抑えた演出と磨きあげられた表現力を披露――“ラヴァ-ズ・ロック”ツアー最終日

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抑えた演出と磨きあげられた表現力……“ラヴァ-ズ・ロック”ツアー最終日
 

Sadeはトレンドには汲みせず、独自の洒落たたたずまいを保っている

最新アルバム

LOVERS ROCK
EPICインターナショナル ESCA-8243
2000年11月8日 2520(Tax in)

1 BY YOUR SIDE
2 FLOW
3 KING OF SORROW
4 SOMEBODY ALREADY BROKE MY HEART
5 ALL ABOUT OUR LOVE
6 SLAVE SONG
7 THE SWEETEST GIFT
8 EVERY WORD
9 IMMIGRANT
10 LOVERS ROCK
11 IT'S ONLY LOVE THAT GETS YOU THROUGH

Sadeは、そんじょそこらのディーヴァとは違う。ジャジーなアダルトコンテンポラリー・シンガーとして名を馳せる彼女は、その繊細な表現力に一段と磨きをかけている。アリーナ級のツアーといえば、華々しい振付けのダンスやパイロなどなどの特殊効果に頼って観客を圧倒するものが大半を占める昨今にあって、Sadeはそんなトレンドには汲みせずに独自の洒落たたたずまいを保っており、9月21日、L.A.のGreat Western Forumに集まったファンが見たかったのも、まさにそれなのだ。

2時間に及ぶSadeのショウの中で唯一、演出上の見せ場となったのが“No Ordinary Love”の演奏中のライトショウだった。3分間にわたって照明が会場を照らし出すと、彼女は意外なくらい力強い、刺すような声で同曲を歌い上げたのだ。

それを除けば、『Lovers Rock』ツアーの最終日となったこの日のショウは音楽に焦点を絞ったもので、Sadeは大半の曲(ハイライトである“The Sweetest Taboo”や“Smooth Operator”も含めて)をステージ中央で抑えた声で歌い、かたわらではサックス奏者とギタリストが各々に絶妙なソロを披露した
。いずれの曲も予想されたアルバムヴァージョンに続いて、バンドがファンク調の演奏へと脱線していく。普段は大人しい歌い手の彼女も、これには2人の男性コーラスと並んで腰を振り始める。チャチャのダンスの振付けが施されてはいるものの、踊りの腕をひけらかすというよりは、音楽のうねりに身を任せてのことであるのは目にも明らかだ。

Sadeはまた、曲間のお喋りを最低限に控えていた。曲を紹介するにしても、せいぜい2行分程度。母親や娘に感謝したり、あるいは“Smooth Operator”に出てくる悪い男は額に“危険”と印を付けておくべきだと語ったり、という具合だ。世界貿易センターと国防総省へのテロ攻撃から間もない時ではあったが、彼女はそのことには敢えて触れず、しかしショウの冒頭と幕切れの曲がその答えになっていたように思える。Bob Marleyの心休まる“Three Little Birds”が会場に鳴り響く中、ステージに上がった彼女は“Cherish The Day”で幕を開け、2度目のアンコールの後には2人のバックシンガーだけを従えて穏やかなゴスペル風の曲でショウを締め括り、皆を高揚した気分で家路へと送り出したのだ。

前座のIndia Arieも見事なショウを展開し、新しいファンをひとしきり獲得した。観客の大半はIndiaの音楽に馴染みがなかったけれど、彼女の声の温もりと、曲が持つ情熱――特にシングルの“Video”や“Brown Skin”――は、Sadeを待つ心の準備にもってこいであることがわかった。

By Billy Johnson Jr./LAUNCH.com

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