フューチャリズムを信じるデトロイト・テクノのオリジネイター

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フューチャリズムを信じるデトロイト・テクノのオリジネイター

「自分が歴史の一部だってことは、歴史が自分を追い越すまでわからないんだ」

Derrick May×System 7 注目作

『MYSTERIOUS TRAVELLER』

A-Wave RECORDS 2002年6月29日
BRC-58 2,500

1 Altitude(Mayday Mix)
2 Mysterious Traveller(Groovy Intent Mix)
3 Big Sky City(Mayday Mix)
4 Icon(Montage Mix)-Rhythim Is Rhythim
5 Prototype 1(Electron Mix)
6 Fractal Liaison
7 Mysterious Traveller(Fire Mix)
8 Big Sky City(Above The Clouds Mix)
9 E-Merge
10 Overview
11 Listen(Thrash's Mix)


The Orbのアレックス・パターソンの紹介がきっかけとなって'90年から始めたDerrick MayとSystem 7のコラボレーション。その10年間のコラボレーション曲が収録されている。

――僕は精神的にもすごく辛い時期があって、その時初めてあなたの曲「Strings Of Life」を聴いたんです。オーバーじゃなくって、あの曲で人生が変わったっていうか…それまでは鬱に入っていたんだけど、それからすごくポジティヴになって…。

Derrick May:
自分も、ちょうど「Strings Of Life」を作った頃、プロのスポーツ選手になる夢をあきらめたんだ。

――アメフトをやってたんですよね。

Derrick May:
そう、それと陸上で国際的な選手だったんだよ。その頃、自分にはもうアスリートとしてやっていくチャンスがないと思ったんだ。俺にとっての人生の転機だった。物事に対して恐れを感じるようになったし、感情的になっていた。“自分はスポーツをするために生まれてきたと信じていたことが、目の前から消えてしまって完全に目標を失ってしまっていたんだ。音楽はそれまで2番目に大切なことだと思っていたんだけれど、それから真剣に取り組むようになったんだ。 「Strings Of Life」には色々な感情が込められているんだ。あの曲はようやく自分のヴィジョンが見えた曲でもある。ダンスのオーケストラ、勝利の曲、すごくエモ-ショナルで泣きたくなるような悲しい曲…。そして、同時にハッピーだし、情熱的なラヴ・ソングでもある。世界で一番高い山に登りたくなるような感じの音楽でもあるんだ。わかるかい? この曲に関して別にコンセプトがあったわけじゃないよ。今言ったような様々な感情さ。それを音楽を通じて表現したかったんだ。

――「String Of Life」の成功はあなたにどのような変化をもたらしましたか?

Derrick May:
実は「Nude Photo」(デビュー作)より先に「Strings Of Life」を作った。でも、俺はリリースするのをためらった。みんながこの曲を理解してくれないんじゃないかと思ってね。その他にも10~20曲位「Strings Of Life」みたいな曲を作っていたんだよ。でもリリースしなかった。その曲のテープは今は手元に残っていない。全部盗まれてしまったからね。友達が俺の家に来てテープを持っていってしまったんだ…。だから、自分が作った曲なのに、どんな音だったかすら、覚えていないものがたくさんある。俺はみんなを信用していたのにね。自分にとって重要なものをたくさん失ってしまったよ。

――あなたがテクノを始めて、レイヴ・カルチャーが後についてきたと一般的に言われているけれども・・・。

Derrick May:
俺だけがリーダーなわけじゃなくて、ケビン(・サンダーソン)やホアン(・アトキンス)も、シカゴの連中だって間接的にはインパクトを与えていると思うし、ラリー・ハード(シカゴ・ハウスの名曲「Can You Feel It」などで知られるプロデューサー)もすごく重要だと思う。テクノの始まりにもたくさんの人が関わっていると思うよ。自分のことは、梯子の階段の一本だと思っているんだ。

でも、最近パーティに行き始めるようになった14歳のキッズは、デリック・メイが誰なのかなんて知りやしないよ。彼らは、僕達の伝説は知っているかもしれないけれど、それは全く意味をなさないんだ。なぜならキッズは“今
を生きているからね。成長している時は歴史なんて関係ないのさ。大人になってからわかるものなんだ。自分が歴史の一部だってことは、歴史が自分を追い越すまでわからないんだ。

――トランスとあなた達の音楽であるデトロイト・テクノの違いをどのように捉えてますか?

Derrick May:
関連性のある音楽だと思うよ。トランスだって、もともとは20年位前のヨーロッパのテクノにルーツを持っていると思うしね。

――でも、サウンドが違うような気がするのですが…。

Derrick May:
うん、違う。だって、もっときれいになってダンス・フロアのために定義されていると思うし。ラジオのためにデザインされたりとか、レコード会社もサポートしているからすごく商業的な音楽として機能するようになっている。そういう風に作られているしね。でも、デトロイト・テクノではそれができなかったんだ。俺たちはポップスターになることに興味がなかったし、人にあれこれ命令されたくもなかった。でも、トランスのやつらはそういうことに対してすごくクールだし、世渡りが上手いんだよな。

――そうすると、音楽に人間味がなくなると思うんですけど。

Derrick May:
彼らはそれを気にしているとは思えない。気にしている人たちは少数派だと思うよ。でも、俺は気にしているよ。もちろん、少数派だ。自分の使命は音楽を通じて人の意識を変えていくことだと思っている。でも、音楽をプロデュースすることと、今の自分のようにDJとしてのみ活動していくのでは大きな違いがあるんだ。俺が自分で音楽を作っていれば、最低でも少数の人の意識を変えることができるけれど、DJではできないと思う。でも、DJは人が知らない違う音楽があるってことを気づかせることはできる。しかし、そこまでだ。人の意識を変えることはできない。人の意識を変えることができるのは音楽を作ること、アルバムをリリースすること、インタヴューで話すこと、そしてアーティストを育成していって、自分を追い越してもらうことだ。


――作品がしばらく出されてないようですが…。

Derrick May:
今レコードを作っていないのは、ベルギーのレコード会社と契約上の問題があって、その解決に何年もかかってしまっているからなんだ。それについてはひどく心を痛めてしまっているよ。ずっと何年間も音楽を作ることができなかったからね。だからそのレコード会社のために音楽を作らなくてはいけなくなるんだろうけれど、サインしてしまったものはしょうがない。これはビジネスであって、パーソナルな問題ではないから、やるしかないんだ。自分と周りの人たちの心の中にある愛情を搾り出すようにしていい音楽を作るしか…。今、何かをしなくてはいけないと思っているしね。たまに別名義でやればいいじゃないかって言われることもあるけれど、俺は自分のスタイルを隠すことなんてできないから、今の時点で名前を変えて違うことをやったりできない。JaguarのDJ Rolandoのリミックス(多くのDJに未だプレイされ続けているデトロイト・テクノの大ヒット曲)だって、俺によるものだってすぐわかっただろ? (しばらくの沈黙のあと)俺は自分の音楽と名前を別々にしたくはないんだ。

――あなたの音楽を“フューチャー・ミュージック”と形容することもありますが、あなたは未来をどう見ていますか?

Derrick May:
もう想像はしないんだ。俺は未来の一部になることを望んでいるよ。Transmat(自身のレーベル)は俺にとってすごく重要だ。常に先を歩かなくてはいけないし、ヴィジュアル的にも認識されていなくてはいけない。なぜならレーベルが俺という人間そのものだからだ。俺が歳をとってもう一度、音楽を作るようになったらレーベルは意味を持ってくる。レーベルは俺の音楽を代表するものになるからね。Tony Drake、Alice Hyman、Steven Brownとか今後、続々とリリースされていくよ。


――Transmatを知らない人のためにポリシーを教えて。

Derrick May:
コアに本当のエレクトロニック・ミュージック。それが何かっていう事に対しての本当の理解と、それが何かっていうことそのものだ。俺たちは常に未来へ向かっている。フューチャリズムを信じている。未来を見つめ、未来の一部になるんだ。

取材/文●門井隆盛

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