ネオ・スガ・サウンドを目の当たりにした横浜アリーナ・レポート

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また一歩、確実に歩みを見せたスガ・ライヴ!

“こだわりの打ち込み派”だったスガ シカオが、初のバンド・サウンドを取り入れたアルバム『4Flusher』

その、ネオ・スガ・サウンドを携えて2000年12月から行なってきたツアーは、ライヴハウス→ホール→アリーナと、会場の規模を拡大しながら全21公演を完走。

オーラスのアリーナ・シリーズ、初日の横浜アリーナの模様をダブルでレポート!

SET LIST>

1.かわりになってよ
2.性的敗北
3.ミートソース
4.ヒットチャートをかけぬけろ
5.正義の味方
6.このところちょっと
7.SPIRIT
8.前人未到のハイジャンプ
9.そろそろいかなくちゃ
10.黄金の月
11.これからむかえにいくよ
12.波光
13.AFFAIR
14.あまい果実
15.リンゴジュース
16.イジメテミタイ
17.SWEET BABY
18.いいなり
19.ストーリー

EN1.夜空ノムコウ
EN2.ドキュメント2000~the sweetest day of my life~

WE.愛について

 “女々しさ”を払拭した
 “男”のステージ

会場が暗転。ステージ後方の円状のモニターに、スガシカオとツアーバンドの“THE FAMILY SUGAR”のメンバーの顔写真がコラージュ風に映される。そのメンバー達がいつの間にかステージに登場して、気持ちよく演奏し出した。なかなか歌には入らない。しょっぱなからインストで、まずはバンドグルーヴを見せつけてきたのだ。

このライヴは、スガ シカオ4枚目のアルバム『4Flusher』を受けての全国ライヴツアーで、あと2本のステージを残すのみ、となった横浜アリーナで行なわれた。

満員御礼、立見も入っている。日曜日もあってか、年齢層が広いし、女性が多いようだが、男女の率もほぼ半々だ。そんな観客たちに、バンドを聴いてくれ!とばかりにグルーヴを叩きつけるステージ始まり。それはハードで、ゴツゴツしていて、かなり“男”を感じさせるものだった。CDで聴かれるスガ・サウンドに、私はどちらかというと“女”を感じていた。女々しかったり、やわらかだったり、でも強かったり…。歌詞に表わされるスガの変態性はいつでも“男”なのだけど、それをCDサウンドでは“女”を使うことによって、あるときは強調され、あるときはソフトにさせていた。が、この日のライヴは、サウンドも、とにかく“男らしい男”だった。そんなゴッツい勢いに最初はとまどった感があった観客。けれど、曲が進むにつれて引き込まれていくのが分かる。
.ダメダメハープ演奏を聴かせた「このところちょっと」、ジャキジャキのギターサウンドが歌世界の緊張感をうまく出した「SPIRIT」、アコギで聴かせた「前人未到のハイジャンプ」、ストリングス四重奏を迎えての「これからむかえにいくよ」などで、聴かせる曲、引き込む曲といった好楽曲が多いのが実感。後半は「イジメテミタイ」、「SWEET BABY」、「いいなり」と一気に畳み掛け、盛り上げた。

そして、アンコールではSMAPに詞提供した「夜空ノムコウ」を披露。「歌詞はすっかり忘れてて、タイヘン」とこぼしていたが、再びストリングス四重奏を加えての演奏は美しく、本編で見せてきたオリジナル曲とは別の世界を少し見せてくれたようだった。

今年は、カップリング曲や提供曲を集めたアルバムをリリースするというスガ シカオ。いつもギリギリまで制作する彼には落ち着いた作りができる企画もの、といえるだろう。が、その後、またゆっくりオリジナルを作りたいと語っていて、まだまだ尽きることなく、好楽曲を聴かせてくれそうな様子だった。

文●星野まり子


『4Flusher』


1. かわりになってよ
2. 性的敗北
3. ミートソース
4. AFFAIR
5. 波光
6. ドキュメント2000~the sweetest day of my life~
7. SPIRIT
8. そろそろいかなくちゃ
9. たとえば朝のバス停で
10. 青白い男
11. 木曜日、見舞いにいく
(Album Mix)
 キャパの三段活用による
 ネオ・スガ・サウンドの確立

自分が作りたい音、というよりも、ねじれて跳ねるような独特な歌詞のリズム感を音で表現するために、レコーディングでは敢えてバンド・サウンドを取り入れてこなかったスガ シカオ。その彼が、2000年10月にリリースした4thアルバム『4Flusher』では、それまでの過去3作における打ち込みスタイルから脱却し、今回のツアー・メンバー<THE FAMILY SUGAR>を含むミュージシャンたちとセッションを行なった。結果、歌詞のリズムを完璧に音に乗せる緻密なスガ・サウンドは、その緻密さに有機的緩急がプラスされ、CDとライヴの位置関係が微妙に変化したように思う。

その『4Flusher』を軸にしたセットリストを組み、<SHIKAO & THE FAMILY SUGAR Tour '01 STAGE3>と冠したこのツアーには、<STAGE 1><STAGE 2>という前段階があった。

<1>では数百人キャパのライヴハウス、<2>では千人キャパのホール、そしてラストの<3>が1万人を超すアリーナという、キャパシティの三段活用により、ライヴにおけるスガ・サウンドというものが明確にセグメントされたのではないだろうか? とくに、音作りが難しいアリーナ・クラスの会場の場合、スガのようなタイプのアーティストにとってはクリアしなければならない問題が多かっただろう。
.ツアーの全日程が終了して間もなくして、所属事務所のスタッフから「あの日は本当に音が悪くて残念だった」という内容のメールをもらったのだが、しかし、この大会場でスガ シカオがどんなライヴをやるのか、ということに関心があった私にとっては、とても満足度の高いステージであった。

紗幕に映像を映したド派手なオープニング、フリー・ジャズを思わせるセッションでバンドとのグルーヴ感を漂わせた「ミートソース」、アコースティック・ギターの乾いた音色が大空間を浸食した「そろそろいかなくちゃ」、そして、ストリングス・アレンジによる「夜空ノムコウ」。

この日のMCで、「10年前にドリカムを観にこの会場に来たときには、まさか自分がこのステージに立つとは思っていなかった」と言っていたけれども、“あの頃の未来に”彼は立ち、次の未来に向かう指標を定めたのではなかろうか。

文●望木綾子

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