カフェ・ミュージックから飲茶音楽へ! 二胡で奏でるバート・バカラック

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心の奥まで入り込む二胡の音色。
叙情的で懐かしさが込み上げるその奥深い音色は、出生地の中国だけでなく、
今や世界的な音としてポピュラーなものになりつつある。
その二胡の代表的な奏者であるウェイウェイ・ウーが作り上げたのが、
このアルバム『プレイズ・バカラック』
世界中で愛されるバート・バカラックの曲をピックアップし、
チャーミングな二胡の音色で聞かせてくれる作品だ。
二胡をポピュラー・ミュージックで弾くことの意味、
そしてなによりも、彼女が魅せられた二胡の魅力について語ってもらった。

 
──今回取り上げているバート・バカラックは歴史に残る名作曲家ですが、彼との出会いは?

ウェイウェイ: '60~'70年代に活躍した人ですから、私の生まれる前ですね。最初に彼の作品と出会ったのが15歳の時、上海の友人の家で聴いたカーペンターズでした。その中の「Close To You」がすごく新鮮で、まだ英語も喋れなかったのに音で覚えて、歌えるようになりました。それがすごく嬉しかった。それから日本に来て、いろいろな音楽を聴くようになって、また彼の他の多くの作品を聴くようになりました。

──今回演奏された中で、演奏的に難しいものなどはありましたか?


ウェイウェイ: ありましたよ~。今回は私の大先輩であり、私の二胡の良き理解者でもある中西俊博さんが「サン・ホセへの道」をアレンジして私に渡してた時に「これ、演奏できたらスゴイよ」って。最初からできそうにないものを作ってくれたんです。レコーディングの最初の頃は弾けなかったんです。それで、普段弾く時は歌詞のことはあまり考えないんですが、この曲は歌いながら弾くフレーズを考えました。歌詞の置くところによってメロディが変わるんです。そこが難しくて……。中西さんは1stアルバム『メモリーズ・オブ・ザ・フューチャー』でもアレンジをしていただいて、チック・コリアの「スペイン」など、二胡の新しい可能性を発見できたんです。

──それはテクニカル的に? それとも情緒的に?


ウェイウェイ: 両方ですね。シンプルなポップスと違って、シンコペーションが難しくて、それがちょっとでもズレれば、この曲じゃなくなるんです。曲自体の感性をつかむのが難しい。さらに二胡っていうのは叙情的な楽器なので、あまり細かいことを表現するのには向いてないんです。右手の弓を一瞬のタイミングで変えたりとかも、今までは演ったことがなかったんです。頭では分かっているのに手が動かないって感じですね。

──「雨に濡れても」はかなり思い切ったアレンジになっていますね。
『プレイズ・バカラック』
2004年10月20日発売
WARNER MUSIC JAPAN
WPCL-10131 \ 2,800(tax in)

1 クロース・トゥ・ユー(遥かなる影)
2 アルフィー
3 サン・ホセへの道
4 恋よ、さようなら~対説愛再見
5 素晴らしき恋人たち
6 世界は愛を求めている
7 ルック・オブ・ラヴ~愛之影
8 何かいいことないか仔猫チャン?
9 雨にぬれても
10 ニューヨーク・シティ・セレナーデ

▼このCDを買うなら


オフィシャル・サイト

http://weiwei-wuu.com
http://wmg.jp/

二胡は今やダイブームで教室などもたくさん開かれているとか。そこでウェイウェイさんに弾き方のポイントなどを動画で教えてもらいました!
コメント映像はこちらから

ウェイウェイ: これは思い入れのある曲なんです。原曲は跳ねてて明るい曲ですが、 今回はしっとりしていてキーも低くなっています。アレンジャーの宮川弾さんも二胡のアレンジは初めて で新鮮に感じていただき、いい意味でコミュニケーションをとりあいながら仕上げていきました。

──バカラック・メロディを演奏する時、どんなことを意識していますか?


ウェイウェイ: バカラックは愛がテーマになっている曲が多いので、愛する気持ち、愛される気持ち、恋をする時の甘い気持ちを現代的なアレンジと中国の古典楽器である二胡とのマッチングで届けられたらと思っています。

──二胡って叙情的でナイーヴでしっとりしているという印象があるので、スタッカート気味の演奏などがとても新鮮に感じました。

ウェイウェイ: これからは二胡をこんな楽器だと思ってください。2ndアルバム『シャンハイ・レッド』にもそういう作品が入っていて、踊りたくなるような曲もありますよ。今回のバカラックでは広く知られた曲が多いので、二胡で演奏しても違和感なく新鮮だなと感じて欲しい。二胡という楽器自身のアピールになればいいと思います。

<ライヴ情報>
11/7、8 福岡:ブルーノート
11/10 名古屋:ブルーノート
11/17 六本木:STB139
11/29 大阪:フェニックス・ホール
問い合わせ・詳細:
http://weiwei-wuu.com まで
──ウェイウェイさんは初めて二胡を立って演奏することを始められましたが、それぞれで弾くフレーズって違ってくるんですか?

ウェイウェイ: 実は、今回のレコーディングで、ライヴ感を出したくて立って演奏したんです。そこでわかったのは、立った時と座った時では感覚が違うということでした。フレーズや、それが生まれる瞬間のリズム感が違ってきます。立っている時はリズムをとりやすいですから。他の二胡奏者の人も、一度スタンディングで演奏したら、もうやめられなくなると思いますよ。楽しいです。女性の場合は、立っていると、より自分を見せるということを意識するので、より美しく音楽を表現するという感覚が生まれてきます。

──ウェイウェイさんはヴァイオリンも同時にやってらっしゃいましたが、ヴァイオリンに勝る二胡の最大の魅力はどういうところですか?

ウェイウィイ
: 感動する場所かな。ヴァイオリンは頭と肩で楽器を挟むので、頭で音を聴く。二胡はお腹の前で弾いて、お腹に響く楽器なんです。しかも左手で抱きかかえる気持ちで演奏します。だからある意味で生き物を抱きかかえて、それが音を出して、お腹に感動を伝えてくれる。人間が感動しやすいという意味において、二胡の方が感動的な楽器だと私には感じました。ある意味、女性的な楽器ですから、女性奏者として自分の分身のように感じます。二胡は、演奏していると歌詞が聴こえてくる、映像が観えてくるんです。自分が表現したい全てに合う楽器ということが分かってきました。

取材・文●森本 智

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