【音楽と映画の密接な関係 2002 お正月 Special!】『バンディッツ』

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コミカルだけど、大胆でスリルな展開! 憎めない3人の“お泊り強盗”と三角関係

脱帽! 神経症気味のイケてない強盗役&ちょっとイカレた人妻役

バンディッツ
(2001年アメリカ)

始まりは刑務所の中、服役中のジョー・ブレーク(ブルース・ウィリス)とテリー・コリンズ(ビリー・ボブ・ソーントン)が出会うところから。ある日ジョーは、刑務所内に入ってきたミキサー車を衝動的に強奪、居合わせたテリーもこれに乗り込み、車は大爆走。看守たちの追撃を振り切り、脱獄に成功する。友情で結ばれたふたりは、メキシコでの優雅な生活を夢見て、資金集めのために銀行強盗を繰り返す。これが、究極の手口とも言える “お泊り強盗”だ。そんな中、ひょんなことから人妻ケイト・ウィーラー(ケイト・ブランシェット)が仲間に加わる。が、やはり男と女。結局彼らは三角関係に陥ってしまう。そして、そのまま舞台は強盗ツアーの最後の目的地、カリフォルニアへ。――そこには壮絶なクライマックスが待っていた!!!。

2001年12月29日より、全国松竹・東急系にてロードショー
●監督/バリー・レビンソン
●脚本/ハーレイ・ペイトン
●音楽/クリストファー・ヤング
●出演/ブルース・ウィリス、ビリー・ボブ・ソーントン、ケイト・ブランシェットほか
●上映時間/124分

オリジナル・サウンドトラック

「バンディッツ」オリジナル・サウンドトラック

SICP-74 2,520(tax in)
2001年12月19日発売

1 Gallows Polo/Jimmy Page&Robert Plant
2 Tweedle Dee & Tweedle Dum/Bob Dylan
3 Holding Out For A Hero/Bonnie Tyler
4 Twist In My Sobriety/Tanita Tikaram
5 Rudiger/Mark Knopfler
6 Just Another/Pete Yorn
7 Walk On By/Aretha Franklin
8 Superman(It's Not Easy)/Five For Fighting
9 Crazy 'Lil Mouse/In Bloom
10 Just The Two Of Us/Grover Washington,Jr.& Bill Withers
11 Wildfire/Michael Martin Murphey
12 Total Eclipse Of The Heart/Bonnie Tyler
13 Bandits Suite/Christopher Young

とにかくイキです、この映画。そして、痛快にして爽快。観終わった後は、胸がスッとして気分がよくなっちゃうことは確実。


▲もつれる三角関係。それでも笑えちゃう三人。
何がって、まずは、絶妙に練りこまれたストーリー。“お泊り強盗”という犯罪手口のおもしろさはもちろん、シャレたユーモアあり、アクションあり、恋愛模様あり、しみじみ感動ありと、あらゆるエンターテインメント要素が織り込まれながら、それらがとっちらからずにミックスされたその劇展開は、お見事のひと言に尽きる。

とりわけ、劇中に何気なく伏線を設定した上での、壮大なクライマックスは圧巻。きっと観た人のほとんどが、「えっ?」「マジで?」などと意表を衝かれ、最後には「そっかー!」と感嘆の声を漏らすだろう。ああ、これ以上明かせないのが悔しい~。

それから、ブルース・ウィリス、ビリー・ボブ・ソーントン、ケイト・ブランシェットが演じる主人公の、三者三様の超個性的なキャラクターと、彼らが繰り出す軽妙なトークと絶妙な“間”。これがまた素晴らしい。

ブルース・ウィリスといえば、何と言っても『ダイ・ハード』での、ちょっとドンくさい刑事役のイメージが強いが、今回は一転、銀行強盗役。これだけでも興味を惹くし、実際彼はクールでタフな犯罪者像を、巧みな演技で描き出してみせている。


▲“お泊り強盗”(どういった強盗かは、観てのお楽しみ♪)に、とうとうクライマックスが…!
が、個人的にさらに大きな拍手を送りたいのが、あとふたりのほう。ビリー・ボブ・ソーントンは神経症気味のイケてない強盗役に、ケイト・ブランシェットはちょっとイカレた人妻役に、完璧にハマっている。そうしてこれらの3人が、これ見よがしなコメディをやるわけでも、おちゃらけるわけでもなく、至って真面目な演技の中の、会話と“間”の妙で笑いを誘う。これが本当に小気味いいのだ。

ちなみに、強盗犯ふたりが変装する場面があるのだけれど、ビリー・ボブ・ソーントンの、おとぼけニール・ヤングはかなり笑えるので、ご期待を。それと、ふたりが人妻を口説き合う、バーでの1シーン。これにも注目していただきたい。


Neil Youngの『After The Goldrush』(1970年作品)。テリー(ビリー・ボブ・ソーントン)がこのジャケのニールを真似るシーンあり!
もうひとつ、この映画には大きな魅力がある。それは音楽。ここまで上手い音楽の使い方をされている映画は、それほど多くはないのではないだろうか。ボブ・ディランにペイジ&プラント、マーク・ノップラーといった渋いベテラン勢から、ピート・ヨーンファイヴ・フォー・ファイティングといったニューカマーまで、ロックを中心とした実力派の楽曲が起用されているのだけれど、そのどれもがシーンにマッチした佳曲で、映画にいっそう鮮やかな彩りを添えている。

…というわけで『バンディッツ』。どこを取っても美味しい、正月にふさわしい上質の娯楽映画に仕上がっていると思います。ぜひ!

文●鈴木宏和

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