【ライブレポート】Crossfaith主催フェス<HYPER PLANET 2025>前編「ボーダーレスで自由な遊び場」

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Crossfaithが2月1日・2日の2日間に渡り、最大級のワンマン<OUR FAITH WILL NEVER DIE>、そして初主催の大型フェス<HYPER PLANET 2025>を幕張メッセにて開催。DAY1はONE MAN SHOW(OUR FAITH WILL NEVER DIE)、DAY2はFESTIVAL(HYPER PLANET)と分けられ、国内外のアーティストが一堂に集結した。

会場である幕張メッセを自由な遊び場に変え、ジャンルの壁をぶっ壊したボーダーレスなフェスは何よりも刺激的だった。海外/国内バンドを招き、そこにヒップホップ・アーティストも顔を揃え、DJブースまで設置し、音楽ファンに新たな出会いをもたらしてくれる画期的なフェスとなった。

BARKSではこの2デイズの模様をレポート。DAY1に続き、ここではDAY2のFESTIVALより、coldrain、View From The Soyuz、Paledusk、ENTH、WARGASM、Jin Dogg、SiM、ralphのステージの模様をお届けしよう。

◆DAY1<OUR FAITH WILL NEVER DIE>レポートへ
◆DAY2<HYPER PLANET 2025>ライブレポート後編へ続く



■【HYPER STAGE / coldrain】



coldrainのステージが始まる前、驚くことに<HYPER PLANET>のスタートを告げるコンセプチュアルなオープニングムービーが流れ出した。惑星HYPER PLANETへ向けて宇宙船SPECIES号が飛び立つというもの。なんとなく、近年のブリング・ミー・ザ・ホライズンのライブのオープニングを彷彿とさせる。「ようこそHYPER PLANETへ」というAI風の女性アナウンスがあったあと、ステージに設置されたレーザーが宙を貫き、照明が激しく明滅し、真っ赤な炎が轟々と吹き上がった。

国内のロックフェスでここまでド派手な演出を見たのは初めてだ。観客を存分に楽しませようという主催者の気持ちが感じられる。近くで、「いいね!」と歓喜の声をあげる観客がいた。100%同意だ。


フェスのトップバッターというのはイチから場を温めなければならず、その大変さは近年フェスのトップを務める機会が多いcoldrainはよく知っていると思うが、この演出は最高の後押しになったと思う。オープニングムービーからcoldrainのライブまでがひとつのパッケージのように映り、5人のメンバーはまるでSPECIES号の乗組員のようだった。



演奏も観客の盛り上がりも1曲目「THE REVELATION」からすでに沸点を迎えていた。持ち時間は30分と短めなので、全体の構成は非常にタイト。ぼーっとしているとあっという間に飲み込まれる危険性がある。ステージは当然、前日行われたCrossfaithのワンマンと同じものを使用しているので、ライティングも最高。まるでワンマンのようなクオリティだ。


「お前らにあれやれこれやれとは言わねえ、わかってんな?」というMasato(Vo)の短い言葉にフロアはすぐさま反応。ウォールオブデスが起こったところから「Cut Me」へとなだれ込み、ブレイクビーツとヘヴィサウンドの融合に高揚感を煽られているうちに新曲「INCOMPLETE」へと突入。本当に怒涛の勢いだ。Ryo Kinoshitaがゲストボーカルとして登場した「MAYDAY」ではMasatoとRyoがフロアに飛び込み、ラストの「NEW DAWN」ではフロア中央付近の柵に上がって両手を広げたMasatoが観客とともに最初から最後まで大合唱。


30分のステージは、曲が終わるとともに真っ暗に暗転して終了。なんてカッコいい締めだ。そして、なんという時間だったんだろう。外は冷たい雨がしとしとと寂しく降っていたが、屋内ではとんでもない熱風が吹き荒れていた。

文◎阿刀“DA”大志
写真◎Takeshi Yao(@takeshiyao)

coldrain セットリスト

1. THE REVELATION
2. Cut Me
3. INCOMPLETE
4. Rabbit Hole
5. MAYDAY
6. NEW DAWN


   ◆   ◆   ◆



■【NOVA STAGE / View From The Soyuz】



NOVA STAGEのトップを務めたのは新鋭View From The Soyuzだ。国内最大規模のハードコアフェス<BLOODAXE FESTIVAL>に2022年から3年連続出演してしている彼らは、注目アクトのひとつと言えるだろう。



ライブはSLAYER風の邪悪なギターフレーズを用いたインスト「Chronostasis」で幕を開け、「Blackened Sun」に入るや「声出せ! 後ろの方も!」とmasa(Vo)が煽り、フロア中央ではモッシュが勃発。そこに大阪のビートダウンハードコアバンド・UNHOLY11のGKT(Vo)が加わり、吐き捨てボーカルによる激しいバトルを繰り広げた。さらに「When My World Collapse」では東京の重鎮ハードコアバンド・NUMBのSENTA(Vo)が登場、観客は狂乱状態で盛り上がる。



「朝イチから調子どうですか、幕張! 来てくれた人は全員友達だと思ってるんで。自分の目、耳、体で感じてよ。知らないアーティストを観ると、いろいろ発見があるから。ほかのアーティストにハマッたら、それも発見。俺らの中で一番速い曲」とmasaが告げると、「Comatose State ll」をプレイ。ザクザクのギターリフとうねるベースラインも相まって、芯の太いグルーヴが豪快だ。



「Crossfaithの大事な1日に誘ってもらえて嬉しいです。その気持ちを残り2曲に込める!」と宣言すると、「Sky Burial」「Ättestupa」といった6分前後の起伏豊かな楽曲を連発。メロデス、メタルコア、ニュースクールハードコアのエッセンスを散りばめたアレンジは聴き応え十分。もちろんハードコア由来の極悪サウンドの威力は凄まじく、NOVA STAGEにこの日最大級のサークルピットを作り上げ、<HYPER PLANET 2025>の着火役としての責務を見事に果たした。

取材・文◎荒金良介
写真◎Piikann

View From The Soyuz セットリスト

1. Chronostasis
2. Blackened Sun w/ GKT (UNHOLY11)
3. When My World Collapse w/ SENTA (NUMB)
4. Comatose State Ⅱ
5. Sky Burial
6. Ättestupa


   ◆   ◆   ◆



■【HYPER STAGE / Paledusk】



イントロ代わりに演奏したエミネムの「Lose Yourself」からキラーチューン中のキラーチューン「PALEHELL」になだれこみ、観客にいきなりシンガロングの声を上げさせた福岡の4人組、Paledusk。


「Crossfaith、呼んでくれてありがとうございます! 若い頃からいろいろなところに連れていってくれてありがとうございます! 俺達はバンドだから、その感謝を音で伝えていきます!」というKAITO(Vo)の宣言通り、代表曲の数々をシームレスに繋げ、ライブで鍛え上げてきたグルーヴィな演奏とメタルコアというバックボーンを持ちながら、さまざまな音楽のハイブリッドであることを追求した音楽性のユニークさを見せつけていった。



バンドのロックバンド然とした印象を象徴するKAITOはもちろんだが、ギタープレイに加え、アクロバチックなパフォーマンスでもバンドが持つ華やかさをアピールするDAIDAI(G)、スタイリッシュないでたちでクールにリズムを支えるTsubasa(G)、金髪のリーゼントを揺らしながら変幻自在のビートを操るBOB(Dr)──それぞれに個性的なメンバー達の佇まいも見どころだ。


ウォールオブデスからフロアがカオティックに盛り上がった「TRANQUILO!」から繋げた「Q2」「RUMBLE」では、それぞれCrossfaithからKoie、coldrainからMasatoを迎え、観客のシンガロングとともにアンセミックな熱狂を作り出す。ラウドロックシーンの今を象徴しているとも言える光景に観客が釘付けになる。


最後を飾ったのは、キャッチーでカオティックな魅力を持つ「BLACK ICE」。堂々とタイトルコールしたKAITOは客席に飛び込むと、観客の上で歌うガッツを見せ、ダメ押しするように観客の気持ちに火を点ける。KAITOのシャウトと観客のシンガロングが交錯しながら、見事、エンディングを飾ったのだった。

文◎山口智男
写真◎cazrowAoki(@cazrowaoki)

Paledusk セットリスト

01. Lose Yourself
02. PALEHELL
03. AREA PD
04. SUPER PALE HORSE
05. SLAY!!
06. TRANQUILO!
07. Q2 w/ Koie (Crossfaith)
08. RUMBLE w/ Masato (coldrain)
09. BLACK ICE


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■【NOVA STAGE / ENTH】



ライブ冒頭にメンバーも話していたが、ENTHはこの日唯一の3ピース、唯一のレギュラーチューニングのバンドだった。もうひとつ付け加えるなら、彼らはこの日唯一のメロディックパンクバンドでもあった。

そんな状況でのパフォーマンスはアウェイ感があるのかと思いきや、そんなことはまったくなかった。それどころか、<HYPER PLANET>のアクセントとしてかなりおいしいところをかっさらったんじゃないか。


初っ端、「☆愛♡醒☆」をバックに景気づけにショットをグイッとあおったあと、いきなりの「ムーンレイカー」で大合唱を起こした3人。NOVA STAGEは作りこそ簡素だが、それに見合わない数の照明がビカビカに光る。なんだかそれが異形のメロディックパンクを鳴らすENTHというバンドにやたらと合っていた。



そして、とにかくカッコいい。一見するとふざけているようだが、アンサンブルの破壊力がすさまじい。すべての音が爆音で鳴っているのに、なぜか一つひとつの音の粒が聴きやすいという外音のお陰もあり、一音も逃さずに彼らの音を吸収できた。もちろんテクニカルではあるのだけど、不思議と整っていないような印象を与える。はみ出している。だからこそ刺激的で興奮する。パンクだ。当然、フロアは大暴れで、あちこちにサークルピットが生まれていた。ビカビカのステージ、荒れ狂うメンバー、沸騰するフロア、あの光景は今でも脳裏に焼き付いている。


中盤、「時間が余りそうなんで、一杯飲みまーす!」とダト・ダト・カイキ・カイキ(Vo, B)。すると、再びショットグラスが3つ登場し、ライブ冒頭と同じようにグイッとあおる。そして、急遽一曲追加で「Get Started Together」をカマす。そこからオルタナ色の濃い「A FLY」を挟み、「Crossfaithの大切な日に呼んでもらってうれしかった」と喜びを表したあと、「BLESS」で締めるのだった。ライブ中、自分の近くでガクンガクンに首を振っている外国人の姿が印象的だった。どうだ、これが日本のパンクだ。

文◎阿刀“DA”大志
写真◎Takeshi Yao(@takeshiyao)

ENTH セットリスト

1. ムーンレイカー
2. "TH"
3. P.T.E
4. SCUM DOGS FART
5. "EN"
6. WHATEVER
7. Gentleman Kill
8. Get Started Together
9. A FLY
10. BLESS


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■【HYPER STAGE / WARGASM】



初日2月1日のCrossfaithワンマン<OUR FAITH WILL NEVER DIE>で披露した「God Speed feat. WARGASM」の余韻がいまだ抜けない。

その中でWARGASMが<HYPER PLANET 2025>HYPER STAGEの3番手として降臨。振り返ればcoldrain主催<BLARE FEST.2023>で初来日し、2024年1月の初単独来日公演を経て、今回が3度目の日本のステージとなる。

ステージ上のLEDスクリーンに“ANGRY SONGS FOR SAD PEOPLE”の文字が映り、腰にガンベルトを巻いたミルキー・ウェイ(Vo, B)、MACHINE HEADのホッケージャージを着たサム・マトロック(Vo, G)の2人がステージに登場。2024年10月リリースの2曲入り最新シングルから「Circle Pit」「Bad Seed」で戦闘開始だ。前者はMilkieによる日本語の歌詞(※過去に東京でモデル活動していた)を織り込んだ攻めた曲、一方の後者はボトムを揺さぶるヘヴィな曲調だ。両曲ともフロアアンセムと呼ぶべきノリの良さを強烈にアピールする。



「コンニチハ!」とミルキーが日本語で挨拶して「Fukstar」へ。彼女の妖艶な歌で始まった同曲はSlipknot風の猟奇的フレーズを配し、甘美にして毒々しいヘヴィネスを放出する。その後も「Wake Up!」とサムが煽り、「Venom」「Modern Love」「Feral」とニューメタルを通過した重厚なグルーヴで観客を翻弄し続けた。


ショウ後半は「D.R.I.L.D.O」、デジタルロック調の「Spit.」を挟み、THE PRODIGYへのリスペクトを感じさせる「Do It So Good」を最後にドロップ。男女ツインボーカルとダンサブルなサウンドとの相性は抜群。サムがタオルを回すと、観客もそれに追随し、幕張メッセを一つにする手腕を発揮した。


エレクトロ、ヘヴィロック、パンクなどをごった煮にした最新型ミクスチャーロックはCrossfaithファンだけに限らず、普段この手の音を聴かない人をも巻き込む訴求力がある。曲を知らなくても騒げるキャッチーな楽曲群は、大きな会場でその魅力を爆発させていた。これを機にWARGASMは日本でさらなるファンベースを築き上げるに違いない。次回の来日が楽しみで仕方がない。

文◎荒金良介
写真◎SHOTARO(@shot.row)

WARGASM セットリスト

01. Circle Pit
02. Bad Seed
03. Fukstar
04. Venom
05. Modern Love
06. Feral
07. D.R.I.L.D.O
08. Spit.
09. Do It So Good


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