【FRF'01特集】若手プレイヤーに囲まれ、壮大な実験にご満悦!フジのステージに“イーノのイーノたるゆえん”を見た

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【フジロック'01特集】
若手プレイヤーに囲まれ、壮大な実験にご満悦!
フジのステージに“イーノのイーノたるゆえん”を見た
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● バンドにあわせて軽くステップを踏むイーノなんて、一体誰が期待しただろう

最新 Album

Drawn From Life
BRYAN ENO & J. PETER SCHWALM

Virgin Internatinal VJCP-68327
2001年7月25日発売 2,548(tax in)

1 FROM THAT MOMENT
2 PERSIS
3 LIKE PICTURES PART#1
4 LIKE PICTURES PART#2
5 NIGHT TRAFFIC
6 RISING DUST
7 INTENSER
8 MORE DUST
9 BLOOM
10 TWO VOICES
11 BLOOM(INSTRUMENTAL)


コンバンワ。コンカイ、ニホンゴヲ、ハナスノハ、ハジメテデス。コンヤハ、ワタクシタチノ、ジッケンニ、サンカシテイタダキ、アリガトウゴザイマス。アタラシイ、セイキノタメニ、ワタシタチハ、アタラシイ、オンガクヲ、ツクリタイト、オモイマス。アリガトウゴザイマス」(byイーノ)。

今年のフジロックで何が驚いたって、イーノが高そうなスーツをビシッときめ、流暢な日本語MC(しかも長文でカンペなし)を披露した瞬間ほど驚いたことはなかった。しかし、その驚きは「おおっ、外人なのに日本語がうまい」などという単純なものではなかった。正確に表現すると、たったひとつのMCだけで“イーノのイーノたるゆえん”を表現してしまったその手管の鮮やかさに驚いてしまったのだ。

“俺はバカなロッカーと違って、頭がいいのさ。だから初めてでもこんなに喋れるんだ”と自慢気なイーノ。きっとロシアの自宅でスゲー特訓してきたんだろ~な、とその練習風景を想像するにつけ、思わず吹き出しそうになるイーノ。観客にフレンドリーに語りかけようとすればするほど、反比例してヴォーカルと同様に無表情なトーンになってしまう天然アンドロイドな男、イーノ。

そのすべてが、我々ファンが愛して止まない“あの”イーノなのだった。“あの”というのは、世間的にはアンビエント・ミュージックを発明したり、トーキング・へッズU2のような大物バンドをプロデュースをしたりと、ある意味でロック界の知性の代名詞だが、ファンにとっては不器用で人間臭く、どこか憎めないオヤジ――というギャップを含んでいる。

そんなわけで、このMCだけで後は彼がどんな壮大な“実験”を行なおうが許す、という気持ちになってしまった。今回このライヴのために結成されたバンドは、若手のプレイヤーが中心。全員スーツにビンテージ楽器でヒップにきめ、セットリストの大半をしめた新曲は、まんまひと昔前に流行ったアシッド・ジャズのようなジャズ/フュージョン系のスタイル。演奏はキメがビシバシきまり、おそろしくタイトで格好いいんだけど、アンビエントの創始者、イーノが送る“夜空の下でまったりとチル・アウト”系の音楽を期待していたむきには予想とかけ離れたものだったと思う。

また、事前のインタビューなどで「今回はイーノがボーカルをとるらしい」という情報を入手していた者には、ヴォーカルらしいヴォーカルをとったのが新曲「Bottom Liners」ぐらいで、その他はフィルターで声を変調させたり、サンプラーでウイリアム・バロウズ(!)のナレーションを流したり、あとはシンセでちょこちょこ弾く程度、という微妙なフロントマンぶりには消化不良を感じずにいられなかっただろう。


▲Brian Eno
ステージ上で終始ご機嫌だったイーノ。途中でメンバーを1人ずつ紹介してから「で
、わたくしがデイヴ・ブルーベックです」と。
… お、面白いです、博士…

しかし、期待どおりにいかない部分まで含めてイーノなのだ、と思えばそれらの不満も些細なことに思えてくる。何より前述の「Bottom Liners」のヴォーカルは、ひそかにファンに人気が高いセカンド・アルバム『TIGER MOUNTAIN』を彷彿とさせるすばらしいものだったし(イーノの歌を聴いたことがない人は一様に、彼の無表情だが独特な味のあるヴォーカルを“面白い”と誉めていた)、ライヴの後半にいくにつれ、混沌としたサウンドへと変化してアンビエント色が高まっていき、アンコールでは『Before & After Science』のオープニングを飾る名曲 「No One Receiving」も披露してくれた。ましてや、バンドのサウンドにあわせて軽くステップを踏むイーノなんて、一体誰がそこまで今回のライヴ期待していたかと思うような代物である。

壮大なる“ジッケン”が成功に終わったと感じていたのか、アンコール最後では2曲目にやった「Warnography」をもう一度プレイする大サービスぶり。終始笑顔のイーノに盛り上がる大勢の観客。何より、イーノの「人柄」に感銘を受ける、トータルで2時間を超す素晴らしいパフォーマンスだった。

ところで来日前は「富士山の麓みたいな、変わった状況でライヴでやるのが好き」と語っていたイーノ。パティ・スミスが“フジサーン”と叫んでいたステージも観にきていたそうだが、イーノ本人は苗場が富士山でないことは、ちゃんと気づいてプレイしていたのだろうか?

文●K.O.D.A

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