へヴィメタル・サバイヴァー

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ヘヴィーメタル・サバイヴァー

Megadethのニューアルバム『Risk』は、この影響力あるメタルバンドが変質してきた中での最終段階のものと言える。ギタリスト、Dave Mustaineが、'80年代初頭にMetallicaから強制的に脱退させられたことによって生まれたこのグループは、'85年の『Killing Is My Business... And Business Is Good!』でスラッシュメタルとして知られる攻撃的でペースの速いスタイルのサウンドを確立した。
だが、'92年の『Countdown To Extinction』以降、Megadethは徐々にミディアムテンポのロックバンドに変身した。9作目にあたる『Risk』では彼らの原点からさらに遠ざかり、テクノの世界に転向していった。また、長年ドラマーをつとめ、切れた膝の靱帯の治療のため長期休暇をとっていたNick Mensaに替わり新しいドラマーとしてJimmy DeGrassoを迎えた。
そして、彼らはプロレスラーのBill Goldberg、マーシャルアーツ・スター、Jean-Claude Van Damme、テレビコメディアンのDrew Careyなど、興味深い顔ぶれとの交流を深めている。

先日行われたLAUNCHとのインタビューで、MustaineとベーシストのDave Ellefsonはこうした話題やその他のことについて語ってくれた。



LAUNCH:
「Crush 'Em」のビデオでBill GoldbergとJean-Claude Van Dammeと共演していましたね。Dave、あなたはマーシャルアーツに興味を持っているんですよね。あなたとJean-Claudeは何か共有する秘密をお持ちなんですか。

MUSTAINE:
いや、何もなかった。Jean-Claudeは俺と握手して、俺の方を見て、後ろのほうにのけぞって、また俺の方を見て「何だい?」って言うから、俺は「我々には共通の知人がいっぱいいる」って言ったんだ。彼に俺のセンセイが誰かを言ったら、彼は「ああ、そうだったね」だって。そこで会話はおしまい。マーシャルアーツ哲学について腰をすえて話せるような状況じゃなかったんだと思うし、ゆったり座ってビデオにでてもらえなくなるようなことを話したくはなかった。もしまたチャンスがあれば、ゆっくり腰を落ち着けて話したり一緒に練習したりするかもしれない。

LAUNCH:
プロレスとMegadethはお似合いだと思いますか?

MUSTAINE:
自分がリングに上がって百何十キロもの巨体を頭上に持ち上げるなんてことは想像できない。そこから先は違う世界だろうね。

LAUNCH:
でも、プロレスもMegadethもファンのためなら何でもやりそうじゃないですか。

MUSTAINE:
俺達は常に精一杯努力してるつもりだけど、無理はしない。それから、自分達自身のパロディになりたくないし、'80年代に成功していたハードロックとかヘビーメタルのバンドの多くがパロディにされるという悲劇に見舞われたなか、俺達は威厳を保つことができた数少ないサバイバーだよ。

ELLEFSON:
グループによっては、メインストリームに移行することが命取りになる。Megadethとしては、自分達の音楽をより多くの人々に合わせていったことでより良いバンドになったんだと思う。俺達の作曲能力はより良くなり、演奏や歌唱力もより良くなった。Megadethというグループに対する俺達の考え方全体が、今、よりアピールするようになっている…というのは俺達がそのことを意識しているからね。最初わずかだけど俺達なりの居場所があって、俺達がその発展に随分貢献してきたことは認めるとしても、自己満足してたらずっと昔に俺達は終わってたはずだ。

LAUNCH:
ラジオ局は、以前はあなた達に触れようともしなかったのに、今ではあなた達のことを抱きしめるほどの勢いですよね。

MUSTAINE:
抱きしめるどころじゃなくて、フレンチキスまでしそうな勢いだったよ。アルバム1枚からトップ10シングルを4曲も出せば俺達みたいなバンドにとっては良いほうなんじゃない。

ELLEFSON:
うん、全くその通り。『Cryptic Writings』から多くの曲が全国のラジオ局で流されてたから、『Risk』の制作に取りかかるとき、「『Cryptic Writings』で何歩か前進したんだから今度はメロディに関してもっと前進できる」と思ってた。いまの俺達の音楽では、リフで曲調をまとめるってことはあまりしなくなった。それより、実際のボーカルで勝負という感じ。いまのMegadethは、歌がおまけのようなバンドじゃなく、ちゃんとしたシンガーがいてバックバンドがいるという感じだ。

LAUNCH:
『Cryptic Writings』と『Risk』はどちらともナッシュヴィルでレコーディングしましたよね。ナッシュヴィルのどういうところにひきつけられるのですか。

MUSTAINE:
急いで仕上げて早く家に帰りたいっていう気持ちにさせるからだと思うよ(笑)。プロデューサーのDann Huffがナッシュヴィルに住んでるから都合がいいんだ。スタジオを運営している連中もとびきり良くしてくれるし。アットホームな雰囲気で仕事ができるのは良いけど、俺達の家族はそこにいないし、しいて言えば俺達の本拠地じゃないから俺達にとってそこでの生活環境は家と同じじゃない。俺達はヘビーメタル界の海兵隊みたいなもんで、俺達は順応し、その場で対応する。ナッシュヴィルに行って、演奏の準備を整えて、赤いボタンを押して、演奏を開始するだけ。そしてレコードができれば、即、飛行機のチケットを予約する。

LAUNCH:
アルバム『Cryptic Writings』時代の後半は、ライブではアコースティックで演奏していますね。こうしたことは『Risk』にどのような影響を与えましたか。

MUSTAINE:
それが『Risk』の装飾に役立った以外に影響を与えたとは思わない、と言うのはレコードの制作にあたりいつもはMarty Friedmanがアコースティックを担当し、俺がメタルサウンド・リフのコアの部分を担当していた。でも、今回彼がナッシュヴィルに着いたときには、ギターの部分はほとんどすべて出来上がっていた。彼はちょっとショックだったと思う。彼が(スタジオから)出てきたとき「ギター、いい出来じゃん!」って言ってたから俺には気持ちがわかる。「ボディガードを雇ったほうがいいかな」って思っちゃった(笑)。

LAUNCH:
スタジオに入るときには、曲をどんなサウンドにするかだいたい頭の中で出来上がってるのですか。

ELLEFSON:
そういう曲もいっぱいあるけど、たいていの場合はレコード制作中に作り上げる。俺達がスタジオに入る何か月も前からDaveは歌詞作りに取り組むのを知っているし、最終的なアレンジをまとめ上げるときには、Daveが他のメンバーとDannの前で歌ってどんなものができるか感触を確かめるんだ。『Risk』の特徴の一つは、Dannが自分の兄弟でドラマーのDavidを投入していくつかの曲にドラムループを作らせていることだ。他のバンドはもうずっと前からドラムループを使っているけど、Megadethは使ったことがなくて、あれはグルーブ・サウンドをいま風にするクールな演出だった

LAUNCH:
『Risk』収録の「I'll Be There Now」について聞かせて下さい。

MUSTAINE:
この曲のコンセプトは、長い間ファンに支えられてきたお返しに、俺はみんなの力になれるってことをファンに伝えることだった。Megadethのホームページを開設しファンの声を聞くことができるようになったから、今はなおさらそうだ。“「In My Darkest Hour」のおかげで何日もの憂鬱な日々を乗り越えることができた”とか“「Too Alone」にはほんとに助けられた”とか言われてね。ある日ファンが近づいてきて“電車の事故で父親を亡くしたけど“Train Of Consequences”のおかげ立ち直れた”って言われて、俺は“すんげえ、その話はちょっと暗い話だけど、ファンの力になれて俺もほんとに嬉しい”って思ったよ。

LAUNCH:
新メンバーJimmy DeGrassoとはどうですか。

ELLEFSON:
Jimmy DeGrassoはバンドの色んな面を改善してくれた。バンド結成当時の俺達の音楽はすごくアップテンポだった。あれは当時の俺達の心境を反映していたと思う。俺達みんないらだっていた。何年かかけて音楽が成熟するにつれミディアムテンポの曲をいくつか書くようになり、実際は音楽的には官能的になっている。Jimmyはそんな感じで何年もプレイしてきた。本質的には彼の最初のオーディションはフレズノでのショーだった。彼はAlice Cooperのヨーロッパツアーから帰ってきたばかりで、早速ドラムのイスに座ったんだ。サウンドチェックで何曲か演奏し、もう次の瞬間には「Holy Wars」に入っていて、パワー全開のショーになっていた。俺は思わずオーディエンスの方を見てからJimmyの方を振り返り、「ドラマーがNickじゃないのにみんな気づいてるんだろうか」って思った。初めてのショーであそこまで見事にやってのけるのって信じられない。

MUSTAINE:
Monster MagnetSevendustのメンバー全員がステージ脇で腕組みしながら大事故が起こるのを待っていたんだ。俺はそいつらを見ながら「ハイエナどもが」って思ってた(笑)。セットを通り抜けてバックステージに戻ったとき、あいつらはJimmyが臨時でNickの代わりをつとめてるもんだと思ったらしく、俺達のほうに近づいてきて「おい、Nickなんか忘れてJimmyに替えたらどうだ」って言うんだ。俺はそれを聞いて「ほんとかよ」って言ってやった。その時は臨時だと思わせておいたけど、これで正解だったことが証明された。

LAUNCH:
あなた達とNick Mensaとの関係はいまはどんな感じですか。

MUSTAINE:
何回かNickに電話したけど、ほとんど何も変わってない。俺達の関係が終わったことについて、お互いビジネスライクに誠意をもって話すように努めた、と言うのは、知ってると思うけど俺自身Metallicaを追放されたことで大きな精神的打撃を受けたからね。あれはビジネス上の決定で、当時彼らにとってはベストな決断をしたんだと思うけど、そのやり方は妥当じゃなかった。俺達がNickに対して同じようなことをしていないことを確かめたかっただけ。この前Nickに電話したとき、彼は相手が俺だってわからなかったようで、俺だとわかるまで電話に向かってむかついたような感じで話していたんだけど、それが俺だとわかると受話器をとってスピーカーモードで話すのをやめた。少しだけいまどんな感じか話をしたんだけど、彼はまだ何かにむかついてるようだった。で、俺達4人についてだけど、俺達はデブでアホでハッピーだよ。俺達はいまの生活をエンジョイしてるし、いままでの人生はグレイトだったし、ただコカインに消えていった家とか車の数を考えると頭にくるけどね(笑)。

LAUNCH:
Dave、先日「The Drew Carey Show」に出演してましたよね、俳優業に興味があるとか。

MUSTAINE:
Drew Careyは面白いやつだよ。台本がちょっと変わったから最後にちょっとアドリブしなけりゃならなかった。ああいった台本ではよくあることだけどね。台本の中で、俺のことを茶化してるんで、立ち去る前に睨み付けるってところを確実にしたかった。俺個人としては彼を睨み付けるなんてことはしないけど、俺が演じていた役では睨み付けることがポイントだった。演技が終わったとき、俺はギターにサインしてそれをDrewにあげたら彼は卒倒するくらい大喜びしたんだ。これで彼は俺達のファンになったと思う。そうでなけりゃ、彼は極上のギターをタダでもらったことになる。

by Darren_Davis

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