
en3. IN SILENCE
en4. IN MY DREAM
W encore
en5. FOREVER & EVER

■配信<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023 -END OF DUAL->

▼『MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE at 大阪城ホール』
ライブ配信:2023年12月30日(土)19:00~ライブ終了まで
▼『UN ENDING STYLE -COUNTDOWN SPECIAL- at 大阪城ホール』
ライブ配信:2023年12月31日(日)22:00~ライブ終了まで
※見逃し配信(共通):2024年1月1日(月)正午12:00~2024年2月29日(木)23:59まで(予定)
配信詳細:https://t.unext.jp/r/lunasea

■2024年、過去最大規模の全国ツアー開催決定


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