“音楽はジャンルじゃない”独自に展開するプロジェクト

ツイート

“音楽はジャンルじゃない”独自に展開するプロジェクト


『IN THE MODE』

ユニバーサルインターナショナル
'97年、衝撃的な1stアルバム『New Forms』で世界中にDrum 'n' Bass大旋風を巻き起こしたRoni Size率いるREPRAZENT

当時のシーンといえば、SquarepusherがJangleとDrum 'n' Bass、そしてBreak Beatsをミックスした曲で沸かせ、REPRAZENTはJangleからDrum 'n' Bassへと、誰もが成しえなかったあるベクロルをひたすら突き進み、提示した。いっそ、REPRAZENT集団がDrum 'n' Bassシーンを核たるものにしたといっても過言ではないだろう。

あれから3年間、世界中で様々なアーティストが次々にDrum 'n' Bassを作り、シーンはどんどん盛り上がっていったが、'99年から2000年にかけて、新しいジャンル2stepが誕生…。そしてDrum 'n' Bassの中心となってきたアーティストの雲隠れなどで、最近ではDrum 'n' Bass界は低迷ぎみだった。

ダンス・ミュージックでは何かとジャンル別けが進んでいったが、逆にそのジャンルの枠から抜け出せずに息詰まっているアーティストが潜んでいる事実も忘れてはならない。

しかし時が進むとともに確実に音も機材も進化している。

アーティストは脱皮を繰り返す。

そしてその枠を突き破るべく、20世紀も終わろうとしている時に、あの幻のライヴを行なった集団“REPRAZENT”が新作『IN THE MODE』をひっさげて帰って来た。何かまた次なるステップを誰しもが期待するのは言うまでもない。

REPRAZENT登場前のフロアには、前座のDrum 'n' Bass DJとMC達が初めからかなり早いBPMを飛ばして場のテンションをあげていく。しかしMCダイナマイトは会場の外でパーカーのフードをかぶってうろうろ様子をうかがいつつ、エネルギーを貯めていたように見える。

▲ロニ・サイズ
キーボード、プログラミングなどの機材や小さなパーカッションがセットされた舞台中央には主要メンバー5人、その下段右下には自信に満ちたRoni Sizeの姿。そして左にはドラムと右にはベースが用意され、遂にREPRAZENTの登場。その姿は3年前よりも、巨大化したビッグ・バンドのようであり、より結束を固めたように見受けられる。

始まりはミドル・テンポの速さであの「Horns」を演奏し、久々の生ドラムンで鳥肌が立つ。引き続き新作の1曲目に入っている「Railing Pt.2」へと続くのだが、この曲は前作のアルバムでも収録され、今回は第2バージョンということで、やはり前回のライヴよりも遥かに進化を遂げたREPRAZENTの姿を見せつけた。

▲MC ダイナマイト
太いベースラインが会場全体を底から突き上げ、それに軽快なビートであおる。以前よりも確実に複雑な音が絡み合い、その音の層の厚さが更なるグルーヴ感に迫力を増す。

過半数は新作『IN THE MODE』からの曲だったが、Drum 'n' Bass Partyではお馴染みの「Heroes」「Brown Paper Bag」「Share The Fall」なども披露され、観客は踊りまくっていた。

新作に入っている「Play The Game」などのメロウな曲が組み込まれることで、ライヴのテンポに強弱が生まれ、パフォーマンス的には以前見た無機質さからの脱出と、ライヴ特有の温かな体温が感じられるようなより有機的、躍動感がうごめいていた。それが妙に気持ちよく、軽快なDrum 'n' Bassのグルーヴにのってしまう。

▲オナリー
また、今回の強調的なもう一つの側面は、音と同じくらいの比重で鳴り響いた、MCダイナマイトの力強いラップと女性ヴォーカリスト、オナリーのハスキーな歌声であろう。

もはやREPRAZENTの音楽はロックやヒップ・ホップと同様、ラップや歌声がかなり重要な存在であり、パフォーマンスの活気を増すだけでなく、心に溶け込んでいくような、訴える音楽なのである。

新作の出来どうり、多方面ジャンルの影響が感じられる反面、“REPRAZENTはREPRAZENT SOUNDである”という3年前から一定の方向を向き、創り続けていることを確実に感じた。

その彼らの音へのこだわりと探究心が、更なる楽曲のまとまりと、次なるステージの音楽性に持ち上げる結果を導いたのではないだろうか。

彼らが創り上げたDrum 'n' Bassというジャンルは、音楽史上でもとても重要な意味を持つものであったし、彼らのベースにもなっている。

しかし今の彼らのサウンドは、一言でそれだけのジャンルには収まらないし、本来そんな必要はない。

ブリストル発のREPRAZENTという彼ら独自のプロジェクトは、1つのベクトルを持ち続け、突き進み、21世紀に向けて大きな一歩を踏み出した。

文●伊藤智子(2000/12/18)

この記事をツイート

この記事の関連情報