【インタビュー】由薫、ドラマ『たとえあなたを忘れても』主題歌「Crystals」に今という瞬間「曖昧だけど確かにあるようなもの」

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由薫が10月30日、新曲「Crystals」を配信リリースした。同楽曲はドラマ『たとえあなたを忘れても』の主題歌として書き下ろしたミディアムバラード。大切なものを失いながらも懸命に生きる男女が、運命的にめぐり会う切ない純愛物語『たとえあなたを忘れても』に寄り添う詞曲が、心を震わせ光り輝かせる仕上がりだ。

◆由薫 画像 / 動画

由薫にとっては、テレビ朝日系ドラマ『星降る夜に』の「星月夜」に続く二度目のドラマ主題歌。そのサウンドは「Crystals」という曲タイトルどおり、透明感のある歌声が美しく儚く強い。「ずっと心の中に感じていた記憶、愛、夢などの、曖昧だけど確かにあるようなものをあらためて見つめて、楽曲に優しく優しく閉じ込めたいと思いました。クリスタルのように光る二人の“今”を、みなさんと一緒に見守るような曲になっていたらいいなと思います」とは、同曲に対する由薫のコメントだ。

今年5月から開催された自身初のワンマンツアー<1st TOUR 023 “Alone Together”>、7月にスウェーデンの現地アーティストと共に制作された楽曲「Blue Moment」がもたらしたもの、そしてニューシングル「Crystals」制作秘話について話を訊いた。


   ◆   ◆   ◆

■クリスタルが光っているイメージと
■それが瞬間を表現しているイメージ


──2023年5月からの東京、大阪、名古屋を回る初のワンマンツアー<1st TOUR 023 “Alone Together”>を行ないました。ツアーを終えて5ヵ月が経ちましたが、ご自分の中でどのようなものとして残っていますか?

由薫:まずワンマンでのツアーが初めてだったので、すごく特別なものになったなと思います。このツアーはいろいろな“初めて”があって、フルバンドでやったのも、あんなにたくさんの曲を歌ったのも初めてでしたし、何より私のためにライブに足を運んでくれたお客さんたちで会場がいっぱいになったことに、本当に感動しました。ギターを弾いて、ひとりで音楽を始めたところからすると、ゴールのような景色でもあり、でも今の私にとってはスタートでもある。そんなライブになったなと思いました。

──それぞれの会場や場所で、印象に残っていることはありますか?

由薫:ツアー初日が大阪だったんですけど、まずそこで元気をもらえました。たしか、MCでぽろっと「みなさん、私のために来てくれたんですか?」と言っちゃったんですけど(笑)、それくらい感慨深いものでした。ライブではみんなの表情をよく見るように意識しながら、“こういう人たちが私の曲を聴いてくれているんだな”とか、“こんな顔で聴いてくれているんだ”って実感できて。東京はいちばん緊張しましたね。ふと会場を見たときに、友だちの顔が見えたりとかもあったりして(笑)。いちばん予想外だったのは名古屋です。自分の出身地ではないし、イベントで行ったことはありましたがワンマンライブをするのは初めてだったので、“どんな感じなんだろう?”って思いながらライブをしていたところ、すごくアットホームで、“私って名古屋で生まれたんだっけ?”って思うくらい温かく迎えてくださったんです。ひとつのツアーですけど、3都市3様に違うライブができた気分で、それぞれが特別だったと思います。


──ツアーをやって、“もっとこんな曲も作ってみたい”という思いが芽生えたりもありましたか?

由薫:そうですね。お客さんが一緒に歌えるような曲があったら最高に楽しいんじゃないかなって思いました。初めてのワンマンで慣れないところもあったんですけど、どうしたらお客さんにいちばん楽しんでもらえるんだろうかって考えたときに、ライブで一緒に楽しめる曲があるのはいいな、そういう曲を作ってみたいなと思いました。

──得るものが多いツアーだったようですね。そのツアーを経て、10月30日にリリースとなるニューシングル「Crystals」は、ピアノを基調にした美しいバラード曲となりました。テレビ朝日系連続ドラマ『たとえあなたを忘れても』の主題歌でもありますが、曲作りはどのようにスタートしましたか。

由薫:この曲は、1年半くらい前にピアノでデモを作ったものが元になっていて。

──ピアノを軸にというのはデモ段階からだったんですね。

由薫:そうなんです。そのとき、ピアノで曲を作ろうとしていた時期で。新しいことにチャレンジしてみようと思っていたので、物語というよりは場面場面を切り取ったような歌詞を英語で書きました。そこに“Crystals”というタイトルもつけて、ずっと温めていたんです。今回、「この曲がドラマに合うんじゃない?」と言っていただけて、「じゃあ、改めて歌詞を書き直しましょう」となったんですけど、この“Crystals”というタイトルがドラマの世界観にも合うんじゃないかということに気づいて、そこからはずっとずっと考える日々でしたね。ドラマのテーマが“記憶”ということだったので、記憶ってなんだろうなとか、私にとっての記憶とは?とかすごく考えましたし、タイトルにつけた“Crystals”という言葉はどういうことを表現しているんだろうって考えたりもしていて。レコーディングのギリギリまで歌詞を何度も変えたりしていった曲なんです。



──ドラマ自体のキーワードにもピアノがあるので、アレンジでピアノが入ったのかなと思っていたんですが、元々ピアノで書いた曲だったんですね。

由薫:そうなんです。そこも偶然の一致でしたね。デモ作りのときも、“今という瞬間”みたいなことを考えながら作っていたので、そういう部分でも奇跡的に合致しました。時を経て、曲を作ったときになんとなく考えていたことの答え合せをするような感覚でした。

──曲と作品が出会ってくれたんですね。最初のデモに“Crystals”というタイトルをつけたのはなぜですか?

由薫:曲が変化していく過程で、唯一変わらなかった歌詞がサビ頭の、“Crystals are made out of miracles”という一文なんです。そのときは全然歌詞が出てこなくて、英語でもうまく歌詞に表現できないっていうのがあって。今の自分から自然に出てくる言葉ってなんだろう、それを歌詞として書いてしまおうって思ったんです。なので、元々の歌詞には“アップルパイ”という言葉が入っていたりもしたんですけど(笑)。その中で、急に思いついたサビが先ほどの一文だったんです。そういう無意識から出てきた言葉って、実はその時の自分を表しているんじゃないかなって思うし。後々振り返っても、この一文が自分としては何か言いたげな一文だったなと思って。これは残してみようってなったんです。


──今はこの一文を、由薫さんはどう解釈していますか。

由薫:私のイメージの中にあるクリスタルは無色透明で、いろんな面に光が当たってキラキラと反射するもので。今っていう瞬間みたいなものとすごく合うなって思ったんです。だから、1行1行に瞬間を切り取った元々のデモのイメージがあって、クリスタルやミラクルという言葉がふと出てきたんだろうなって思います。最初のデモから時を経ても、クリスタルが光っているイメージと、それが瞬間を表現しているというイメージはずっと持ったままだったので。それをうまく日本語と英語とで改めて描くことができたらいいなと思って、歌詞を書き始めた感じでした。

──新しい書き方をした曲がこうして仕上がったことは、今後への自信にもつながりますね。

由薫:そうですね、あとはデモが完成したときに秘めていた思いみたいなものを成就できた感じもあります(笑)。曲には、そういう直感的な力みたいなものがあると思うので。それを残すことができたのが嬉しいですね。


──「ピアノで曲を作ろうっていう時期」とのことですが、ギターではなくピアノで曲を書いてみようとか、新しいやり方をやってみようという時期は、何か迷いのようなものも抱えていたんでしょうか。

由薫:それまではギターで曲を作っていて、自分がいきやすい世界観やコード感、書きやすい歌詞みたいなものがわかってきてしまったというのはありましたね。なので、別の切り口から曲を書いてみようと思って、ピアノで。これが結構うまくはまって、今もやっているんです。元々そんなにピアノを弾いてなかったのもあるので新鮮な気持ちで曲作りができています。

──ギターで作る曲、ピアノで作る曲で、違いがある?

由薫:全然違うなと感じます。ギターで作るときってメロディと歌詞が引き出される感覚があるんです。ギターでコードを弾いて、そのコードに沿わせる形でメロディや歌詞をつけていくイメージなので。でもピアノは、私自身がピアノで難しいことをできないのもあるんですけど、作り上げるイメージが強い。流れに身を任せて曲ができるわけじゃないというか。自分でイチからメロディを選びとって作らなきゃっていう意識があるんですよね。最近はそのへんを使い分けたりもできるようになってきましたけど、そういう意味で新鮮な曲作りができる。だからピアノもすごくいいなと思っているんです。

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