【音楽と映画の密接な関係 2001 GW Special!】『ミリオンダラー・ホテル』

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音楽と映像の密接な関係――。

U2のボノのインスピレーションと、ヴィム・ヴェンダースのイマジネーションが交差した映画「ミリオンダラー・ホテル」。
アメリカ・ロサンゼルスを舞台に展開されるこのストーリーは、純粋な心が奏でる、無償の愛……。

「人のために何かを成し遂げる」


『ミリオンダラー・ホテル』
オリジナル・サウンドトラック

「ミリオンダラーホテル」オリジナル・サウンドトラック

PHCW-1718 2,427(tax in)
2000年3月23日発売

1ザ・グラウンド・ビニース・ハー・フィート(U2)
2ネヴァー・レット・ミー・ゴー(ボノ&ザ・MDHバンド)
3ステイトレス(U2)
4サテライト・オブ・ラヴ(ミラ・ジョヴォヴィッチWithザ・MDHバンド)
5 フォーリング・アット・ユア・フィート(ボノ、ダニエル・ラノワ)
6トム・トムの夢(ザ・MDHバンド)
7ザ・ファースト・タイム(U2)
8バスタブ(ザ・MDHバンド)
9ザ・ファースト・タイム(リプリーズ)(ダニエル・ラノワ&ザ・MDHバンド)
10トム・トムの部屋(ブラッド・メルドーWithビル・フリゼール)
11ファニー・フェイス(ザ・MDHバンド)
12ダンシング・シューズ(ボノ&ザ・MDHバンド)
13 アムステルダム・ブルー(ジョン・ハッセル、グレッグ・アレギン、ジェイミー・マホベラック&ピーター・フリーマン)
14 サテライト・オブ・ラヴ(リプリーズ)(MDHバンド・フィーチャリング・ダニエル・ラノワ、ビル・フリゼール、グレッグ・コーエン)
15サテライト・オブ・ラヴ(ダニー・セイバー・リミックス)(ミラ・ジョヴォヴィッチWithジョン・ハッセル&ダニー・セイバー)
16アナーキー・イン・ザ・USA(ティト・ラリヴァ&ザ・MDHバンド)




気になる「ミリオンダラーホテル」の予告編はこちら!



『ミリオンダラー・ホテル』
(2000年ドイツ・アメリカ)

2001年4月28日より、日比谷シャンテ・シネ、梅田OS劇場CAPほかにて公開!

●監督/ヴィム・ヴェンダース
●原案/ボノ、コラス・クライン
●音楽/ジョン・ハッセル、ボノ、ダニエル・ラノワ、ブライアン・イーノ
●出演/ジェレミー・デイヴィス、ミラ・ジョヴォヴィッチ、メル・ギブソン、ほか
●配給/東宝東和

上映時間/122分

Special Thanx to www.eigafan.com
「パリ・テキサス」「ベルリン・天使の詩」で知られるドイツが生んだ名匠、ヴィム・ヴェンダース監督が送る、彼自身の30年の監督キャリアにおける記念すべき20作目の映画は、彼の盟友でもあるU2のボノの原案・企画による意欲作であった。

元来彼らは、ヴェンダースがU2のプロモーション・ビデオを監督したり、U2がヴェンダース監督の「夢の果てまでも」「時の翼に乗って」「エンド・オブ・バイオレンス」で楽曲提供を行なうなどかねてから親交が深かったものだが、ここまでガッチリとタッグを組んで制作した映画ははじめてということもあり、かねてから高い注目を受けていた作品である。

ストーリーの内容をザッとかいつまんでおこう。

舞台は2000年のロサンゼルス。かつてルーズベルト大統領などの要人が宿泊したホテル、“ミリオンダラー・ホテル”は、今や社会のはずれ者や心に傷を負ったものたちのふきだまりのようなたまり場へと変わり果てていた。ここに居住するのは、自分を酋長の生まれ変わりと信じて疑わない自称“タール画の芸術家”のアメリカン・インディアンや、自分をジョン・レノンと信じて疑わない自称ミュージシャン(これが喋り方まで絶妙にソックリでかなりおかしい)、昔は上流階級だったと語る老婆、元ハリウッドのエージェントのアル中、あばずれの中年女…。そんな環境の中、雑用をこなしていた青年がトムトム(ジェレミー・デイヴィス)だった。


▲ ロサンジェルスの街並が一望できる屋上を、めいっぱい走るトムトム(ジェレミー・デイヴィス)。ヴィム・ヴェンダース監督らしい、雰囲気のある綺麗な映像が盛り沢山だ。
頭の弱い彼はそんな周囲の小間使いとしていいように使われながらも、心は誰よりも優しい憎めないキャラクター。そしてそんな彼の心をいつもときめかしていたのは、謎のクールな女性エロイーズ(ミラ・ジョヴォビッチ)。

心を開かない彼女に対してよく思わない周囲とは反対にトムトムはエロイーズの心を開こうとときめきを覚えながら近付いて行く。そして、彼女の閉じた心が過去の屈辱的な体験(ハッキリは語られないが文脈的にレイプ)であることをつきとめ、トムトムはエロイーズに惜しみなき愛を注いでいく。

ストーリーはそんなホテルに大事件が起こるところからはじまる。

ホテルの住人だったメディア王の息子イジーが謎の飛び降り死を起こすのだ。これが自殺か他殺か。この事件を巡り、スキナー捜査官(メル・ギブソン)の執拗な捜査がはじまる。イジーはトムトムにとって無二の親友のはずだったが、エロイーズを傷つけた張本人である彼をトムトムは許すことが出来ない。そして、イジーがメディア王の息子ということで世間を騒がすニュースであることを知ったホテルの住人たちは、「社会に隔離された俺達が久々に社会に注目されるチャンス」とばかりに、タール画家ジェロニモの描いた絵をイジーの作品といつわることで社会の騒ぎを利用して一大展覧会を開こうと企画する。


▲謎の女性、エロイーズ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)。トムトムは、そんな彼女に強烈に惹かれていくのだが……。
トムトムはエロイーズに夢中でそれだけで幸せだったが、スキナー捜査官に脅され、ジェロニモがイジーを殺したと無理に言わせられることとなる。ジェロニモが逮捕されたことで「
絵が売れなくなった」と落ち込む住人たちを見てトムトムも落胆するが、そんなお人好しのトムトムを住人たちは利用し、「遊びだから」と偽ってトムトムに「イジーは自分が殺した」と嘘の証言をさせ、それをTVニュースを売り付けることに。トムトムは罪をかぶせられることになるが、イジーがエロイーズを傷つけたことがどうしても許せないトムトムは、自分が罪を被ってでもエロイーズを愛そうと毅然とした態度をとり続ける…。

社会一般の生活規範において正常か否かなどということよりも、誰よりも人のことを想い遣り人のために傷つき、愛する人のためなら自らが犠牲になることも、さらに死ぬ事さえも厭わない“無償の愛”の方がいかに人生にとって大切であるか。この映画はそれを実に力強く我々に訴えかけてくる。ホテルの住人たちの生活も一般の規範からはとてもほめられたものではないが、過去にあった何かに傷ついた彼らに対しても「
自分だっていつ彼らのようになるかわからないじゃないか」とカメラは実に優しげに彼らを包み込んでいる。

また、堅物に見えながらも根底的な部分でどこまでも人間くさいスキナー捜査官を演じるメル・ギブソン、そして、心を閉ざしながらも真摯に愛を注ぐトムトムに光を見い出しストーリーが進む度に表情が神々しい輝きに満ちてくるエロイーズを演ずるミラ・ジョヴォビッチの演技も大いに見どころ。

U2やヴェンダースのファンでなくとも、「
人のために何かを成し遂げる」ことに心を動かされる向きなら見て大いに満足出来る逸品である。

文●太澤 陽aka沢田太陽

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