[クロスビート編集部員リレー・コラム] 編集長大谷編「ウェディング・プレゼント」
2009年からアッシュが隔週で新曲を発表していたのが話題になっていたが、それと同じようなことを約20年前にやっていたのがウェディング・プレゼントである。しかもメジャーのレコード会社を相手にしながらCD時代に7インチをカットし続けたのだから、やりたい放題って感じだった。
そんな彼らが5月7日にUKインディ・ギターの名作『ビザーロ』全曲ライヴをやった。このバンドのトレードマークと言える高速カッティング・ギターは健在。それが徐々にパワー・アップして、しまいに強烈なグルーヴと化していく展開こそ真骨頂で、今ならヴァンパイア・ウィークエンド辺りのファンでも楽しめただろう。徹底的に無駄をそぎ落としたライヴ・スタイルは、改めてその楽曲の良さが浮き彫りになっていた。
これだけいいバンドなのに、何故アメリカや日本で売れなかったのか?それは一目瞭然、華がなかったからである。あのおっさん顔は20年前から変わらなかったし、取材でもUKバンド特有のハッタリは一切なし。本誌のインタビューで「ピート・タウンゼントは『ザ・フーにとってギターは機関銃だ』と言ってたけど、あなたにとってギターとは?」と聞いたら、「木で出来てる、ただの楽器」という答えが返ってきて大笑いしたもんなあ。
でも、だからこそ最高だったのである。この日のライヴだってサービス精神はゼロ、アンコールもなし。その分、全ての情熱をを音楽に注ぎ込む実直な姿勢がウェディング・プレゼントなのだ。そんなデヴィッド・ゲッジの素顔を思い出したパフォーマンスだった。
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