あの男が、ついにメジャー・デビュー!

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'97年、バイ・ファー・ザ・ドーペストとしてシーンに颯爽と登場した後、
活動の場をソロに移したCUEZERO(キューゼロ)。
昔からの仲間、
カセット・ヴィジョン・クルー(キック・ザ・カン・クルー、DJタツタイノセンスなど)と共に
成長を続けた彼が遂にメジャーの舞台に上がってきた。

が、インタヴューに現われた彼は、饒舌で、テンション高く、
自分のヴィジョンを勢いよく喋り、
つまり、6年前に筆者と初めて出会った時と何も変わっていなかった。
仲間達と比べてやや出遅れたかに見えた彼の歩みだが、
…となると、彼にとってよい時間だったのだろう。

そう、大切なのはペースのスピードをコントロールする術だ。
予言するが、これからの彼は遅れを取り戻すかのように回転を上げるだろう。

人を羨ましいと思わなくなってから、気が楽になった
1st ALBUM

『CUEZERO THE WORLD 秋の祭典』

2003年2月21日発売
CRCP-40031 2,700(tax in)

1. トップホイッスル 
2. CUEZERO THE WORLD
3. モノホンヒップホップ
4. フォーリンローリンmessage
5. イーゼ(Album Version)
6. 湾岸ドライブ
7. フォロー ザ リーダー
 fea,LITTEL for KICK THE CAN CREW
8. all my jap
9. シノビ.コム(Album version)
10. 夕べの奴は…
11. TOKYO 迷子~それが団地~
12. To my Father
13. バトルの「B」Part 2 feat.童子-T
14. STOP & GO(Album Version)
15. 最期に
【BONUS TRACK】
16. To my Father KREVA REMIX



Interview Movie




 インタビュー映像を見る
――どんなアルバムを作ろうと思ってました?

CUEZERO:
タイトルどおり“俺の世界観”を打ち出せればいいなって思ってました。なおかつ、一曲一曲、ノートの1ページずつが被らないものにしたかった。ページを開く度に別の世界観がある、っていうものをやりたかった。前回のアルバム(『ZERO』)は俺の中で、なんて言うんだろうな、何か形を残さなきゃいけないっていう強い気持ちがあって、それがいわゆる余裕のなさというか、わかりやすいアートに繋がらなかった部分があったと思うんですよ。でも今回はそれを自分の中で消化して、自分なりに肩の力を抜き、本当に自分の身近にあるコンセプトを持ってきて、被らないように、ひとつのことで言い切り、次は全く別の何かを言って、ということを考えてたかな。

――それは主に歌詞の話ですね。

CUEZERO:
そうです。けど俺、歌詞と音は確実に連動してるから。コンセプトを考えるときにもう音は聴こえてて。ビートの感覚とテンポ感は自分の中にあるじゃないですか。で、音はやっぱレコード聴いてかないとわかんないですよね。だから全部サンプリングなんです、今回。オール・サンプリングなんだけど、まず俺が先にリリック持ってたから、「俺、こういうこと言いたいから、こんな感じの世界観が欲しいんだよね」って話をまずして、そっから一緒にトラックメイカーとレコード聴いて、「あ、これじゃん、これで言いたい」っていうふうに作っていきました。だからやっぱ、G.M-カズ、クレヴァ、タツタ、ロック・ティーって、近い距離の人間ばっかりになっちゃいましたね。おかげで凄くやりやすかったけど。

――そういう作り方だと、やっぱりサンプリングのほうが向いてますね。

CUEZERO:
っていうか、ヒップホップってそこしかないんじゃないかなぁ。だって聴かなきゃ何も浮かばないじゃん、みたいな。こないだ、なんかインストものを聴いてて、凄く音細かく作る人だったんだけど、そこと戦ったら勝てるわけないって思ったんですよね。"高い音"を作る人たちと俺ら戦うんじゃないって。レコードの音を一発サンプラーぶち込んで……むしろ、ちゃんと音作ってる人たちが聴いたら「なんだこれ?」って思うわけじゃないですか。今、ヒップホップってすごいわかりにくくなってるけど、やっぱ俺、その感覚に凄くヒップホップを感じるんですよね。サンプリングでしか作らないなんて言い切らないけど、サンプリングで閃くんだったらサンプリングしてきますね。うん。

――トラックメイカー兼エンジニアのG.M-カズ氏とは、長い期間話しながら音の好みを伝えていったそうですが、具体的にキュー君が好きな音ってどういう感じなんですか?

CUEZERO:
んー、音っていったらわかんないですけど、まず、あんまり音数いらないんですよ。というかね、音楽っていうより、セットみたいな感じなんですよ。俺が役者で、ひとりでステージに出てくわけですよ。その時のセットが欲しいの。雰囲気が欲しいだけ。だからメロディじゃなくていい。雰囲気さえ出てればいいんですよね。その代わり、細かく注文は言わせてもらう。まず、トラックから他の音を一回全部取って、ビートだけ聴かせてっていうことが凄く多い。で、その状態で成立してなければナシ。ビートがダサいっていうのはナシ。で、ビートが良かったら、そこから一個ずつ足していく。ちょっとベース出して、あ、これでいいじゃん、これでラップする、録らせてって感じ。トラックメイカーは嫌がるかも知れないけど、それが嫌がらなかったのが、「トップホイッスル」「キュー ゼロ ザ ワールド」ですよ。ラップする人がひとり入ったわけですよね、プロデューサーに(注・クレヴァのこと)。それに確実にわかってるタツタ。音は声で作ればいいってことがわかってるんですよ、彼らは。逆に、もしそこで嫌がるトラックメーカーがいるんだとしたら、早く考え方変えた方がいいって言いたい。ラッパーがミュートしろって言って嫌がるトラックメーカーがいるんだとしたら、俺、そいつはヒップホップとは思えない感じですね。

――今の日本のヒップホップ・シーンはリリースも多くなってますが、やる側としてはプレッシャーを感じたりしないですか?

CUEZERO:
全然。だって別だから。この人と被ってるって人いないですからね。俺、今そこが自分を気に入ってるところ。人を羨ましいと思うことが減ったんですよ。俺、バイファー(注・バイファー・ザ・ドーペスト。クレヴァとキューゼロのグループ)止めたあとキックが売れたじゃないですか。言ったらあんな悔しいことってないと思うんですよ。というか、少なくとも世間の人は俺をそう見たと思うんですよ。「アイツかわいそうだな」って。で、まず最初に、彼らを羨ましいと思ったら“負けだ”と思ったんですよね。で、ポジティヴに考えようと思えば思うほど煮詰まってた時は確かにあったんですけど……。ただ、彼らも彼らでキャリアを積んだわけで、じゃあ俺も自分で積むしかないなぁって自分の作業に没頭していった時、まず一番最初に羨ましさが消えたんですよ。で、今度はそんなオレのふさぎ込んでる部分も、表現することで興味持ってくれる人が出てくるんですよね。羨ましくない羨ましくないってストイックに突き詰めていった結果、今度はそれが誉められるようになるわけですよ。ガツッとのし上がってやろうとかが一回なくなって、人を羨ましいと思わなくなって……ひとつ“俺”だけをつくればいい。そう考えるようになってから、気が楽になったの。だから服も全部無地だしね。

――ははは。

CUEZERO:
Tシャツも無地でいいっすね。柄はいらない。迷彩ぐらいで。最近、お洒落とかしなくなっちゃって。ね、みんなきっちり、バスケットやんないのにバスケットシャツ着て。俺結構、あれとかヤダなぁ。マメに洋服屋さんチェックしてるラッパーはあんまりカッコイイとは思えないな。だったら家でリリックだけ書いてる人の方が俺は憧れちゃうんですよね。無欲の境地というか、あんまり欲しいものない方がいいっすよ。けど欲しいと思ってるモノは絶対手に入れるけど。

――絞ったモノを手に入れる?

CUEZERO:
ハイ。それだけだったらいいよねってモノだけを手に入れる感じ。だからね、基本的には暗いっすよ。趣味ないじゃないですか。だからテレビ観てたりとかしますね、一日。それでずーっと文句言ってます(笑)。

――いいリリックが書けそう…。

CUEZERO:
もう2日も出てねぇ、しょうがねぇから彼女つれて買い物行こうかって出かけて、池袋の駅下りて、そのまま帰ったことがありますよ。無理、俺歩けないって。

――危ない人だなぁ。

CUEZERO:
病んでますよねぇ。前まではそれを隠して、ちょっと普通の人っぽくしてるところがあったんですよ。けど最近そのオタクな部分を隠さないっていうか、むしろそこ全開でいきたいんすよね。そう思ってから俺、凄くいいなぁ。ナルシストに磨きがかかった感じ。そのかわり、嫌いなところはいち早く見つける。で、あ、俺ここが弱いとこだっていうのは、隠さず歌っちゃう。そういう感じです、今は。

文●古川 耕

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