小澤征爾、80歳記念コンサートで出演者約300名が「ハッピー・バースデー」

また、後半では様々な知り合いたちからのメッセージビデオが上映された。ボストン・レッドソックスの選手や、ウィーン国立歌劇場管弦楽団、サンフランシスコ交響楽団、ボストン交響楽団などのメンバーからのメッセージが楽曲演奏の合間に次々と流れ、いかに小澤が広く愛されているかを感じさせた。なかでも、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と首席指揮者 ラトルからは朝9時集合で撮影されたという「ハッピー・バースデー（編曲：ストラヴィンスキー）」の演奏が上映され、会場から喝采がおきた。さらにゲストとして、キャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使が登場し、父 ジョン・F・ケネディの言葉を引用しスピーチを行なった。

コンサート後半には、ジェイムス・テイラーが出演し、「友達についての曲からはじめようか」と話した後に代表曲である「君の友だち」を演奏、ほか2曲を歌唱した。彼が小澤と知り合ったきっかけは、ジェイムスの奥さんがボストン交響楽団の広報担当だったことだという。演奏の最後には奥さんと息子もステージに上がり、小澤を祝福した。

そして最後の曲はピアニスト マルタ・アルゲリッチ、そして本日の主役 小澤征爾がステージに現れ、会場の興奮は最高潮に。オーケストラと約110名のコーラスと共に約22分のベートーヴェンの「合唱幻想曲」を演奏。演奏が終了すると、会場からは総立ちとなりブラボーの叫び声が鳴り響いた。そして小澤の顔写真入りのケーキが運びこまれると、一度ステージ袖にはけた小澤は真っ赤なボストン・レッドソックスのスタジャンを羽織って登場し、アルゲリッチにレッドソックスのタオルを被せた。そして出演者約300名全員で「ハッピー・バースデー」を大合唱。ケーキの火を吹き消すと観客席からは大きな歓声が起こり、花を受け取った小澤はマイクを渡されると照れたように「サンキュー、サンキュー」と連呼した。19時過ぎた頃、約3時間強にわたって行なわれたコンサートは幕を閉じた。歴史に残る大指揮者の人生の足跡を辿ることができ、またいかに世界中から彼と彼の音楽が愛されているかが伝わってくるコンサートとなった。

小澤征爾は引き続き松本に残り、9月6日には同ホールでオーケストラコンサートを指揮する予定。また9月12日には京都で小澤征爾音楽塾オーケストラを指揮し、ベートーヴェンの第9の第4楽章を演奏予定となっている。

写真：（C）大窪道治