【インタビュー】LUNA SEA、真矢が語る『MOTHER』『STYLE』とドラム「音の幹の太さ…それがバンドの歴史の全て」

ポスト
no_ad_aritcle

■得なアルバムだと思いますよ
■だって30年の差を聴き比べることができるから


──ライヴの話が出たので、セルフカバーの前に、ライヴのドラムセットの話をしたいんですが、今回のツアー<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>では、Pearlの生ドラムとe/MERGE(電子ドラム)を組み合わせています。その前はe/MERGEが中心でしょ。ツアーやライヴごとにセットを変えてますが?

真矢:コロコロ変わるんですよ。今回の<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>は『MOTHER』と『STYLE』の再現でしょ。当時は生ドラムだったから、生の要素が主体でいいんじゃないかと。でもキックは、いろんな音色を出したい。で、そういうことはかなり前からやっていて、横にRolandのV-Drums(電子ドラム)を置いていたり、小さいキックを置いたりしたから。そういうニュアンスで、今回もキックにはe/MERGEを使っている。他は全部生ドラムでやってますね。



▲<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>10月7日+8日@横浜公演

──前回ツアーでe/MERGEをメインにしていたのは、いろんな時代の楽曲を演奏するにあたって、当時の曲ごとのトーンも再現したかったからですよね?

真矢:セットリストがLUNA SEAのすごく幅広い年代に渡っていたから、いろんな時代の音色が求められるんですよ。それに対応するには電子ドラムは最適だよね。でも、お客さんの声を聞くと、“エレドラ”って言葉にアレルギーをもってる方もいて。「ええ〜、エレドラかよ、信じられない。イヤだ」と言ってる人もいたし、「エレドラの音色ってけっこういいね」と言ってくれる人もいた。で、去年8月の<復活祭 -A NEW VOICE- 2022.8.26,27>(8月26日および8月27日@日本武道館)のとき、見た目が生っぽいセッティングで実はe/MERGEを使ったら、「やっぱり生の音が最高」って声もあったんだよね。いやいや、音は電子ドラムだからっていう(笑)。やっぱり見た目に錯覚することも多いから。それに今の技術は発達していて、メンバーが聴いても生ドラムと電子ドラムのサウンドの差って分からないぐらいに進歩しているんだよね。生ドラムと電子ドラムでレコーディングされた音を聴いても、どっちがどっちか、ドラマーでも分からないと思う。それぐらい鳴りも質感も近いものだから。

──真矢さん自身は、電子ドラムへのアレルギーはなかったんですか?

真矢:全然ないです。僕はそういう新しいものが大好きなほうなんで。生ドラムに電子ドラムのシステムを入れたのは、僕が世界で初めてだし、それまで大きい会場で鳴らした前例がなかったから。どんなふうに鳴るのか、自分でも確かめたかったんだよね。そんなチャンスはめったにないし。で、鳴らしてみて気に入ったんだよね。

──アクリルシェルにLEDを仕込んだ、見せるドラムセットもそれまであまりなかったです。

真矢:そうですね。アクリルシェルというのは、1970年代あたりは音の悪いドラムの象徴みたいな感じだったじゃないですか。僕が「アクリルを使いたい」と言い出したとき、エンジニアさんとかライヴのPAやモニターの人からは、あまりいい顔をされなかったんだよね。でも、いざセットを組んでみたらすごくいい。今のアクリルシェルは音の分離もいいですね。

──昔はパワーヒッターしか鳴らせないとか、繊細なフレーズを活かしにくいシェルなんて言われ方もされていましたが?

真矢:そうそう。でも今のは全然そんなことないよ。かえって普通のシェルよりいい感じ。現に今回のセルフカバーのレコーディングは、ほぼアクリルシェルだから。スネアなんかも1種類で、曲ごとにチューニングを変えただけ。

──珍しいですね、レコーディングもアクリルシェルというのは。

真矢:でしょ? それぐらい気に入っているドラムセットですね。


▲<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>10月8日@横浜公演

──セルフカバーで使ったドラムセットの話が出たところで、新たな『MOTHER』と『STYLE』の話に移りますが、レコーディングするにあたり、ドラマーとしてはどんな作業から始めました?

真矢:1994年や1995年に作った作品だから、もう20何年も…約30年経っているんで、だいぶ細かいところでライヴアレンジが完成しているんですよ。

──ライヴで何回もプレイしていくうちに、自然と?

真矢:そう、ライヴで盛り上がるようなアレンジに自然となっている。

──ライヴ現場で熟成されて?

真矢:そう。そこと、オリジナルアレンジとの擦り合わせが、なかなかおもしろかったよね。だから自分自身、一度アルバムを聴いてみて、「レコーディングではこんなことやってたんだ!? ちょっとやってみよう」みたいな。そういう作業がありましたね。セルフカバーを出すからといって、あの曲がラップバージョンにアレンジされてましたとか、そういうのじゃないでしょ(笑)。聴いていて、得なアルバムだと思いますよ。特にオリジナルアルバムを持っている人にとって、めっちゃおもしろいと思う。聴き比べることができるんだもん。今と昔の、この30年の差を。

──今回のセルフカバーは、オリジナルアルバムをリアルタイムで聴いてきた人にとっても、変な違和感がないんですよね。巧妙なやり方だなと思って。

真矢:巧妙って(笑)。そんなことない、みんなに喜んでもらえるようなやり方だよ(笑)。

──いや、それは前提として、作る側のミュージシャンとして、それぞれ闘いがあったんじゃないかなと思います。ミュージシャンとしてやりたがりの5人だから…。

真矢:そう、やりたがり、出たがり(笑)。

──やろうと思えば、いかようにもアレンジで遊べる。でもオリジナルをものすごく重んじながら、ちょっとずつ変化も加えていくあたり、巧妙だなと。

真矢:僕は、ライヴでやっているバージョンはライヴだけのスペシャリティで。あくまでもセルフカバーだってことを、今回は重んじましたね。


──ドラムはアクリルシェルですが、各曲のドラムのトーンもかなりオリジナルに近い印象でした。

真矢:そうなんですよ、似させたところもありますね。ただ、当時に近いトーンだけど、5人の音がとても太いんだよ。たとえば一音をユニゾンでダーン!と出しても、30年前とは太さが全然違う。音の幹の太さっていうのかな、それがLUNA SEAの歴史の全てなんだろうな。あとスティーヴ・リリーホワイトがミックスしてくれたことが大きい。彼の頭の中はすごいよ。

──スティーヴ・リリーホワイトはどんなミックスを?

真矢:常識に捕らわれていないミックスだよね。ドラム、ベース、ギター、ヴォーカルとか、各パートを見たら、けっこうアヴァンギャルドなミックスをやっている。1曲の中でタムがドーン!と出てきたと思ったら、すごい遠くのほうで鳴ってたり。シンバルも叩いているのに全然聴こえなかったりとか。でも全体を通すと、めっちゃカッコいいという。総合バランスだよね。ヴォーカルも、間近で聴こえたり、グッと奥に引っ込んでいたりとか。いや〜、すごく立体的ですね。

──でも実は、30年前当時からそういう仕上がりにしたかったような?

真矢:うん、そうだったと思う。それでミックスに時間を掛けたりしてたからさ。『IMAGE』のミックスのときなんか、前日の夜に聴き始めて、終わったのが翌日の夕方とかだったもん(笑)。そんなのはざらだったよね。エンジニアの人の背中が、どんどん小っちゃくなっていくのも分かるぐらいで(笑)。だから、頭の中でなにか鳴ってるんだけど、表現できないというもどかしさがあったのかな。でも、あの頃の作品も、それはそれでいいんだよね。若くて、気持ちや気合いがグーッと入っているような感じが。


──そうした30年前の曲を再びレコーディングしたことで、各楽曲を自由に呼吸させることができた感じですか?

真矢:オリジナルアルバムも、それはそれで完成されているから。昔からよく言っているように、アルバムは写真だと思っているんですよ。20代の頃の写真と、今の写真はやっぱり違うわけじゃないですか。どっちか良い悪いじゃなくて、それはもう好みだから。そこは手に取った人の感性に委ねるとして。でも、30年前と聴き比べるのはおもしろいと思う。例えば車でも、名車復活とかあるじゃん。そんな感じ。絶版車と復活させたやつと2台所有したほうがいいと思う(笑)。

──セルフカバーからLUNA SEAに「初めまして」という方もいるんですかね…、いや、いますね。親子でライヴに来ている方もいますから。

真矢:そうそう。親世代がガンガンに聴いていたアルバムやツアーが、<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>やセルフカバーの『MOTHER』と『STYLE』で再現されているわけで。それきっかけで、子供世代の若い子がLUNA SEAを好きになってくれたら、それは嬉しいことですよ。その後にオリジナルバージョンを聴いてもらうのもおもしろい。たぶん“若っ!”ってなると思う(笑)。

◆インタビュー【4】へ
◆インタビュー【2】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報