エンタテインメント in 武道館!

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ベックの武道館公演はアコースティック・ギターの弾き語りによる「コールド・ブレイン」で始まった。
そして、3曲目の「ニュー・ポリューション」で、いきなりミラーボールが回転、武道館全体に光のカケラをキラキラと散りばめ、観客を沸かせる。

最新作『ミッドナイト・ヴァルチャーズ』の楽曲を中心に演奏した前半。観客はファンキーなビートにゆったりとノッていたけれど、あの印象的なイントロが聴こえてくると、それまで座っていた観客も立ち上がり、いきなり会場中が盛り上がる。そう、ベックの名を世に知らしめた名曲「ルーザー」だ。

それにしても、こんなに早い段階に演ってしまってもいいんだろうか? なんて心配していると、それまでのスモック(?)から、宝石を散りばめたスーツに着替えてきたベックが珠玉のソウル・バラード「デボラ」を歌い始める。そして、天井からスルスルと下りてきた特大ベッドに飛び乗り、悩ましいパフォーマンスを披露! またまた観客を沸かせた。

後半は『ミューテイションズ』のメロディアスな楽曲を中心に聴かせ、ラストは「ホエア・イッツ・アット」でしめくくる。

それにしても、今回のステージ・セットはなんだ? パイプ、パイロン、ハザードなどガラクタで一杯のステージはまるで工場跡か、あるいは建設現場を思わせる。

さて、DJスワンプのソロ・パフォーマンスが終わると、アンコールだ。ステージに現れたベックの姿を見て、びっくり。なぜってヘルメットにニッカーボッカー……そう、ベックは工事人夫のかっこうしていたのだ。
ナルホド、今回のセットには、こういうオチがつくわけだ(でも、そんな衣装、日本で買ったんだろうか?)。

 飯場の兄ちゃんが熱唱する「セックスロウズ」と「デヴィルズ・ヘアカット」。最後の最後はバンドが垂れ流すノイズの中、赤い信号灯を両手で振り振り、ベックの武道館公演は幕を閉じた。

 前回の来日公演は『ミューテイションズ』の曲と、それ以前の代表曲という2部構成を思わせるものだったけれど、今回は4枚のアルバムから、ほぼ万遍なく選んだ楽曲を違和感なく並べ、エンタテイメント・ショーとして見せてくれた。

 これまでオルタナティヴなアーティストと思われ、その音楽性について小難しいことを言われてきたベックだけれど、ことライヴ・パフォーマンスになるとエンターテイメントに徹するわけだ。それはまさにポピュラー・ミュージックのアーティストとして、自分の規模が、どんどん巨大化していくことを自覚している表れなんだろう。そして、そんな自覚があるかぎり、ベックはもっともっと大きな存在になれるはずだ。

レポート●山口智男 

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