初めて日本の地に鳴り響いたアメリカンミュージックの良心。

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初めて日本の地に鳴り響いたアメリカンミュージックの良心。
原作者が語りかける本当の声。

Jimmy Webbというアーティストをご存知だろうか?

詳しくはこのサイトのバイオグラフィーに譲るとして、'67年にFifth Dimensionの「Up, Up And Away」(邦題:ビートでジャンプ)という曲でグラミー賞5部門を22歳の若さで受賞し、以来様々なアーティストに数々のヒット曲を提供。アメリカンミュージックの代表的な作曲家として君臨しつづけている。また今日まで自身も9枚のソロアルバムを残している。

Jimmy Webbが表舞台に立つようになって約33年。21世紀を目前にして、Jimmy Webbの初来日公演は一部の愛情あるリスナーとプロモーターによって実現した。ステージはごくシンプルなピアノの弾き語りによるものだ。ステージにはグランドピアノとJimmy Webb、あとは数々の名曲があるだけ。それだけで十分だった。黒のスーツでフォーマルに身を包んだWebbが現れ、何も言わずに演奏が始まると、そこはWebbのソロアルバムよりもさらに私的な、まるで彼のスタジオに居合わせたような雰囲気をおぼえた。ピアノプレイヤーとしても相当の腕を持つWebbの演奏はまったく非の打ち所がなく、繊細な表現力がすべてのアンサンブルを完璧に再現しているように思える。ライブ本編の最後に演奏された「MACARTHUR PARK」の中盤の演奏はまさに圧巻の一言だった。

彼の声はとかく「素朴な声」などと形容されがちであるが、これもなかなかの繊細さとその声量に驚かされた。他のアーティストによる歌唱でしかなじみのない曲も、ものすごい説得力で再現される。これはあまりにも当然のことである。彼はここで演奏されるすべての大ヒット曲の生みの親だからだ。

彼がポピュラーミュージックの作曲について記した著書「Tunesmith」の中で、作曲に必要なものについて、こう書いている。”A quiet place. A simple tape recorder. A legal pad. A notebook - and a full heart.”彼が様々なシンガーに託したいっぱいの気持ちが、彼の生の声で語りかけられているのだ。Glen CampbellArt Garfunkelが代わる代わる登場したとしても、これほどの説得力をもたないのではないだろうか(それはそれですごいが…)。またこれはWebb自身が優れた作詞家でもあるからこそ、なし得る技ではないだろうか。

「BY THE TIME I GET TO PHOENIX(恋はフェニックス)」、「WICHITA LINE MAN」、「MACARTHUR PARK」、この会場に足を運んだすべてのオーディエンスが望んでいたナンバーが次々に演奏される。ファンにとってはたまらない、まさに至福の時間だった。初めて日本の地を踏むWebbは、ステージ開始当初は少々緊張地味のMCを時折披露していたが、徐々に雰囲気を和ませていった。アンコールでは客席から飛んだリクエストに応える一幕もあった。結局東京での2回の公演は、両日とも3回ものアンコールに応えるサービスぶりで、今年で54歳を迎えたJimmy Webbは2時間弱にわたるステージを力一杯熱唱した。不満を持った人は一人もいなかっただろう。

このコンサートの本当に素晴らしかった点は、これを制作した「トムス・キャビン」の企画、実行力にあると思う。素晴らしいコンサートの尺度は観客の動員数ではない。どれだけ素晴らしいショウで人を魅了できるかである。彼らのほかに誰がこのコンサートを実現し得ただろうか。商業的な部分のほかに様々な困難があっただろうことは、容易に想像がつく。これについては話が長くなりそうなので省略するが、「トムス・キャビン」はこれからも先鋭的かつ個性的なアーティストのコンサートを制作していくとの事なので、是非チェックしてみてはいかがだろうか。

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