【インタビュー】ASIAN KUNG-FU GENERATION、感動を呼ぶ両A面シングルに充実の現在形「毎回が幕開け」

■バンドの気持ちを上げてくれる現場だった
■岸田さんの仕事ぶりを間近で見れたのも貴重

──そして今回はもう1曲、「Little Lennon」の新しいバージョンが入ってるんですが、これはどういう着想から始まったんですか？

後藤：岸田くんと二人でご飯食べたりお茶したり酒飲んでたりする間に、「昔やった「Little Lennon」のアレンジめっちゃ良かったね」みたいな話になって、岸田くんも「あれ、好きやわぁ」と言ってて。「じゃあどっかで再録して、作品にできたらうれしいね」「やりたいわぁ」みたいな。それで＜NANO-MUGEN＞もあるし、このシングルを出すし、今録りたいなと思っちゃったからオファーを出しました。これは、もともとは僕が＜京都音博＞にソロで出た時、岸田くんセレクトでアジカンの中から「Little Lennon」と「迷子犬(と雨のビート)」を彼の管弦アレンジでやったんですよね。それを今、岸田くんが思う編成に編曲し直してもらったのが今回のアレンジです。

──これもまたホーンの上にストリングスもあって、とても熱くなる仕上がりですね。

喜多：これは岸田くんが事前にデモを送ってくれた段階でストリングスがめちゃくちゃ良かったですね。あと、ギターのアプローチとかはちょっと相談に乗ってくれたりして。オリジナルがもともと持ってるラウドさは失わないまま、でもホーンを邪魔しないような運指でやりました。

伊地知：最初は緊張感して、クリックに合わせて上手に叩こうみたいな考えもあったんですけど、始まってすぐに“そうじゃないんだ”と思いました。「今のバンドアンサンブルがすごくいいから、その勢いを録りたい」と言われて、完全にもう身を委ねて、岸田さんの言う通りにやってみようと思って。そうしたらもう数テイク録って、「すごくいいのが録れたから、もう何も直さなくていい」みたいな。ほんとに、これぞ一発録りみたいな録り方をしたんです。

喜多：全員終わりだったんですよ、その時。普段だったら、そこからギター直したりするんだけど、もうこれで全員終わり！みたいな。

後藤：俺が「直さないでいい」って言っても、信じてくれないもんね？ ずーっと夜中まで録り直すでしょ。

喜多：いやいや、そんなことない（笑）。ゴッチがいいって言ってくれたら、もうその場で終わりにするよ。


──ともかく（笑）、早々とOKを出してもらえたと。

伊地知：そう。その上にストリングスを乗せていったりするんですけど、素晴らしかったですね。僕たちがフレッシュな演奏をした、勢いがあるものに味付けしてくれてるので、こういう音源になるんだなって。勉強になりました。

山田：くるりは自分たちより全然早くメジャーシーンにいて、感覚的には先輩というかリスペクトしている方なので、一緒にやる前に緊張感みたいなのもあったんですけど。みんなが言ってたように、バンドの今の演奏だったりサウンドをとても大事にしてくれましたね。「Little Lennon」は最近もライブでやってたから演奏が良く録れたなとは思っていて、ベーシックの音ではそういうところをちゃんと拾ってくれて。バンドの気持ちを上げてくれる現場だったので、とても特別な時間でしたね。岸田さんの仕事ぶりも間近で見れたのは貴重なことだったし、ほんとに楽しい時間でした。

──そういうものが表れた仕上がりになってると思います。で、「MAKUAKE」を聴いて、ゴッチは中期のビートルズが好きなんだなとあらためて感じたんですが、この「Little Lennon」も着想元のジョン・レノンだったり、“ラブ ラブ ラブ”というフレーズがあったりと、やはりビートルズのイメージが重なる曲ですよね。

後藤：うん、サイケデリックな感じとかをちょっと想像したら、途端にビートルズに巻き取られていく感じですよね。アメリカっぽくはならないっていうか。このコーラスの感じなんかは、もう10代の頃にビートルズにやられてるからのもので……『リボルバー』とか『ラバーソウル』とか、あのあたり。やはり中期ですよね。『サージェント・ペパーズ(・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド)』、それと『ホワイトアルバム(ザ・ビートルズ)』ぐらいまでね。その感じって、どうしても血になっちゃってるというか。


──以前にどこかで書いてましたよね、アジカンの『ワールド ワールド ワールド』の「新しい世界」のエンディングの残響には、『サージェント・ペパーズ』の最後に入っている「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の影響があると。

後藤：うん。建ちゃんも山ちゃんもビートルズ好きだから、その感じって出ますよね。

──横浜BUNTAIの時にも言ってましたね。大学のサークルでゴッチと初対面の頃、山田くんはビートルズが好きだと言ったって。

喜多：それでアジカンに入れたんだよね（笑）？

山田：そのひと言で今があると言っても、過言ではないです（笑）。

後藤：だって俺たち最初に演奏した曲、「ヘルプ！」ですからね。ビートルズの。

喜多：結成した最初のライブで演奏したね。

後藤：今ようやく、助けて！と演奏中に言わなくて良くなってきたっていうか。

──ずいぶん長い年月をかけて（笑）？

喜多：まだ、たまに言ってるけど（笑）。


──それから今度の＜NANO-MUGEN＞のことを聞いておきたいんですけれども、なんと11年ぶりの開催になるんですね。

喜多：そうなんですよね。2014年以来ですから。

──このタイミングでやろうと計画はしていたんですか？ 構想があったとか。

後藤：いや、潔が「インドネシアで何かやったらいいんじゃないか」って突然言い出して。そこには潔のビジネス的な何かがあったのかもしれないですけど（笑）。

喜多：潔が「海外で、それもアジアとかでフェスをやったら面白いんじゃない？」って言って、うちの事務所の社長も一緒に盛り上がってくれて。それが＜NANO-MUGEN＞という形になって、だったら日本でもちゃんとやんなきゃね、ということになったんだと思います。

伊地知：一昨年、アジカンでインドネシアでワンマンをやったんですけど、思ったよりもみんな待っててくれた感じがして。お客さんもたくさんいましたし、あと、音楽好きな若い人がめちゃめちゃ多いんですよね。そこら中でライブもやってるし、これはもっと盛り上がるんじゃないかと可能性を感じて。インドネシアはバンドも多くて、ギターロックのバンドもいっぱいいるんですよ。それで交流を持ちたいなと思いました。

後藤：本当は潔のカレーフェスになってたかもしれないけど（笑）、いつの間にか＜NANO-MUGEN＞に話が膨らんでいました。だって潔だけ先に行って、イベントしてましたからね。

伊地知：今年2月に、ひとりでインドネシアにね。料理の仕事で行く予定だったんですけど、せっかくだからドラムのイベントも開きました。


後藤：インドネシアだけ、潔の名義の＜NANO-MUGEN FES.＞になってない（笑）？

喜多：行ってみないとわかんないよね（笑）。歓声が「キヨシ！」ばっかりの可能性もある。

後藤：ただ、アジアのバンドとどう連帯していくかということも考えていました。新しい世代がどんどん出てきているし。この先、日本の音楽も変わらず面白いでしょうけど、欧米中心というよりは、よりローカルにシフトしていくだろうから。そうなってくると、どうやったらアジアのバンド同士がダイナミックに絡んで面白いものを育んでいけるのか、というところに、これからの音楽の可能性があるのかなと思っています。

──もともとアジアを廻るライブもやってましたもんね。10何年か前に。

後藤：そうですね、ツアーも行ったし。韓国に行ったり、シンガポールとかも行ったり。当時はインフラの問題とかもあったんですけど、最近どんどん整ってきてる感じがあるんじゃないかな。2000年代だったら想像つかないっていうか、行っても演奏できる場所があるのかもよくわかんない、みたいな状況だったけど、今ではいろんな国ごとにフェスが始まったりしているし。

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