【インタビュー】清春、デビュー30周年、4年ぶり11thアルバムに表現者の果てない息吹「この瞬間は永遠である」

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■その時代その時代から
■はみ出してる音楽を作りたい


──日本と世界のライヴ事情の話、興味深いです。判断基準は自分自身が好きかそうでないか。

清春:日本は、友達の間で“このアルバムいいよ”って評価が高まってからだったり、他の人がどういう感想を持つかを見てから、アルバム聴いたりする。“売れてきたみたいだから聴く”っていうこともあるよね。それはいいと思うんですよ、音楽の聴き方が変化して、サブスクになったわけだから。CDショップの試聴機で聴いてみて、“うわ、最高じゃん! これ買う”っていう出会いじゃなくてね。たとえば、清春というアーティストのCDを買ってくれるのは、ファンだけかもしれない。だけど、昔はそうじゃなかったじゃん?っていつも思うんです。そんなにファンじゃなくても買ってたというか。試聴機でCDを聴いたり、アルバムを買ったりして、音楽と能動的に出会うこと自体が、もっと楽しかったんですよ。音楽雑誌のライターのディスクレビューが人の気持ちを動かしていた。今は、音楽雑誌もなくなりつつあって、レビューも減ったけど、あれも素晴らしい出会いだったわけで。

──そんな時代もありました。

清春:今って違うじゃない? ファンが何人いて、これぐらい売れるって予想しながらCDを作るし。でも僕はまだ、たまたまCDを買う人はいると信じてるんだよね。でなければCDなんて、ファンクラブだけでリリースすればいいわけだから。このインタビューも、8割方は僕のファンしか読まないと思う。だけど、残りの2割か1割、ファン以外の人が読んでくれるかもしれない。そういう人たちが“あ!”と思って、僕のアルバムを聴いてみるってこともあると思うんですよ。

──何のために作るかという。

清春:周りの人が拍手してるから私も拍手しようかなとか、周りの人がダイヴしてるから俺もダイヴしなきゃとか。その瞬間、“音楽を聴いてるのかな?”と僕は思うんですよね。そういう日本の風習みたいなこととはできるだけ関係のないものを僕は作りたい。その時代その時代からはみ出してる音楽を作りたいんです。丸く収まってるほうがいい時代ではあるんだけどね。言葉も規制されるし。


▲『ETERNAL』通常盤

──コンプライアンスがどうとか。

清春:でもね、あんなのTVとかCMの話なんですよ、スポンサーありきの。スポンサーがないアーティストだったらそんなことはどうでもいい。それなのになんでみんな気にしてるんだろう? 歌詞とかMCとか活動スタンスとか、あまりにも丸い。丸いから、どっかに転がって行っちゃうんですよね。尖ってる風なくせに丸い。

──なるほど(笑)。

清春:黒夢でデビューしてから30年、音楽シーンなんて別になにも変わってないんですよね。変化があったとしたらチャートへの意識とか価値観がなくなったことぐらいかな。今はビルボードチャートとかあるんだろうけど、それもあまり話題にならないじゃん。

──音楽の聴き方や接し方が多様化しています。

清春:そんななかで、なんで作品だけが丸くなっていくの?って思うんですよ。作品だけが時代を意識しながら丸くなっていくのは変だと思う。

──確かに。

清春:今、ヒップホップのほうがロックより全然尖ってるじゃん。悪なのか正義なのか、ちょっとわからないですけど、昔はロックにそういう人もいた。今やそういうのはロックにいなくなって、MCが敬語になったりして。ヒップホップには悪そうな人たちがずっといて、そのままのかたちでメインストリームに行くようになってきてるでしょ。

──ロック本来のカウンターだったり、孕んでいた危うさが、ヒップホップに取って代わられている。

清春:だから、本当に言いたいことを言えない時代でもないんですよ。ロックだって言っていい。いつの間にか自主規制してますけど、やりたいことやっていいんです。“カッコいい!”っていう悪さはいい。どのジャンルでもね。シンプルに“わー、カッコいい!”って感じる刺激までなくして、丸くなることもないでしょう。

──分かります。

清春:たとえば、「いまだにタバコを吸ってるんですか?」って言われるんです(笑)。今やタバコを吸ってないほうがカッコいいみたいになってる。でもね、松田優作さんの映画を観て、タバコを吸ってる姿が滅茶苦茶カッコよくて、それに憧れてタバコを吸ってみるとか、最初は憧れから入るじゃないですか。カッコいい人がタバコを吸い続けている。その姿がカッコいいっていうのは、普通に必要だと思うんだよね。最近はそんなふうに思ってます。もはや僕らみたいに、長く残ってる人がやるしかない(笑)。

──なるほど。アルバム『ETERNAL』の背景がよく分かりました。ここからは、気になった曲についてもお聞かせください。「SAINT」と「ETERNAL」の2曲に関しては、たしかにMVを作りたくなるような存在感だと思いました。

清春:「ETERNAL」は最初から推してた曲です。曲ができた時から。僕が作れるなかでファンに一番近い曲で、レコード会社の人や僕に興味がない人が聴いても“あっ、この曲いいね”って言ってもらえるような。この間もNOBUYA (ROTTENGRAFFTY)くんが「この曲好きです」って言ってくれて嬉しかったな。2024年の今じゃなくて、僕がデビューしてから見てきた30年間の世に近いと思える曲ですね。


──<ROTTENGRAFFTY 25th Anniversary "Blown in the Reborn Tour">の水戸LIGHT HOUSE公演(2月22日)に清春さんが参加したり、NOBUYAさんとは3月24日に金沢vanvanV4で、能登半島地震被災地支援のチャリティライブ<能登半島地震 CHARITY UNPLUGGED LIVE『KNOW –We Will Never End-』>を開催したり。

清春:はい、そのロットンのツアーに出たとき、僕の曲順をNOBUYAくんが決めてくれたんだけど、まだリリースしてない「ETERNAL」が入ってて嬉しかったし、SNSとかオンラインサロンを見ても、“この曲、好きです”とか“泣いちゃう”っていう感想が多かったかな。MVでいうと、「SAINT」はとにかくカッコよくしたかったんですよね。

──アルバムを通して聴くと、はっとする瞬間が何回も訪れます。たとえば「砂ノ河」には、今作トップクラスの情念を感じました。清春さんの歴代曲でいうと「LAW’S」系だと思ったんですよ。これこそ今回の楽器編成のなせる業だったりするのかなと。

清春:「砂ノ河」は昨日、車の中で聴いてて、“歌、すごいな”と思った(笑)。

──歌の聴こえ方にかなり気を配ったアルバムですか?

清春:まあ、そうかも。歌のためにドラムとベースがいないっていうのはあります。ぶつかり合ってどっちかが聴こえづらくなる楽器に関しては、もう入れないんですよ。でも、まだいるんだよね。アコギのストロークのときの弦がこすれるキッて音とか、シンバルやスネアのパーンっていう一瞬の響きとか。たまたまその音にかぶって歌が聴こえなかったりするときがあって。そういうのはかなり削ぎ落としてます。ただ、皆さん歌のグルーヴを大事に演奏してくれてるので、その感じは削ぎ落とさずに、ちゃんと残してます。

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