【インタビュー】moon drop、ラブソングだけを歌い続けるバンドの四季折々「実らなかった恋にも間違いなく意味があった」

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■“気持ち悪い”に振り切ろうと思って
■好きな人に言ったら完全にアウトです


──「往日」は穏やかなトーンのサウンドですけど、描かれているのはこれも恋の厄介さですね。自分から別れを切り出しておきながらも、複雑な感情を渦巻かせていますから。

浜口:「忘れたい」と言っているのに忘れられなかったり、気にしないようにしているのに気にしちゃうこととかは、恋愛あるあるだと思います。“無理に忘れなくてもいいんじゃない?”っていう想いが詰まっている曲ですね。

──恋愛あるあるという点だと、「君の猫になりたい」「ダダ」辺りもそうなんだと思います。ざっくり言うと…恋をしている人のキモさが出ている曲ですね。

浜口:はい。「君の猫になりたい」と「ダダ」は、アルバムのキモいゾーンです(笑)。こういう気持ちって表には出さないけど、心の奥底ではみんな思っているんじゃないですかね?

坂:僕もこういう気持ちは、よくわかります。好きな人に言ったら怯えられるでしょうけど(笑)。

──好きな人に“♪最近はもういっそ君になってしまいたいと ずっと考えてます”と言ったらどうなるんでしょうか?

坂:全てが終わります(笑)。


▲坂 知哉(B, Cho)

──こういう感覚は、多かれ少なかれありますよね。好きな人が好きだと言っている音楽を聴いてみたり、身に付けているものを真似したりとかは、心当たりがある人が結構いるはずです。

浜口:そうなんですよね。

──ライブに来てくださるお客さんが、みなさんの服装を真似することとか、あるんじゃないですか?

浜口:(原)一樹と同じ上着を着ている人がいたよね?

原:いたね。通称・青ジャン(笑)。ライブハウスの楽屋に、フロアの様子が観られるモニターがあったんですけど、“なんか見覚えのあるジャケットを着てる人がいるな”と思ったら、僕と同じだったんです。たまたまなのかもしれないですけどね。

──「ダダ」で描かれているような感情も、理解できる人が実は多いと思います。“♪君をなめてみたい” “♪うなじを噛んで 食べてみたい” “♪耳の裏にも住んでみたいです” “♪おへその形を形どりたい” “♪君の歯ブラシを使いたい” “♪爪も髪も部屋に飾りたい”とか、かなりキモい表現が連発されていますが。

浜口:好きな人のことを考え過ぎるあまり、ダダをこねるかのような感じになっていく様子を歌っています。

坂:この曲、文字だけ見るとやばいね?

浜口:メロディがないとやばい(笑)。

──“♪耳の裏にも住んでみたいです”とは、具体的にはどういう願望なんでしょうか?

浜口:“気持ち悪い”に振り切ろうと思っていたので、歌詞を書いていたら出てきちゃって(笑)。これも好きな人に実際に言ったら完全にアウトでしょうね。

──気持ち悪いラブソングは、moon dropならではの作風のひとつとして確立されつつあるのかもしれないです。いずれ“キモい曲限定ライブ”とか“キモい曲ベストセレクションアルバム”とかできるのかも。

浜口:なかなか気持ち悪いことになりそうですね(笑)。こういう曲もmoon dropの武器になっていったら面白いなあと思っています。


▲原 一樹(Dr)

──歌詞にパンチが効いた曲も、サウンドアレンジが入念に練られていますね。「ダダ」も凝っているじゃないですか。

浜口:はい。「ダダ」は気持ち悪い音が鳴っています。アレンジをお願いしたSUNNYさんが「気持ち悪さを表現してみました」と言っていました(笑)。SUNNYさんと一緒に作っていく曲は、毎回アレンジの勉強になるんです。

──サウンドと歌っている感情のコンビネーションが独特という点だと「グッバイ僕の恋人」ですね。サウンドは明るい雰囲気ですけど、切ない感情が伝わってきます。“♪どうかお幸せに”と言った直後に“♪死ぬほど後悔すればいいよ”と歌っているのもインパクトがあるポイントです。

浜口:お客さんとシンガロングしたいですね。“異様な空間である”というのがライブハウスの魅力のひとつだと思っているんです、僕は。たくさんの人が“♪死ぬほど後悔すればいいよ”と一斉に叫んでいる光景って、なかなか異常じゃないですか? そういうのも楽しみなんですよ。

──お客さんそれぞれの胸の内にある恋愛に関する怨念が一斉に放出される曲になるのかもしれないですね。

浜口:存分に想いを込めて叫んでほしいです。みなさんの鬱憤を成仏させられる曲になったらいいですね。

──こういうアクの強い曲もある一方で、爽やかな仕上がりの「僕の季節」「ヒメゴト」「晩夏の証」も際立っているアルバムです。この3曲は、1990年代辺りの日本のギターロック的なテイストも感じます。

浜口:懐かしさが漂うメロディを作るのが好きなんですよね。今、挙げていただいた3曲は、特にそういうのが全面に出ていると思います。

──みなさんの親御さんくらいの世代も口ずさんでくださるんじゃないですか?

浜口:そうですね。親子でライブに来てくれるお客さんもいますから。

清水:僕の親も「moon dropは、良い曲が多いね」と言っています。

原:アルバムを送ると、「○曲目が好き」とか連絡が来ます。嬉しいことですね。

浜口:懐かしさの中にmoon dropらしさ詰め込むのは、これからもやっていきたいです。



──「晩夏の証」は夏の曲ですね。他にも季節感がある曲がいろいろ生まれたから、アルバムのタイトルが『君にみた季節』になったんですか?

浜口:そうなんです。

──季節感を出すことは、意識していましたか?

浜口:意識はしていなくて、気がついたらそうなっていました。でも、「晩夏の証」に関しては、夏の曲として作ったんです。夏の曲はアップテンポになることが多いですけど、それとは逆のバラードを作ってみたくて。恋愛以外にも当てはまる感情を描けた感じがしています。それも先ほど言った「視野が広がった」と感じる部分ですね。

──「晩夏の証」の海の描写は、浜口さんの地元のイメージですか?

浜口:そうですね。その風景はすごく浮かびます。最近も一旦実家に帰って海辺でアコギを弾いて作曲をしました。

──メンバー全員が三重出身でしたっけ?

清水:僕と飛雄也が三重です。僕の地元は飛雄也の隣の市なので、少し離れていますけど。

浜口:いつか<志摩フェス>をやりたいですね。アワビを焼いている匂いがステージにまで漂ってくるような(笑)。そういう目標もあるんです。

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