【インタビュー】the GazettE、2年ぶりのライブ開催「ファンに自分達の居場所が戻ってきたなと思ってほしい」

ポスト

the GazettEが9月26日(日)より、2年ぶりとなるライブ<LIVE 2021 -DEMONSTRATION EXPERIMENT- BLINDING HOPE>をスタートさせた。

2020年3月、予定していた18周年公演がコロナ禍により中止になったが、the GazettEはアルバムの制作に取り組み『MASS』という作品を生み出した。今回のライブには、その『MASS』リード曲「BLINDING HOPE」の名が掲げられている。BLINDINGは目がくらむ、まばゆいといった意味、HOPEは希望する、祈念するといった意味。昨今の情勢による閉塞感をもブチ破ってくれるようなこの曲を持ったツアーには、否が応でも期待が高まる。

◆ライブ画像

今回BARKSではこのライブ開催にあたり、戒(Dr)とREITA(B)にインタビューを実施。今回のライブに向けての思いはもちろん、これまでのライブの思い出や、ライブのスタンスについても話を聞くことができた。

   ◆   ◆   ◆

■振り返ってみるとトラブルがあると
■常にファンが助けてくれました──REITA


──今日はthe GazettEのライブ周りの話を、いろいろお聞きしたと思っています。まずは、昨年コロナ禍が起こって、しばらくライブができそうにないとわかったときは、それぞれどんなことを思いましたか?

戒:コロナ禍になったときに僕らはちょうど18周年ライブを予定していて、そのライブをやるのか、やらないのかという話になったんです。結局ライブは中止することにしたけど、そのときはわりと早い時期に振替でやれるだろうと思っていたんですよね。18周年ライブの後にアルバムを作ることが決まっていて、それこそ制作に入る前のギリギリのタイミングでやれるんじゃないかという話をしていた。ここまで大事になるとは全く想像していたなかったので、最終的に振替公演も中止にしましょうということになったときは、“ポカーン”とした感じになりましたね。その現実を全く受け入れられなかった、最初の頃は。その後みんなで話し合って、安心してライブができるようになるまでライブはやめようと決めたんです。でも、そのときも、まさか2年も空いてしまうことになるとは思っていなかった。

▲戒

REITA:本当にね。18周年ライブはなくなりましたけど、僕も戒と同じで、意外とすぐにライブはできるようになるだろうと思っていたんです。ナメていましたね、コロナを。こんなに長引くとは思っていなくて、後ちょっとでやれるだろう、後ちょっとだろうというのをずっと繰り返す状態になってしまった。ライブができないというのは本当に苦しかったですね。僕は高校生のときからバンドを始めて、それ以来こんなに長期間ライブをやらないことはなかったんですよ。自分の人生を形成している大きなものがひとつなくなってしまった感じがして、かなりツラかったです。

──長年に亘って何度となくライブをされてきて、それでもライブに対する渇望感があるというのはリスナーにとって嬉しいことです。the GazettEは生粋のライブバンドであると同時に、ツアーや単発公演で毎回明確なコンセプトを打ち出しますよね。ライブのコンセプトは、いつもどんなふうに決めているのでしょう?

戒:コンセプトはRUKIが発信して、それに対して周りが意見を出し合ってというのがいつもの流れです。RUKIが提案したコンセプト自体に対して意見が割れたりすることはないですね。セットリストの順番とか見せ方の面で話し合うことはありますけど。

REITA:RUKIがツアー・タイトルと一緒に、どういうコンセプトのライブをするかを提案してくれるんですよ。RUKIのアイディアはいつも説得力があるので、コンセプトで揉めたことはない。あとはどう見せるかというところが意外と難しいというか、わりと時間がかかったことはありましたね。照明であったりとか、ステージセットを組むうえで物理的な問題があったりしたんです。でも、それはバンドの外側の話で、その前の段階にメンバー間で意見が食い違ったりすることはないです。

▲REITA

──メンバーの足並みは常に揃っているんですね。これまでいろいろなコンセプトのライブをされてきましたが、強く印象に残っているものを挙げるとしたら?

戒:毎回そうといえばそうですけど、ライブに対するコンセプトというよりは直前に作ったアルバムのコンセプトをヴィジョン化させるという意識なので、ひとつの作品としてまず大きなコンセプトがあるんですよ。だからアルバム自体が濃いというか、ちょっと偏ったコンセプトのときは、やっぱり印象に残っていますね。たとえば、『DOGMA』のときのツアーとか(2015年<the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC>)。なんて言うんだろう……言い方がすごく安易ですけど、今回は明るい曲はダメみたいな(笑)。このときは世界観を重視して、ステージセットを結構凝ったものにして、お客さんが会場に入った瞬間から『DOGMA』の世界観に浸れるようにしたんですね。そうしたら、そのセットのせいで照明をいつも置ける位置に置けなくて、予想以上にステージが暗くなってしまったし、いつもはここでこうくるという灯りがこなかったりした。要はライブ感というものがちょっと欠けてしまって、そこに対する違和感があって、すぐに軌道修正したことがありましたね。



REITA:もうね、1日目が終わった直後に、「なんか、違くね?」という話をみんなでしました(笑)。『DOGMA』のときは、いつもやっているライブの前説もなかったんですよ。急に場内が真っ暗になって、ライブが始まるみたいな。だから、ファンの子はスイッチが入らなかったし、俺らも世界観を重視するあまり、ちょっと盛り上がりに欠けたところがあった。だから、たしか2日目から前説を復活したよね?

戒:そうそう(笑)。

──コンセプトにこだわりつつ頑固ではないというのは大きな強みといえますね。

REITA:the GazettEはメンバーの誰かが違和感があったり、疑問を感じたりすると、他のメンバーも同じように感じていることが多いんですよ。『DOGMA』のときもまさにそうで、みんなの意見が一致していた。だから、ちょっと軌道修正しようという話もすぐに纏まりました。

──理想的なパターンです。では、REITAさんの中で、特に印象深いツアーは?

REITA:戒が話したように、アルバムはツアーありきで作っているから、コンセプトはアルバムとツアーでセットになっているんですよ。そうではないパターンで“再定義”というコンセプトで過去のアルバムを2枚ずつ再現するというツアーをしたことがあって(2014年<STANDING LIVE TOUR 14 HERESY LIMITED -再定義->)、それは結構大きかったですね。たしか、『DOGMA』を出す前にやったんですよ。『DOGMA』から僕らの激しさのベクトルが変わったことを感じていて、それは“再定義ツアー”で過去の曲をあらためて演奏したことが影響している気がする。そういう意味で、あのツアーはバンドにとって大事なポイントになったと思います。



戒:俺も、そう思う。あと、自分の中で絶対に忘れられないライブは、初めての武道館(2006年<Nameless Liberty.Six Guns...>)ですね。良くも悪くも…ですけど(笑)。なにを覚えているって、始まる前の緊張感を今でも覚えている。もう心臓が飛び出るんじゃないかっていうくらい、マジで緊張したので(笑)。そこにきて、1曲目の頭でクリックが聴こえなくなってしまったという。もう、あのすさまじい緊張から1曲目の想定外のアクシデントという流れと、あのときの景色は鮮明に覚えています。武道館には魔物がいると聞いていたけど、本当にいましたね(笑)。

──たしかに(笑)。ただ、戒さんの凄いところはクリックが復帰したら、全くテンポがズレていなかったところ。

戒:そう。奇跡的に合っていた。本当に、ホッとしました(笑)。

──それは奇跡ではなくて、武道館をファイナルに据えたツアーの成果が出たのだと思います。

REITA:あのときはロングツアーだったしね。僕は富士急ハイランドのコニファーフォレストで最初にやったライブ(2008年<GAZEROCK FESTIVAL IN SUMMER 08[BURST INTO A BLAZE]>)も印象に残っています。雨が降ったりして、環境はあまり良くなかったんですけど。あのライブでは、まだ音源にしていない新曲を2曲目にやったんですよ。バンドを始めた初期の頃はライブで新曲を披露するというのは普通のことだったけど、最近はずっと音源先行で活動してきたからコニファーフォレストのときは挑戦だったんですよね。しかも、ライブが始まったばかりの2曲目で、特効ありで、あたり前のように始めるという。大丈夫かなと思っていたけど、いきなり知らない曲なのにファンがとまどわずに頭を振ったということに、すごく感動したんです。本当に嬉しかったし、またひとつ自信をもらえた瞬間でしたね。

──コニファーフォレストのライブは、自分も鮮明に覚えています。個人的には2016年2月に代々木第一体育館で行われた<the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC FINAL -漆黒->で、ドラムセットがものすごく高い場所まで上がったことに圧倒されました。

戒:ありましたね(笑)。あのときは、最初はドラムを上げるつもりはなかったんです。メンバーがせり上がりで登場することになったけど、ドラムはそのためにもう1台用意するわけにはいかないし、用意できたとしても違うセットに移っていると次の曲に間に合わなくなってしまうということで。だから、ドラムはそのままで他の4人だけせり上がってこようよという話になったんですけど、そのときにすごく疎外感があって(笑)。なんとかなりませんかと、お願いしたんです。そうしたら、予想以上に高い場所まで上がることになって、“えっ?”と思ったけど、こっちからお願いした手前文句は言えないじゃないですか(笑)。なので、ありがとうございます……みたいな(笑)。あれだけ上がると揺れが結構あったし、本当に結構な高さだったので、本番ではあまり周りを見ないようにしました。まじまじと客席とかを見ちゃうと“うわっ、高っ!”と思って、気持ちが怯むなと思って(笑)。でも、凄かったという声を沢山もらったので、やってよかったなと思います。

▲大阪公演ライブ画像

──本当に見応えがありました。REITAさんに関しては、2016年10月にZepp Tokyoで行なった初のハロウィンライブ(<the GazettE HERESY LIMITED THE DARK HALLOWEEN NIGHT [-SPOOKY BOX-]>)で、全身スタッドだらけの衣装で登場したことに衝撃を受けました。

REITA:あの衣装は重かった! 本当に重いし、暑いし、さらにベースを持ちますからね。修行みたいでした(笑)。衣装ができあがって着てみた瞬間に、これはヤバいなと思ったんですよ。体力、持つかなと。でも、僕はやりづらい状態でライブをするのが好きなんです(笑)。それに、普段よりも重装備じゃなきゃハロウィンらしくないじゃないですか。だから、これでいこうと決めました。

戒:ライブ関連だと、“停電事件”というのもあったよね(2006年<Standing Live tour 2006 「Nameless Liberty.Six Guns...」>)。

REITA:あった(笑)。アンコールで、僕と戒だけで演奏しているときにライブハウスが停電になったんです。停電してもドラムは生音が鳴っているけど、ベースは無音になるじゃないですか。でも、戒は「止めるな!」と叫びながらドラムを叩き続けるわけですよ。そんな酷な話、あります(笑)?

戒:ハハハッ! いや、そのときのツアーではドキュメントを撮っていて、停電とかのトラブルがあったら面白いよねという話を、みんなでしていたんです。

REITA:そう。そうしたら、それが本当に起きてしまった(笑)。

戒:もし、ライブ中に停電したらどうする?……くらいの話までしていた。だから、俺からすると実際に起こったならこうでしょうという感じで、とにかく電気が復活するまでつながないといけないと思ったんです。

REITA:ベースが鳴らないから、僕はお立ち台に立って煽るんですけど、当然照明も落ちているわけですよ。だから、懐中電灯で照らされた状態で煽ったんです。お化け屋敷かよ…みたいな(笑)。あのときはね、時間がものすごく長く感じました。いつまで続くんだろうと思って(笑)。でも、終わってみたら面白かったですね。いい思い出ができたなと思いました。

戒:ああいう経験は、滅多にないからね(笑)。アンコールで俺とREITAだけでセッションをするというのを始めたのも、そのときのツアーだったような気がする。長野のライブの日にRUKIが熱を出してしまっていて、もうとにかく体調が悪くて。アンコールに中々出られないとなったときに俺とREITAで「出るか!」といって、リズム隊のセッションでつないだんです。

REITA:本当にその場でやろうということになったから、なにを弾くかも全くない状態だったんですよ。だから、完全なアドリブ・セッションですよね。今考えると、恐ろしいことをしたなと思う(笑)。そのときは、とにかく場をつなぎたい一心だったんです。今だったら、つながないですけどね(笑)。

戒:ハハハッ! でも、それがきっかけになって「Ride with the ROCKERS」ができたんでよす。だから、そのアクシデントも、すごく印象に残っています。

REITA:振り返ってみると、トラブルがあると常にファンが助けてくれましたね。長野のときのRUKIは本当に体調が悪くて、バラード中にツラそうにしているのがわかったみたいで、ファンから「がんばれ!」みたいな声が飛び交っていたんです。だから、体調が悪いのはみんなわかっていて、アンコールで僕らだけで出ていったときも、すぐに状況を察してくれたんだと思う。それもあってリズム隊セッションは盛り上がったんですよ。セッションをしたのは戒と僕ですけど、その場にいる全員でライブをつないだという印象がありますね。

◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報