【BARKS編集部レビュー】オールマイティーなカナルワークスCW-L01P、これぞ「原音忠実」?

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今回は、2011年10月に発表されたカナルワークスの最新作CW-L01Pをご紹介したい。先日記事を書いたロックなサウンドを元気に叩き出すという2ウェイ2ドライバーのCW-L10と同時発表されたモデルだ。

◆カナルワークス CW-L01P画像

▲カナルワークス CW-L01P。小型のフルレンジドライバーがシンプルにひとつ搭載されているだけ。フェイスプレートは透明の薄いブラック色となるスモークを指定。

カスタムIEMの場合は、BAドライバーを設置するスペースが大きいので、設計上の物理的制約から解放されるというメリットがある。市販のカナル型ヘッドホンでは搭載が難しいサイズのドライバーを複数搭載したり、自由な組み合わせを実現することができるわけだが、各ドライバーにどのような帯域を任せ、それぞれの音の干渉をどのように制御するかが腕の見せ所というわけだ。帯域ごとに特性をコントロールでき自由度は限りなく広いものの、非常にデリケートな設計であると同時に実践しないと分からない点も多く、発生するピークとディップにも悩まされる。まして原音忠実を実現すべく、全ての周波数帯域で色付けのない出力を要求するのは非常に困難を極めるところで、そもそも色付けって何?原音忠実って何よ?と言われれば、解答に到達できないオーディオ談議へと発展してしまう。

一方でシングルドライバーによるフルレンジ・サウンドにも、自然で素直なサウンドが味わえる良品は多い。しかも往々にして安価である点も嬉しいところ。BAドライバー一発でサウンドバランスは取れているので、あとは音響特性をどう設計するか、音の伝搬をどうデザインするかで個性が演出される。名機は多数存在しており、市販モデルの定番といえばエティモティック・リサーチのER-4シリーズ、クリプシュのImage X10/X5、SHURE SE315、ファイナルオーディオデザインのheavenシリーズあたりが真っ先に思い浮かぶところだろうか。

逆にカスタムIEMの世界では、マルチドライバーを自在に設計できるメリットが前面に立つこともあってか、シングルドライバーの名機というものはなかなか見かけない。これまでも力説してきたとおり、「ドライバーの数=サウンドの優劣」ではない中で、シングルドライバーでのカスタムIEMにも手を抜かないカナルワークスのブランド姿勢は貴重だし、カスタムIEMのすそ野を広げてくれる牽引モデルとしても注目したいところだ。

CW-L01Pは、先にリリースされているCW-L01のインピーダンス値を下げ、ヘッドホンアンプがなくとも普通のオーディオプレイヤー直結で十分に楽しめるように改良されたモデルで、末尾のPはfor (Audio) Playerを意味している。ドライバーも見直され、イコライザー用抵抗もなくし音響チューブの長さとダンパーでサウンドを調節しているという設計になる。そのサウンドは実に朴訥としたもので、化粧っ気のない素直でシンプルな良音だ。添加物ゼロの食品のような、その素材を一番おいしく提供してくれるイメージで、これ、もしかすると「原音忠実」ってやつ…なのでしょうか。

▲もちろん音導孔はひとつ。

▲左がCW-L01、右がCW-L01P。どちらも同じ耳に対して作られたものだが、設定仕様の変更により、フェイスプレートの形状と大きさが変わっている。

▲ペリカンケース、取説、クリーニングキット、携帯用袋、試聴用アダプタなどが付属する。

メーカーいわく当機の設計テーマは「ボーカル中心の音楽をより艶やかに聴かせる音質」で、ハイファイを主張するような超低域や超高域の周波数特性は持ち得ていないものの、「帯域を欲張らない代わりにボーカルのつややかさが際立つ仕上がりとなっており、J-POPやボーカルものにはベストマッチする」としている。

事実、CW-L01Pの音色は耳に優しく歌声の美しさは絶品だ。一聴して「お、あの音だ!」とオーディオデクニカのATH-CK100を彷彿とさせるサウンドに、私のテンションはダダ上がりである。いろんな既存モデルとも聴き比べてみたが、やはり最も近いサウンドを持つモデルはATH-CK100だった。ご存じATH-CK100は、女性ボーカルの再現性などで高い評価を受けるモデルのひとつ。knowles製のTWFK-30017とED系を搭載した3ドライバーのATH-CK100サウンドと、フルレンジ・シングルのCW-L01Pが非常に似ているというのも信じがたい摩訶不思議なところだが、帯域バランスもトーンも共通点は非常に多い。

CW-L01Pは完成度の高いオールマイティなサウンドで、ファッションで言えば、ボタンダウンのシャツにチノパンのようなスタイルだろうか。デニムのようなカジュアルさでもなく、スーツのような堅苦しさもないが、クラシックコンサートでもライブハウスでも問題なく行ける格好だし、近所のコンビニへも合コンへもそのまま対応できるオールマイティーさがある。

3Dパズルのように自分の耳にピタッとはまり、究極の遮音性と極上の使用感をもって、普遍的なフラットサウンドを聞かせてくれるのが、CW-L01Pだ。派手さもなく飛び道具も持ち合わせていないので、つかみがいいわけではないけれど、疲れない実直にいい音を提供しようというのがCW-L01Pの持つ良心だと思う。

なおカナルワークスの場合、49,800円のなかにインプレッション(耳型)採取代も全て入っているので、身体ひとつで提携店に向かえば、インプレッションの制作、送付、代金の支払いも一切不要というお気軽さが嬉しい。近くに提携店がない場合は、任意の補聴器店にて採取し自分でカナルワークスへ送付すればOKで、その際は耳型代として5,000円が割り引かれ、44,800円となるのもありがたいところ。フジヤエービックやe☆イヤホンには試聴機も用意されているが、店舗に出向けない人のために試聴器の貸し出しサービスも行なっているので、是非一度そのサウンドに触れてみてほしいところだ。

text by BARKS編集長 烏丸

●カナルワークス CW-L01P
2011年10月29日発売
・価格:49,800円(標準仕様、耳型採取費用を含むモニター販売税込価格)
・ドライバー:バランスドアーマチュア方式(フルレンジ×1)
・インピーダンス:42Ω
・感度:106dB
・ケーブル長:115cm
・プラグ:ステレオミニプラグ
・付属品:ハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス

◆カナルワークス CW-L01Pサイト
◆カナルワークス試聴器貸し出しサービス
◆フジヤエービック・サイト
◆e☆イヤホン・サイト

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