【インタビュー】終活クラブ、2ndアルバムとメジャーデビューを語る「こだわりを捨てず、よりポピュラーなものを作るという挑戦」

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終活クラブが2024年1月10日、2ndフルアルバム『終活のてびき』をリリースした。これに伴って開催されたレコ発ワンマンツアー<終活クラブ 2nd Full Album「終活のてびき」Release One man Tour 2024【単独巡業のてびき】>ファイナルでは、2024年春、VAPよりメジャーデビューすることがアナウンスされたほか、4月4日に東京・新宿LOFTでメジャー決定記念無料ワンマンライブ<終活超決起集会>を実施することも発表。今まさに勢いにのってるバンドであることに間違いないが、それ以前の問題として、コンセプト、楽曲スタイル、招集されたメンバー構成が面白い。

◆終活クラブ 動画 / 画像

“音楽を終わらせるための音楽”を始めるために、2020年夏に結成された終活クラブは、“最高の仲間と最高の音楽をやり切る”というコンセプトを掲げて活動を続ける5ピースだ。2022年6月には1stフルアルバム『終活のススメ』をリリース。“自分の人生に悔いを残したくない”というまっすぐな思いを込めたアルバムは、自らのバンドスタイルを確立することにも成功した。

そして、2ndフルアルバム『終活のてびき』にはこの2年弱の彼らの大きな成長が反映されているという。BARKSはバンドの中心人物である少年あああああ(Vo, G)に、この2年間の歩み、2ndフルアルバム制作秘話、そしてメジャーデビューについて話を訊いた。


   ◆   ◆   ◆

■誰もがなにかを作りながら生きている
■それを繰り返して生きていくものだと思う


──2ndフルアルバム『終活のてびき』はどういう構想のもとに作られたアルバムでしょう?

少年あああああ:正直なところ、1stフルアルバム『終活のススメ』(2022年6月発表)をリリースするまで僕たちは、ずっと手探りでバンドをやっていたところがあったんです。だから、1stフルアルバム『終活のススメ』は、終活クラブというものを確立させようという強い思いのもとに楽曲を書いたという経緯がありまして。

──では、スタイルを確立した1stフルアルバム『終活のススメ』から、2ndフルアルバム『終活のてびき』の間にもバンドの大きな成長があったという?

少年あああああ:まさしくそうです。1stアルバムから2ndアルバムのリリースまでの間は、より自分たちらしさを確立するために、1本1本のライブを大切にしてきたという実感があります。結果、1stアルバムは、“僕たちはこういうバンドで、こういう曲をやってます”ということを知ってもらうための名刺代わりのものだったけど、2ndアルバムは、聴いてくれる人の手を引っ張るという要素が大きいものになったというか。

──だから1stフルアルバムは“ススメ”、2ndアルバムは“てびき”というタイトルを冠しているんですね。「聴いてくれる人の手を引っ張る」ということは、聴き手のことを想像しながら楽曲を制作したということでもありますか?

少年あああああ:はい。1stアルバムの“知ってほしい”という気持ちから、2ndアルバムは“聴いてくださる方々を僕らがより大きな場所へ連れていきたい。手を引いていきたい”という思いも込めているので。前作より音楽的にも少しは成長したと思います。


▲2ndフルアルバム『終活のてびき』

──その言葉どおり『終活のてびき』は終活クラブらしさを継承しつつ、あらゆる面にさらなる磨きがかかっています。注目ポイントはたくさんありますが、まずはアッパーな曲とエモーショナルな曲のバランスが絶妙です。

少年あああああ:1stアルバムリリース後に、「布教盤3」「布教盤4」という2枚の会場限定盤CDをリリースしまして。そこに収録されていた3曲ずつ計6曲をそのまま『終活のてびき』に収録したんですが、2枚の会場限定盤CDはわりとライブを想定して作ったところがあるので、アッパーな曲が主軸になったんですね。終活クラブらしさはアッパーな部分にあると思っているので、ライブをしているときの僕はすごく楽しくて、めちゃくちゃ明るいんです。でも根本の部分で言えば、僕はめちゃくちゃ暗い人間で(笑)、エモいほうが自分にはより近い。終活クラブらしさとしてのアッパーな部分は持っておきつつ、自分自身らしさみたいなものをエモくて暗い曲にギュッと詰め込んでいる感覚です。

──どちらも少年あああああさんのリアルな姿だからこそ、アッパーな曲もエモーショナルな曲も良質なんですね。では、『終活のてびき』を作るにあたって指針になった曲はありましたか?

少年あああああ:「残留思念パラドックス」です。「布教盤3」の1曲目に収録したものなんですが、自分の中では大きな挑戦だったというか。1stアルバム収録曲よりも、よりポピュラーで、キャッチーで、露骨に“踊りましょう!”という曲を意図的に作ったんです。それが今の終活クラブらしさとして、お客さんの中で浸透している。そういう意味で、すごく大きな1曲ですね。

──意図的に作ったとのことですが、どうしてですか?

少年あああああ:終活クラブには元々、“後悔をしないように音楽をやりきろう”というコンセプトがあったり、バンド名を説明するときに“音楽を終わらせるための音楽”と言っているんですけど、その思想をふんだんに詰め込んだ曲が「残留思念パラドックス」なんですね。2番サビでも“♪後悔残してこの世去るとは うらめしや”という言葉が入っていて。後悔を残さないように、自分の考えに納得がいくようなかたちで、よりポピュラーなものを作るという挑戦が、すごく上手くいったと思います。


──「残留思念パラドックス」はただ単にダンサブルでキャッチーな曲というだけではなくて、歌詞やアレンジなどに、このバンドの個性が活かされています。

少年あああああ:そこは意識したところです。この曲を書いたときのイメージって、“「売れようとして、終活クラブがまたなにかやっているな」と思って聴いてみたら、めちゃくちゃ終活クラブの王道だった”というものにしたかったんです。だから歌詞、アレンジ、各楽器のアプローチは自分たちらしさを押し出しています。

──いいところに落とし込まれましたね。では、2ndアルバムに向けて作った曲で、最も印象の強い曲を挙げるとしたら?

少年あああああ:1曲目に収録した「創作逆モラトリアム」は、アルバムを象徴する曲になったと思います。これは制作過程の一番最後に書いた曲なんですが、2ndアルバムに向けて新曲を作っていくうちに“ものを作る”こと自体に照準が定まったというか。ものを作ることは、やはり苦しいんです。曲を作っても8割くらい出来たところでボツにしてしまったり、全部書き上げたけど結局いい曲にならなくて捨てたこともありましたから。でも、やめられない。

──オリジナリティの高い珠玉の名曲を作りたいわけですから。

少年あああああ:終活クラブを始めたときは、“なんでも書くぜ”と思っていたんですよ。それこそ絶対に書きたくないような甘々なラブソングも(笑)。だけど、自分の中の大切なものをブレさせることができない。だからすごく苦しくて…このままでいいのか?と思うところも正直あるんです。でもやっぱりこだわりは捨てられない。「創作逆モラトリアム」は、そういう自分の内面のためらいや戸惑いみたいなものを書いた曲です。

──創作することの苦しさがテーマの曲ではありますが、“自分を信じて自分らしく生きろ”というメッセージの発信を感じました。

少年あああああ:おっしゃるとおりです。曲を作ることで僕は生きているので、それに対する苦悩を書いていますが、誰もがなにかを作りながら生きているはずで。人間は、ものを作ったり、家庭を作ったり、そういうことを繰り返して生きていくものだと思うんですね。それは、このアルバムを通して伝えたいメッセージのひとつです。


──「誰もがなにかを作りながら生きている」というのは真理だと思います。楽曲「創作逆モラトリアム」はサウンドやアンサンブルも秀逸で、サビでのビートチェンジや、2番でいきなりレゲエに変わるなど、意表を突くアレンジが活かされていますね。

少年あああああ:創作過程を表しているようなアレンジなんですけど、キャッチーな要素を一気に詰め込みました。それで2番でレゲエになったり、“♪切って剥がしての繰り返し”というところでは3拍子になったり。

──そういったアイデアは、デモの段階からご自身が入れ込むのでしょうか?

少年あああああ:今、話したような「創作逆モラトリアム」のアレンジは自分が考えましたけど、曲の中で、“ここはこうしたい”みたいなことはメンバー間で話し合いますね。僕はメンバーから出てくるアイデアを大事にしたいんです。メンバーと一緒にバンドをやっている意義は、そこにもありますから。音楽って絵画みたいなものだと思うんですよ。たとえば、僕が人を描いたとして、その背景とかディテイルを描くのは、別に僕じゃなくていい。いろんな人の解釈があるわけだから、それを活かして、バンドとして1枚の絵が描けたらいいなって。だから、自分1人で作り込んだデモをバンドに持っていって、それを忠実に再現するようなやり方ではありません。

──指標になるものを提示して、そこからみんなで形にしていくというのは、バンドとして理想的なアプローチといえますね。

少年あああああ:今、ふと思い出しましたけど、1stアルバム『終活のススメ』のときは、たとえば、リードギターの石栗とはあまり打ち合わせをしないでギターパートを作ったんです。でも、今回の『終活のてびき』収録全曲は、歌詞の意味を一緒に理解して、「俺は、こういうふうに思うんだよね」というやり取りから、それぞれの解釈を差し込んでギターパートを作りました。

──それは正解だったと思います。石栗さんはギタリストとしてのスキルがすごく高くて、なおかつフリーな感覚でギターを弾くのが好きな方という印象があるんですね。ですが、2ndアルバムは整理整頓をして、ベストなフレーズを入れ込んでいるという印象を受けました。

少年あああああ:石栗自身も言っていましたが、今回のギター構築は引き算だったんです。ただ、彼の個性は活かしたいので、“ここのギター、ぶつかってないかな? 合ってるかな?”と思っても、“彼の中で解釈が成されているなら、それでいいか”みたいな。

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