世界が注目する日本人DJの次なる野望

ツイート
~

世界が注目する日本人DJの次なる野望


6thアルバム『-漸-ZEN』
SRCL4995 3,059(tax in)

DJ KRUSH

日本ではHip Hopという言葉すら浸透していなかった'80年代中頃、レコードを聴くために使うターン・テーブルを2台用い、単なる“アナログプレーヤー”から新しい音を創り産みだすための“機材”に変えた張本人。日本のストリートからHip Hopを芽生えさせ、浸透させたパイオニアである。

彼が創りだすサウンドやプレイする曲には、決して“派手さ”はない。しかし彼によって打ち込まれたサウンドやビートに対するストイックなトラック、日本の“侘び”と“寂び”の空気を吹き込んだ繊細なる構築美は、国内外を問わず多くのファンを魅了してきた。そして今やジャンルを越えて彼をリスペクトするアーティストは後を絶たない。

そんなDJ KRUSHを含むアーティスト集団<JAG>の活動が昨年の末から始動。その第一弾としてのツアーが全国で繰り広げられ、そのファイナルが新宿リキッド・ルームで行なわれた。更にファイナルではDJ KRUSHのニュー・アルバム『漸 -ZEN-』に収録されている曲をフィーチャーしているアーティスト達と、ライヴ・セッション・メドレー形式でお披露目するというボーナス付き。もちろんそれを逃すまいとたくさんのオーディエンスが集結した。

早い時間には超シークレットゲストShing02が登場し、場内は驚きと興奮でいっぱいだったらしい(惜しくも見逃してしまったが…)。

深夜を過ぎるとMISTA SINISTAが笑顔をふりまきながらの余裕の表情でスクラッチング中。さすが'96年のDMC米・東海岸大会チャンピオンなだけあって、ビート・ジャグリング(レコード2枚使い)の速さは半端ではない。


JAG SESSION
そしてDJ KRUSHと流-RYU-というユニットを組んでいる DJ  HIDE とDJ SAK がMISTA SINISTAを挟んで左右に立ち、3人で固めたDJセットが誕生。それに加えてペインティングでもおなじみのJUN SAWADA、ゲストとしてギタリストの藤沼慎一氏(from アナーキー)も参加。とても落ち着いた口調でのラップ Kukoo Da Baga Bonezが登場し、JAGセッションがスタート。

DJ SAKの流すトラックは幅広い選曲ではあったが少し渋めでキメている。そこにDJ HIDEとMISTA SINISTAのスクラッチにギターやベース、シンセの音が加わることで本当にジャンルを越えた音。オーディエンスもセッションに吸い込まれ、一体化した。

JAGのセッションが終わりDJ KRUSH がブースに上がるとオーディエンスの熱い視線は一気にステージへと注がれた。

1トラック聴いて"DJ KRUSH"とわかるその音のカリスマ性。

ソロDJセットでは自身の曲も節々でかけながら、1曲1曲長めな展開で進めていく。 そして今や会場にいた誰もが知っている声、The Blue HerbのBoss the MCの声が響きわたると一斉に歓声が上がる。DJ KRUSH が初めてBoss the MCとコラボレートした曲。実際にはBoss the MCはいなかったのだが、フロアでは確かに彼の存在を感じた。


こだま和文& DJ KRUSH
そして北国の冷たい風を感じさせる音を受けながら、こだま和文登場。いよいよDJ KRUSHがゲストを迎えてセッションの幕開けである。

ゲストはこだま和文、Kukoo Da Baga Bonez、そしてCOMPANY FLOW。どのアーティストも新曲を含む2~3曲を演奏。DJ KRUSHのトラックに浮きあがるように響いたこだま和文のトランペットとカリンバ。まさに哀愁漂うサウンドだ。

それとは対照的にパンチの効いたラップを初めからぶつけてCOMPANY FLOW。すでに解散が決まり、もう彼らのプレイは見られな
いかもしれ ないとあってオーディエンスは異様な熱狂ぶりで盛り上がる。

ラッパーEl-Pはステージの端から端まで「Make a noise!」と叫びながらオーディエンスを煽る。そして後ろでターン・テーブルを操りながら更に煽るMr.Len。コール&レスポンスでステージとフロアはまさに混然一体。やはりラッパーEl-Pの存在は圧巻であった。


COMPANY FLOW & DJ KRUSH
インストだけで作られた前作『覚醒』とは違う、様々なアーティストの魅力もプラスして作られた『漸‐ZEN‐』の魅力がたっぷり堪能できたセッションであった。

それと同時に“何かを少しづつでも変えなければ決して新しいものは生まれない”というアルバムのコンセプトと同じ彼のポジティヴな姿勢も感じられた。

そして新プロジェクトJAGは、社会的に破壊世紀とも言われた20世紀に露出した問題点を、音楽を通して少しづつ解決し、21世紀に再生していこうと遂に動きだした。

決して形は持たない集団だが、同じ志を掲げたアーティスト達は世界中でどんどんJAGを繰り広げていくだろう。

それと同時に個々のアーティストも音楽への情熱を次のステップへと持ち上げ、またすばらしい音を運んでくれることと信じている。

文●伊藤智子

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス