4年振りに新作アルバムをリリースしたポール・マッカートニー、音楽のすばらしさを語る

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――ナイジェル・ゴドリッチのアルバム制作に対するアプローチは、あなたのアプローチとどのように違っていましたか?

ポール:基本的には僕とあまり変わりなかったが、唯一違ったのは、基本的なことだった。ラクで2週間レコーディングを始めたとき、僕はスタジオに入って、「僕のライヴ・バンドと一緒にやりたいと思うんだ。彼らは僕の仲間だし、前回のツアー中には、早く新しい曲、次のアルバムを作りたい、という話を一緒にしていたからさ」と言ったんだ。そしたらナイジェルが、「実は、僕もそのことを考えましたけど、そういうあなたにとっての安全パイは避けた方がいいと思う。あなたにとって、それはまったく冒険のないことだ。彼らのことはよく知っているだろうし、あなたは自分が彼らと何をしているのかもよくわかっている。そういった安全地域から、あなたを連れ出そうと思うんです」と言ってきたんだ。それは、 例えば、僕よりももっと上手なドラマーのエイブがドラムを叩くのではなく、僕が自分でドラムを叩くということだった。でも、ナイジェルは英国的な感覚を欲していて、僕にはそういった感覚がある。僕はドラムが上手いわけではないけど、そういう感覚は持っている。僕にあるのは感覚なんだ。彼は言ったよ。「試してみたいんです。やってみましょう」とね。それでバンドと一緒に作った曲を1曲だけ試しにやってみたら、彼が、「僕が言っていたのはこのことですよ。これが僕の求めているものなんです」と言ってきたから、気まずいことではあったけれど、バンド・メンバーに「聞いてくれ。ナイジェルは俺たちが思っていた方向とは違うことをやりたがっていてさ。彼がプロデューサーだから、僕が、いや、自分のバンドとやらなければ、なんて言えないんだ」と言ったんだ。彼らはそれをクールに受け止めてくれたよ。「それでいいアルバムが作れるんだったら、構わないよ。僕たちもツアーには一緒に出て、アルバムの曲を演奏するからさ。いいアルバムになるんだったら、是非、そうしてくれ」と言ってくれたんだ。ナイジェルがもたらした大きな違いはそこで、バンドと一緒にやっていたらこうはならなかっただろう。実際、かなり違うものになった。このアルバムの雰囲気が違うものになったし、僕は少し不安になった。「じゃあ、君がここの部分をやってくれ」というわけにはいかず、「ああ、何てことだ、ドラムを叩かなくちゃならないなんて。ああ、自分ですべて考えないと」なんて具合だった。でも、彼がそうしたのは、正解だったと思う。

――「ファイン・ライン」ですが、この曲のインスピレーションとなったものは?

ポール:それはオープニングの行、“There’s a fine line between recklessness and courage”だった。たまに思い切ったことをする人がいる。「そうだ、そうこなくっちゃ」なんて思うんだが、それは愚かで無謀な行為であるときもある。でも、彼らは自分が勇気ある行動をしていると思っているんだ。そういった考えから始まった曲で、無謀になるのか、それとも、勇者でいるのか、そのどちらを選択するのか、というアイディアを基に歌詞を完成させていった。それでピアノの前に座って、あのノリノリのパートを作って、シンプルなものにして、 “Fine line, it’s a fine line”というフックを作った。それをロサンゼルスのスタジオに持ち込んで、続きに取りかかって、あの“Fine line”のリフ部分を考えていたんだ。そこの部分を演奏しているときに間違った音をベースで弾いたら、ナイジェルが「最高だ。それだよ」と言ったんで、僕が「いや、間違った音を演奏しちゃったんだ」と答えたんだ。それでも彼は「いや、確認してみてくれ。これを聴いてみて」と言い、僕が「なるほど、君の言っている意味がわかるよ」と言ったわけだ。自分の考えていたものとは違うものになった。本来はFシャープで考えていたんだが、Fでやって、かなり興味深いものとなったね。そんな風に歌詞と曲を完成させていった。

――アルバム・タイトルのゆえんは?

ポール:アルバムを作り終えると、いつでもタイトルをどうしようかと考えるんだけど、ビートルズのアルバム『アビイ・ロード』は、『エベレスト』というタイトルになるはずだったんだ。でも、突然それがいいアイディアには思えなくなって、『アビイ・ロード』に変えた。タイトルが決まると、気分がよくなる。それで僕は、アルバムを作り終わって、タイトルを探していた。「プロミス・トゥ・ユー・ガール」の中に、“Looking through the backyard of my life”という歌詞があって、“Backyard”はアルバムのタイトルにいいんじゃないかと思った。ナイジェルに電話して、「Backyardっていうのはどうだろう?」と言ったんだ。そしたら「いいけど、あまり面白くはないな。キャッチーだけど、面白くない。でも、どうしてそのタイトルなんだ? どういう意味があるんだ?」と言われて、「そうか」と思った。翌日、また彼に電話して『Looking In The Lyrics』はどうかと伝えた。「ファイン・ライン」の中に、“there’s a long way between chaos and creation”という行があって、それで「じゃあ、『Chaos And Creation』はどうかな?」と考えたんだが、少々重々しい感じがすると思った。『Chaos And Creation』なんて、伝道の書みたいだ。ちょっと気取った感じがした。それで「プロミス・トゥ・ユー・ガール」の“In The Backyard”というのが気になっていたから、この2つの文句を合わせてみた。そこに不真面目さを入れることで、気取った感じをなくしたんだ。そのことを僕と彼が話していて、彼が「最高だ。このアルバムに合っているよ。ChaosにCreation、それに手作り、自宅の裏庭で作ったって感じこそがこのアルバムだからね。タイトルにいいんじゃないかな」と言ってきた。それでこのタイトルになったんだ。

――このアルバムを聴いて、リスナーは何を得るでしょう?

ポール:アルバムから何を得て欲しいかなんて、考えないな。それはとても難しいことだよ。人は相手が与えてくれることのないものを欲しくなったりするものだ。だから、かなり前に僕は学んだ。自分が気に入るものを作ろう、とね。それで、みんなが自分の解釈をすればいいんだ。僕はそれで構わない。自分が気に入っていることが、一番大切なんだ。このアルバムは気に入っているよ。

ポール・マッカートニー オフィシャルサイト(英語)
http://www.mplcommunications.com/mccartney/

ザ・ビートルズ オフィシャルサイト
http://www.toshiba-emi.co.jp/beatles/

東芝EMI ポール・マッカートニー特集ページ
http://www.toshiba-emi.co.jp/intl/special/0509paul/index_j.htm

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