ポール・マッカートニー DVD『WINGSPAN』最速レビュー

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昨年5月にアメリカで放映されたテレビ特番のDVD化。'70年のビートルズ解散から'80年の日本での来日逮捕劇までの10年間をポール自らが語ったというとても興味深い内容である。聞き手を務めたのは次女のメアリー。娘を相手に自宅でフランクにおしゃべりをする形式はまさにお父さんの昔話状態だが、それゆえに、何事に関してもとても率直に受け応えている。「リンダとは実はできちゃった結婚」だったとか「ドラッグ栽培で逮捕」や「成田での現行犯逮捕」などが、もう時効とばかりに昔話として消化されている。

ジョンヨーコの10年もとても興味深いものだが、ポールとリンダの10年もなかなかドラマティック。その対比こそが2人のキャラクターを映し出す。ポールのウイングス時代はよく“家族旅行”であって“ロックツアー”ではないと言われていた。しかしこの作品で改めて振り返ると、あきらかに“家族旅行”の域を越えたツアーであったことが分かる。世界各国(辺境も多い)でレコーディングを行ない、ツアーを廻り、とそれだけでも十分に過酷だが、そのすべてに4人の子供たちが同行していたというのだから常軌を逸しているというか、アイディアマン、ポールらしいというか。そのドキュメントがロードムービーのようで、とても面白い。この作品のいちばんの見所はやはり貴重な映像だろう。ジョンもかなりの自分マニアだが、ポールはそれを軽く上回る。とにかく記録フェチではないかというほど、ホームビデオによる細かい映像を残している。隠遁生活をしていたスコットランド、家族で行ったジャマイカ、レコーディングで訪れたニューオリンズ等々。そしてそこには、今までほとんど見せたことのない、普通の人間、素顔のポール・マッカートニーが映し出されている。そしてもちろん演奏シーンも素晴らしい。どれも細切れなのが残念だが、ビートルズ時代の早くから映像に興味をもっていたわりには決定的な映像作品がなかったポールだけに、これはファンを十分に納得させる代表的映像作品といってもいいだろう。出色の内容だ。

文●竹中吉人(01/11/12)


タイトル :WINGSPAN (DVD)
アーティスト:Paul McCartney&WINGS

発売日 :2001年12月06日
発売元 :東芝EMI
商品番号:TOBW-3035
価格 : ¥5,250(tax in)
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