ギャングスターラップが死んだと思っている人々に

ポスト

ギャングスターラップが死んだと思っている人々に

ふだんIce Cubeは、観客に“サイテーだ、Ice Cube!”と叫ばせる瞬間をショーの半ばまで残している(1990年のソロデビューアルバム『Amerikkka's Most Wanted』収録曲「N-gga You Love To Hate」のとき、観客はそう叫ぶのだ)。

しかし、この夜は違った。Westside Connectionの同志WCとMack 10の助けを借りて、Cubeは、その灼熱の曲を“アルバム発売記念パーティー”のオープニングに持ってきた。客席は一気に盛り上がった。

縁なし帽をかぶったCubeは、ショーが始まって5分も経たないうちに汗を流していた。そしてまもなく彼は、この夜最も驚いたことのひとつをやってのけた。N.W.A.のオリジナルメンバーMC Renが登場して、N.W.A.名義の新作である“Chin Check”(Cube主演映画『Next Friday』のサウンドトラック収録)と“Hell Low”(Cubeの新譜『War & Peace Vol. 2…The Peace Disc』収録)を共演したのである。N.W.A.の部分的再結成が実現したわけだ。

 舞台奥には、Cubeそっくりの格好をしたラシュモア山の大統領像のような彫刻(1998年のFamily Valuesツアー以来設置されている)と、彼の専属DJのCrazy Toones。その前に立ったCubeは、この夜いつもよりすこし演劇めいていた。
WCとMack 10は、ステージに戻って来たとき手ぶらではなかった。彼らが2本の傘でパフォーマンスをする“Let It Reign”は、ぜひ見たほうがいい。建物のなかで傘を開いても、彼らには不運の兆しなど見られなかった。彼らは“Bow Down”でも傘を使った。
ショーの中間点で、Cubeは曲を休んで喋り始めた。彼は、次の曲を「
ギャングスターラップが死んだと思っているすべての人々」に捧げたいと言った。その「Check Yo Self」は、オリジナルヴァージョンで共演したDas EFXがいなくても、ちゃんと成立した。
この曲の直前に、最前列の女性客がズボンの裾をつかんで彼を客席に落としそうになった。そのあとKrayzie Boneが登場した頃、Cubeはペースをすこし落とした。そしてこの夜初めて『The Peace Disc』から、Krayzie Boneが一部ラップに加わる“Until We Rich”を披露した。

新しいアルバムはショーの2日前にでもリリースされたばかりで、たぶんCubeは新曲に慣れてなかったのだろう。結局彼は“アルバム発売記念パーティー”で新曲を1曲しかやらなかったけれど、それでも観客たちは満足していた。

Dr. DreとTLCのT-Boz(Mack 10がつきあっている)がこの夜見に来ている、という噂が客席には流れていた。しかし、もしその2人がステージに上がってこの夜の最後の2曲「We Be Clubbin」と「You Can Do It」(財布を抱えた生意気なMs. Toiをフィーチャー)に参加していたとしても、だれもそれに気付かなかっただろう。それくらいCubeがよかったのだ。

by Billy Johnson Jr

この記事をポスト

この記事の関連情報