【インタビュー】由薫、1stアルバム『Brighter』に1年半の軌跡「“より輝きます”という決意を表明したかった」

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シンガーソングライター由薫が2024年1月17日、1stアルバム『Brighter』をリリースした。2022年6月のメジャーデビュー以降、アルバムリリースまでの約1年半に、7作のデジタル&CDシングルと1枚のEPを発表してきた。映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』主題歌「lullaby」、ドラマ『星降る夜に』主題歌「星月夜」、ドラマ『たとえあなたを忘れても』主題歌「Crystals」、アニメ『 メタリックルージュ 』 オープニングテーマ「Rouge」をはじめとする話題作のタイアップを次々と獲得。「星月夜」はデジタル総再生数が4億回を突破するなど、注目度も関心度も勢いも高い。

◆由薫 画像 / 動画

ボーナストラックを除く全12曲を収録したアルバムは、この1年半の音楽的な広がりも映し出されて興味深い。「lullaby」「No Stars」「星月夜」はプロデュースをONE OK ROCKのToruが担当したほか、「Blueberry Pie」はMONKEY MAJIKがプロデュースを手掛けるなど、第一線級のミュージシャンとのタッグが経験値を高め、米国オースティンで開催の<SXSW MUSIC FESTIVAL 2023>参加や、単身スウェーデンに乗り込んで現地アーティストと共に行った楽曲制作は知見を深めたようだ。

それらメジャーデビュー以降の軌跡が刻み込まれたアルバムが『Brighter』であり、現在進行形の彼女の輝かしい未来を感じさせる仕上がりだ。「自分のなかのひとつのパラグラフを1枚のアルバムにすることができた」とは由薫自身の言葉である。第1章の集大成となった『Brighter』について、じっくりと語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。


   ◆   ◆   ◆

■リリースしてきた曲を並べる以上に
■何か伝えられるものがないかなって


──前回インタビューが2023年10月開催の<2nd TOUR “Blue”>直前でした。さまざまな思いを持って臨んだツアーだったようですが、ライブを終えての感触はいかがですか?

由薫:楽しかったですね。それ以前のライブは結構音源に近い形でやっていたんですけど、<2nd TOUR “Blue”>はバンドサウンドを重視したセクションを作って。やりたかったことが実現できました。これからもライブならではの生感を大切にすることを目指していきたいと思っているので、<2nd TOUR “Blue”>はその序章という感じで、できたかなと思っています。

──実り多いツアーだったようですね。新曲も披露してましたね。

由薫:ツアーのテーマとなった「Blue Moment」をやりましたね。<2nd TOUR “Blue”>は開催前に「Crystals」のリリースがありましたけど、<1st TOUR “Alone Together”>以降の新曲リリースがあまりなかったんですね。最初のツアーと2ndツアーはセットリストが大きく変わることがないなかで、どういうことを伝えたいかなと思ったときに、「Blue Moment」を軸にセットリストを考えていこうと思ったんです。「Blue Moment」は、夜が明けていくイメージの曲だったのでステージのフィナーレ前くらいに配置したんですけど、ライブから何か感じ取ってもらえていたら嬉しいです。


──その夜が明けていくイメージから、今回の1stアルバム『Brighter』へと繋がっていくわけですね。2022年6月に「lullaby」でメジャーデビューして、待望の1stアルバムとなりますが、アルバムの構想はいつ頃から具体的になっていたのでしょう?

由薫:チームで話していくなかでは、実はこれまでにも、2回くらいアルバムをリリースするかもというタイミングがあって。その時々で違うことをコンセプトにしようと思っていたんですね。結果的に、2024年1月リリースが決まって、自分のなかでは、これまでのリリース曲をひとつにまとめたものがアルバムだよね、みたいなマインドにシフトしていたんです。途中まではそんなマインドでいたんですけど…いざアルバムにするとなったとき、アルバムである意味合いをしっかりと説明できないといけないと思って。実は収録する予定だった曲を抜いて、違う曲を入れたりもしたんです。

──デビューからの時間のなかでは、いろんな心境の変化もありそうですしね。

由薫:そうですね。メジャーデビューしてからは、空を見上げるような曲が結構多かったので、そういうニュアンスをアルバムタイトルに込めたいなと思ったり。あと、新曲「Rouge」はTVアニメ『メタリックルージュ』のオープニングテーマのために書き下ろした曲なんですけど、「Rouge」が入るとなったときに、振り幅が大きなアルバムになりそうだなと思って。そこで、今までリリースしてきた曲を並べる以上に、何か伝えられるものがないかなと考えたんです。

──なるほど。

由薫:そこで<2nd TOUR “Blue”>やツアーコンセプトとなった「Blue Moment」…“夜が明けたその先に輝く”という言葉をアルバムタイトルにしたいなと思ったんです。そして『Brighter』をタイトルにして。さらに、アルバムとして聴いたときに、それぞれの曲を完結できるような曲がもうひとつほしいなと思って、締切ギリギリでアルバムを締め括る「brighter」を作ったんです。それで『Brighter』というアルバムを完成させた感じでした。



──デビュー以降、「空を見上げるような曲が多かった」という話でしたが、いろいろな迷いを消化して、夜明けを迎えて、一歩一歩進んでいくアルバムになっていると感じました。そのなかで、サウンド面での振り幅の大きさを担う「Rouge」はシンセサウンドが効いてファンキーでエネルギッシュ。これまでの由薫さんの曲のなかでも異色かなと思います。TVアニメ『メタリックルージュ』のオープニングテーマということも影響していますか?

由薫:“アニメっぽい曲調ってあるよな”と勝手にイメージしていて。オープニングのお話をいただいたときも、そういう感じの曲を求められるのかなって思っていたんです。でも、『メタリックルージュ』の企画書を読んだり、スタッフの方とお話をしたら、いろいろなことを研ぎ澄ませて制作をしていることを感じて。ボンズ(アニメーション制作会社)25周年記念のオリジナル作品でもあるので、プロフェッショナルな方々がたくさん集まっていて、“いい作品を作るんだ”っていう気合いをすごく感じたんですね。そういう熱量の高さを曲にしたいと思っていました。

──楽曲に関する具体的なリクエストはありましたか?

由薫:リファレンスは1980〜1990年代の曲調だったりしましたね。“これは燃えるぞ!”ってすごくワクワクして制作に向かったんです。最近、主題歌とかの書き下ろしがすごく好きなんですね。“作品が持つテーマを自分の視点でどうアプローチするか”という過程が、自分らしさを一層引き出してもらえる感じがしているので。

──どんなテーマを描いていこうと?

由薫:『メタリックルージュ』という作品は、主人公が人造人間で。アクションとかもあるんですけど、まだ10代の女の子で、普通にチョコレートとかが好きなんです。そのバディとなるのが、実際に戦闘はしない頭脳派の女性で。実はこのアニメではオープニング曲とエンディング曲で、そのふたりのキャラクターを対比する形になっているんです。私はオープニングで、アクティヴな方向性の曲をと求められていたので、やりたいことにピッタリとハマりました。歌詞も2023年3月にアメリカの<SXSW>に出演したときに泊まっていた場所でひたすら書いて。



──そんな前から制作がスタートしていたんですね。

由薫:そうなんです。アニメ作品から“二極の狭間”みたいなことを汲み取ったので、英語と日本語もシームレスに聴こえるようにしたり。あと、普段なら“ルール”とか“ルージュ”とか“エンドロール”とかは英語のネイティヴな発音にするんですけど。アメリカに行ったり<SXSW>でライブをして思ったのは、英語は英語でも、ブリティッシュイングリッシュもあるし、方言もひとつの文化だなということで。だったら、カタカナ英語でもいいんじゃないかって、あえて“ルール”とか“エンドロール”とかも、カタカナの発音のままで歌っているんです。その一方で、英語パートでは英語の発音で歌ってというのを混ぜていて。そういうところからも、二極の狭間を感じてもらえたらと。

──歌詞やサウンドだけでなく、発音も。

由薫:あと、戦闘ものならではのアクティヴな感じは今までの私の引き出しにはなかったものなので、お気に入りの曲になりました。結構前から制作していたんですけど、アニメが始めるまでオープニングテーマを担当することも言っちゃダメだったので(笑)、ずっとファイルに入れたまま、ひとりで聴きたいときに聴いたりしていて。自分でもテンションが上がる曲なんです。

──アニメが放送スタートして、「Rouge」を収録した1stアルバム『Brighter』リリースも決定して、ようやくみなさんに聴いてもらえますね。

由薫:はい。

◆インタビュー【2】へ
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