ライバルを挑発するダンスホールの帝王

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ライバルを挑発するダンスホールの帝王

 

俺は火は吹かない。俺はドラゴンじゃないんだ」 ダンスホールレゲエの帝王、Beenie Manは、Virgin Recordsからのニューアルバム『Art And Life』のリリースを祝う、ニューヨークのIrving Plazaのステージでこう断言した。Beenie Manは図々しくも大げさに、敵対するCapletonを攻撃している。Capletonのキャッチフレーズは「もっと火を」であり、Beenie Manも含めて、バビロンから来たと彼が信じるものすべてに「火を点ける」のが彼の得意技だ。

'90年代初期からBeenieは、ライバルのBounty Killerと歌詞でやりあってきた。しかしBeenieは'98年、“Tour”という曲で有名なラスタマンのCapletonと、ニューヨークのRandall's Islandでのコンサートでマイクを奪い合っって以来、攻撃の矛先をCapletonに向けた。2人のベテランDJは、相手を侮辱する曲を録音すべく、レコーディングのために頻繁にスタジオに入り、お互いの最新ヒットに込められた個人攻撃に対抗。戦いはエスカレートしていった。Beenieは反Capleton曲の“Fire Burn”と“Heights Of Great Man”をレコーディングし、Capletonのほうは“Slew Dem”と“Burn Down Dready”でBeenieを激しく非難した。しかし、このバトルにとっておそらく最も歴史的瞬間は、去年のクリスマスのStingのイベントだろう。Beenie Manは、消化器を手に戦闘服で現われ、故郷の観衆の前でCapletonを象徴的に鎮圧したのだ。

しかしながら、Capletonに刺激されてたくさんの戦闘曲を昨年リリースしたにもかかわらず、BeenieのVirginからのニューアルバムに闘いの形跡は見当たらない。「あれはジャマイカ市場向けなんだ」と彼は説明する。「国際市場では、もっと集中すべき大切なことがたくさんあるし、レゲエは単なる“慈善(競争)”にとどまらない、もっとずっと大きなものだ。Beenie Manにはいろんな面がある。このアルバムはそれを表しているんだ

Beenieの成功の方程式は、どこにでも存在することだ。ジャマイカでは新曲を毎週のようにリリースし、ダンスホール・シーンにピーナッツ売りのように頻繁に出没する。地元メディアがカヴァーする騒動には常に関わっている。ポルノちっくなCarlene The "Dancehall Queen"(有名なダンスホールアイドル)との超話題のロマンスからなのか、物議をかもす歌詞のせいなのか、Beenie Manは“Mr. Mention”(物言う男)と言われている。

わかるだろう」と、ドレッドロックの派手なエンターテイナーは肩をすくめる。「俺はいつも話題の中心なんだ。みんなが俺のことを話したがり、見たがり、聞きたがる。そうでなければ俺は忘れられ、俺の座は誰かに奪われるのさ

Beenie最大のヒット“Who Am I?”でさえ、最初にジャマイカで人気が出たのは、歌詞の解釈をめぐって論争が起こったからだ。ジャマイカ中のファンは、Beenieがゲイのライフスタイルを問題にしているのか、彼の好みを暴露しているのか悩んでいた。彼はこう歌う。「俺は一体だれだ?/カワイコちゃんたち/どうやって野郎とメイクラヴできる/急いで俺のトラックのキーをくれ」。リスナーはこの歌をどう解釈したらいいのかわからなかった。「どうやって野郎とメイクラヴできる?」と皮肉って問いかけているのか。それとも「どうやって急いで野郎とメイクラヴできる?」と具体的に尋ねているのか。

しかし、Beenieの新手のおふざけは、彼の成功を考えれば取るに足らないことだ。2度のグラミー賞ノミネートは言うに及ばず、受賞回数とナンバーワンヒットの数で彼に勝るダンスホールアーティストはいない。Shaggyを除けば、Beenieはメジャーレーベルと契約している唯一のダンスホールアーティストだ。しかし、もっと重要なのは、アーティストの賞味期限がしばしば牛乳より短い業界にあって、7年間もトップに君臨しているBeenie Manが、今も間違いなくダンスホール帝王の世界タイトル保持者だということなのだ。

 

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