香り立つスティーリー・ダンの“洗練”

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 スティーリー・ダン3度目の来日公演2日目。

 土砂降りのオフィス街を、仕事帰りに駆け込んできたビジネスマンがごった返していた。

 1977年にアルバム『Aja』が発売されたころに20歳前後だったとしても、既に40代半ばになっているわけである。ただ昨年の夏に、同じ東京国際フォーラムにブライアン・ウイルソンが来日した時のオーディエンスよりは、はるかに女性の姿が多い気がした。それはスティーリー・ダンがかつてのAORブームの中で、一部おしゃれ系音楽として認識されていた時期のなごりを感じさせる部分である。

前述のブライアン・ウイルソンと同様、ライブは2部構成となっており、オーディエンスも席を立って聴くものはいない。雰囲気はジャズクラブにおけるフュージョンバンドのそれに近く、実際の演奏も20年ほど前の名演と比較すると、荒々しさや、いわゆるロックの醍醐味という部分は希薄になった感もある。ただし、それを凌駕してもあまりあるほどの、彼らなりの美学が強く感じられるのだった。

洗練されたアレンジは更にその質感を高め、まるで時代とは無関係かのようにその空気を醸し出していた。ジャズをバックボーンに持つDonald FagenWalter Beckerは、無意識にスティーリー・ダンに、ジャズの持つ“洗練”を見出そうとしていたのではないだろうか。

予定より少し遅れて、ステージは「The Boston Rag」で幕を開ける。2人は長いイントロが終わる頃、ゆっくりと現れた。某黒人歌手のように、フェンダーローズのピアノを弾きながら体を左右に振るDonald Fagenと、高校教師のようなWalter Beckerが淡々と紡ぎ出すスティーリー・ダンの空気が1曲目から充満している。そして、ライブでは定番と化している「BODHISATTVA」と進んで行く。派手さは無いものの、DrumsのRcky LawsonとBassのTom Barneyのタイトなリズムによって、さらに引き締まった演奏となった(2人は96年の来日でもプレイしている)。

またギタリストのJon Heringtonも大変健闘していたのだが、やはりWalter Beckerの弾くギターの存在感は素晴らしく、時折見せる彼のプレイやサウンドをもっと聴きたいと思った人は少なくないのではないだろうか。

ライブの前半は『Countdown to ecstasy』、『Pretzel Logic』、『Aja』、『Two Against Nature』からのナンバー、また9曲目では『Can't buy athrill』から「Do it again」を披露した。

中間で休憩を挟んで第2部に突入するのだが、休憩中のロビーではスティーリー・ダンのアルバム名が飛び交い、ネクタイ姿の多くの男性によって、スティーリー・ダン評論が展開されているのであった。

第2部では『The Royal Scame』からのナンバーを等を挟みながら、第1部同様、Walter Beckerのリードボーカル曲も披露された。そして第2部後半にさしかかる頃「PEG」でオーディエンスは最高潮を迎える。

『Aja』が発売された1977年に、こんなに洗練されたアンサンブルがどのように生まれてきたのだろうか?と、改めて「PEG」のサビを聴きながら思った。エンディングは「FM」。時折ショルダーキーボード姿で健在振りをアピールしたDonald Fagenが、満足そうに「FM」が流れる中を立ち去った。それを見てソロギターを弾きながら退場したWalter Beckerがとても印象的だった。

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