スプリット対談 「東京サウンド」VS「めんたいロック」!?

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現在活動休止中のEL-MALOのギタリスト、會田茂一のニューバンドFOEと、ここのところ台頭著しい福岡期待の轟音バンド、MO'SOME TONEBENDER。この両3ピース・バンドが6月にスプリット・シングルをリリースした。奇才と新鋭ががっぷり四つに組んだ緊迫感には思わず言葉が失われるほど。CDの上でそんな見事な対決を聴かせた彼ら、この夏にはカップリング・ツアーも決定している。この今注目の「音による居合い抜き」を聴かせる両者に迫ってみることにしよう!

 


































FOE+MO'SOME TONEBENDER
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FOE
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●そもそもお二方はどういうきっかけで出会ってるんですか?

會田:昨年の秋、福岡で行われた「ゴールド・サウンズ」というイベントに僕がFOEとして出演して、bloodthirsty buchers、ラムタグなんかとMO'SOMEが出てて。そのとき僕のライブが良くなくて落ち込んでたら、僕の出番の後にMO'SOMEが出て素晴らしいライブをやるもんだから追い打ちをかけるように落ち込んだ(笑)。それで「ああ、いるもんだなあ」と。僕はそのときのライブで「この人たちは人と違うことをしようとしてていいなあ」と思って、打ち上げのときに「こういうところが好きなんだ」とか「東京来たら一緒にやろうよ」とか言って。

●MO'SOMEはそのときは東京とか来てライブをやったりしていたの?

百々:ちょうど東京とかに行き始めたばかりの頃ですね。そのイベントが終わったあたりから活発になって。今は月2、3本は東京でやるようになりました。

●お二方が昨年の暮れに渋谷のNESTで対バンしたとき、會田さんがMO'SOMEを絶賛していたのが印象的だったんですが。

會田:やっぱ機関車みたいにギターがガーンッて動力になってるバンドを見ると興奮してくるというか。なんかこう、新幹線の格好してるけど石炭で走ってるようなシンパシーを感じて(笑)。僕もギタリストなんで奮い立つものがあったんですね。あと彼らのアルバムがちょうどその頃に出てて、車でよく聴いてました。自分の曲よりも歌詞覚えるくらいになっちゃって(笑)。

●MO'SOMEのほうは會田さんについてはどういう認識だったの?

百々:僕は「EL-MALOの人」っていうイメージがあって。雑誌とかに載ってるイメージだと「怖いな」って思ってました。「デス渋谷系」とかって言ってたし(笑)。なんで最初は会うのが怖かったですね。それで初めて会うとき遠巻きに會田さんを見てたら、ギターを大事そうに愛おしそうに拭きだしたんですね。これを見て「ああ、いい人なんだなあ」と(笑)。で、その打ち上げのときにたくさん話したんだけど、酒入ってたから何も覚えてない(笑)。FOEのライブはそのとき見たんですけど、これまで抱いてたオシャレなイメージと対極にある感じがした。それから會田さんが東京で「MO'SOMEがいい!」と吹いてくれてるって話を聴いて、最初は半信半疑だったんですけど、年末に東京で対バンしたとき、僕らの出番に會田さんもの凄い勢いで走って見に来てくれて(笑)。袖に戻っても最初に来てくれたのも會田さん(笑)。だからもう恐縮しっぱなしですよ。

●このスプリットをやろうということになったのはどういうきっかけですか?

會田:僕が「一緒にやろうよ」って言ったのをきっかけにスタッフの人が動いてくれて。そもそもライブを一緒にやりたくて、夏にツアーを一緒に周れればと思ってて。で、スプリットというのもいいんじゃないかって。

百々:で、その話をもらったときに「やりましょう! やりましょう!」って言ったのは良かったものの、曲がない(笑)。でも何とか作ろうと思ったらこれが出来るもんでして(笑)。

會田:僕としてはアメリカのスプリットシングルみたいに、後から振り返ってそこにしか収録されてない貴重なものになればいいな、と思っていたんですけど。そうしたら面白いことに2バンドとも申し合わせたように1曲目が早い曲で2曲目が静かな曲になっちゃって。狙ったわけじゃないんですけどねえ。僕の場合1曲目が新曲で2曲目がアルバムの別バージョン。どちらかと言えば、ライブを一緒に回るときのお土産的なノリが強いかな。

●MO'SOME的にはそのマキシを含めてリリース・ラッシュだよね。Pixiesのトリビュート盤用の曲のレコーディングもしてるし。

百々:そう、もうリリースが多くて。このシングルにPixiesに、9月にはアルバムも出ることが決まったし。

●まだ福岡でバイトとかやってるの?

百々:やってますよ。でもほとんど生活できてないっていうのが現状で。ライブで東京とか大阪に行ってて、福岡の家にいることがもう月の半分もないから(笑)。

藤田:僕は家を追い出されました(笑)。

●東京来ちゃったらどうなの?

百々:それもよく考えるんですけど、お金かかるし、鼻毛伸びるし(笑)。

●鼻毛伸びるか(笑)?

百々:ええ(笑)。いずれにしても僕らにとって東京に行くと言うことは勇気のいることなんですよね。

會田:モッズは上京したとき共同生活してたよ。チェッカーズもね(笑)。やっぱ共同生活なんじゃないかな。運転が好きな生活ってのもわかるけどさ(笑)。

●運転が好きというのは?

會田:いや、これは僕の妄想。MO'SOMEのスケジュール見てたらとにかく福岡から東名阪のライブのスケジュールがすごくて大変だなあと思って。FOEのドラムの小松君とかと「MO'SOMEが運転狂で、それで移動を車でやりたがってるとしたら笑うよね」って話が盛り上がっちゃって(笑)。みんなが交代でワクワクしながら移動してたりしたらおかしいなと。

百々:実際は全然そんなことありません(笑)。

●でもいずれにしても大変なんだね。

百々:もう最近では福岡よりも東京のほうがライブの本数が多いし。福岡で予定入れられないくらい大変なんですよ。

●會田さんはEL-MALO時代に福岡は?

會田:ツアーのときは必ず予定にありましたよ。あの頃はツイン・ドラムでの6~7人編成だったから、移動するのが大変でしたね。今は3人で楽なんですけど。

●それで會田さんは、そもそもどうして3人のバンドをやろうと思い立ったんですか?

會田:もともとは小松君と二人で2ピースのバンドをやろうと思ったんですよ。EL-MALOのアルバム作るときとかも、小松君と二人でスタジオ入って作る曲とかあったし、彼のいるブッチャーズも大好きだったものですから。で、何か二人でやろうってことになって、小松君と二人でプレイしているうちにEL-MALO以前にやってたシンプルなバンドの感覚を思い出してきたんですね。そうしているうちに曲がどんどんできちゃって。それで「ライブやろう」ってことになって、二人でリハーサルやったら煮詰まっちゃった(笑)。それでベースを入れようということになった。だから3人でやろうという気はなかったんですよ。でもEL-MALOのときと決定的に違うのは「とっぴな素材でとっぴな料理を作る」というのではなくて、自分をかけて畑耕して野菜作ってそこからやろうって感じで。その意味で3ピースは必要最低限って感じがしたし。

●でも、FOEって一般に想像される3ピースのイメージと違いますよね。轟音でガツーンッて感じではないというか。

會田:やっぱり人と違うことをしたいという気持ちがどうしてもあるから。カレーライスにしても、人参の上にカレー乗っけて、それからご飯ってやり方をとると随分変わってくるじゃないですか。

●リズムの感覚が他の3ピースとは違います。

會田:buchersを聴いててもそうなんですけど、リズムが音色を決めるところがあるでしょ。僕としてはみんなが一つの基準に合わせて音を鳴らすのではなくて、「僕はギターをこれだけやりますから後は皆さんらしいリズムで演奏してください」って感じにしてるんですよ。だからもし佐藤さんらしくないベースとか小松君らしくないドラムとかが出てくると、それは違うんじゃないかなと。だから3人で100%ではなくて、一人の100%が3人で300%、さらに化学反応の400%の力が出せればと思ってやってるんですけどね。

●MO'SOMEは逆に4人でバンドをやろうとしてたらしいね。

百々:福岡でね、バンドメンバーを捜すというのは大変なんですよ。やっぱり都会に比べるとバンド人口は少ないですから。僕は本当は4人でやりたっかたんですよ。3ピースだと何か狙ってるような気もするし、僕自身ももう一人ギターを入れて楽しみたかったし。でも、この2人でも音楽的に納得させるのが大変なのに(笑)、もう一人加えるなんてもう大変やなあ、と実際やってみて思ったし。だからもう3人でいいかなあと。

●一方が2人を目指してて、もう一方が4人を目指してた、というのは面白いですね。

會田:そうですね、ホント。でも、浅野忠信君が今やってるピースピルってバンド、ギターが5人いたりして、それも面白いかなあと思ってるんですけどね。ホントはねえ、小松君と一緒に「史上初の2ピース」って盛り上がってたんですよ。「ドラムンギターだ!」とかって言って(笑)。まあ、それは現状ではできなかったんですけど。あと、これまでの反動ですね。今までは大所帯バンドに憧れてて、ギターもその一部の飛び道具として考えてたんですけど、ちゃんとギターを弾きたいな、とも思って。

●へえ、それは驚きですね。EL-MALOのあのギターに僕なんかは衝撃を受けてたのに。

會田:確かにEL-MALOのときはジャックをブブブブッといわせるだけの曲があったりエフェクターの実験とかをしてたんですけど。でも、ギターがバンド自体を引っ張ってたわけじゃなかったから。だから今はすごくギターで引っ張ってみたいんですよね。

●會田さんの場合、EL-MALOのときにはどちらかというと熟練したミュージシャンの人たちと一緒にプレイしてたし、ライブの本数もあまり多くはなかった印象があるんですが、今こうしてMO'SOMEみたいな若いバンドとやってみてどうですか?

會田:若いバンドとという意識じゃなくて、「福岡」という意識のほうがあるかな。去年の夏、北海道であった「RISING SUN」ってフェスではじめてナンバーガールを見たときにすごくショックを受けて、僕の中にあった「めんたいロック幻想」みたいなものが蘇ってきて。僕は中学生のときルースターズがとにかく大好きだったから、それからその周辺のめんたいロックとか聴き漁ってたんですけど、それを思い出して。で、今回のこのMO'SOMEとの出会いのことなんかもあって、九州のロックバンドとの不思議な縁を感じてますね。

●めんたいロックについてMO'SOMEは?

百々:タイムリーには聴いてないですね。ただ職場の先輩とかは聴いてましたから、その影響はありましたね。福岡のシーンは僕らの頃までは縦社会っぽいところがあったので、それで聴いてたところはありましたけど。

藤田:僕は全然知らない(笑)。

武井:僕は大好き(笑)。

會田:九州のバンドがめんたいロックって言われるのってどう?

百々:う~ん、そっから後は何もなかったんかいなあ、と思いますけどねえ(笑)。別に僕ら福岡っていう土地を背負って音楽やってる訳じゃないし(笑)。

會田:じゃあ、今度のツアーは俺が「東京サウンド」を背負ってキミらが「めんたいロック」を背負うってのはどう(笑)?

●(笑)今度、実際に二組でツアーをするわけですけど、どんな感じでツアーに臨むつもりですか?

會田:やっぱり去年ナンバーガールとブッチャーズの「HARAKIRI KOCORONOツアー」に負けないような感じにしたいですね。その場にいて空気の震えを感じるような。

百々:こうした対バン・ツアーというのは初めてだし、行ったことのない地方にも行くので楽しみです。あとは胸を借りるつもりで頑張ろうと思います。

會田:それで両方の出番が終わったら一緒にステージ上がって「ジョニー・B・グッド」とかやったりしてね(一同大爆笑)。

 

【FOE プロフィール】
EL-MALOでの活動や他のアーティストのプロデュース、リミックスワークでも知られる會田茂一(Vo/G)が結成した3ピース轟音ロックバンド。ドラムにbloodthirsty buchersの小松、ベースにはマルコシアスバンプや、EL-MALOのサポートとしても知られている佐藤が参加している。6月23日に発売されたmo'some tonebenderとのスプリットシングルは彼らの初音源。7月19日には1stアルバム『ONE RIVER TWO STRINGS』がリリースされた。

【MO'SOME TONEBENDER プロフィール】
'97年、博多で結成。ライブに定評のある彼らは、今までに60FT DOLLSといった来日アーティストを始め、ナンバーガール、bloodthirsty butchers、DMBQpenpalsなどと同じステージに立っている。'99年12月にミニアルバム『DRIVE』をリリース。今回のFOEとのスプリットは福岡のあるイベントがきっかけらしい。メンバー百々(Vo/G)、武井(B)、(Dr)藤田の3人。

司会・文●沢田太陽
撮影●富井豪徳児

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