ジムノペディ、ロック、ジャズ、昭和歌謡、そしてクラシックがクロスオーバーした独自の世界

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ロックバンドという形態の中に、ジャズやラテン、そして昭和歌謡までをも飲み込み、そのオリジナリティの高さで独自の世界を作っているジムノペディ。

戦前の古きよき歌謡曲を思わせる情緒溢れる歌詞とメロディ、緻密に計算されたオケでありながら、その中に切り込むノイジーなギター。およそ、このような世界を作り上げたバンドは他には決して見当たらない。

彼らの3rdアルバム『8つの小品』が3/2にリリースされた。それぞれが短くまとまった作品ながら別個の小宇宙を含んでおり、その完成度の高さに唸ならされてしまう佳曲揃いのアルバムだ。

可愛さの中にも妖艶な女を表現するヴォーカリストであるナオミと、物悲しいsaxで曲の色彩を操る小林殉一の二人に話を訊いた。

この特集ではインタヴューの他に、4本のPV映像、そして最新アルバムの全曲試聴も行っているので、ぜひそれぞれをクリックして、ジムノペディの世界を楽しんでほしい。


3rdアルバム


『8つの小品』

GFCC-0007 \2,300(tax in)
2005年03月02日発売

01.不埒な食卓への前奏曲
02.片道キャンドル
03.~スタッカート練習曲第7番~
04.スタッカート
05.アコーディオン、あげる
06.メリル
07.~主従のための練習曲第19番~
08.主従関係
09.低血圧なカルテット
10.テヌート

インスト曲以外、全ての曲が 曲名をクリックしてください!

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メッセージ映像


オフィシャルサイト


http://www.megaforcejp.
com/gymnopedie/
──新アルバムは『8つの小品』というタイトルですが、この“8”という数字はどこから?

小林:“3つの小品”か“8つの小品”がよかったんですよ、語呂的に(笑)。でも3つだとアルバムにならないんで。サティの“3つの小品”をちょっとひねってみようかなと。

──2ndアルバムが全13曲で60分以上という大作だったので、少なく感じてしまいます。

小林:最初から短編集のようなものにしたいと思ってたんです。タイトルは『今宵も、うたかた探し』のような長ったらしいものが好きなんですが、それだとそのアルバムと同じように60分の大作を想像されてしまう。だからちょっと今回は無機質っぽくして、時間も35分くらいのコンパクトなものにしようかなと。ま、単純に短いものと長いものを交互に出したいと思っただけなんですが。だから次のアルバムは長いです(笑)。

ナオミ:時間の短い作品にするというコンセプトは最初から訊いてました。でも、最初は“小品”が“商品”かと思ってたんですけどね。

──今回のアルバムでは「主従関係」というエキセントリックな曲を作っていますが、ナオミさんはどんな時に曲を作るんですか?

ナオミ:私が曲を作るのは、誕生日のメンバーにあげるためなんです。いつも3曲くらいをプレゼントするんです。これもそうで、メンバーに対して“これからも仲良く行こうね”というメッセージを込めて。私が曲を作るのはこのためだけ。ラジオ番組を作りたくて、自分で曲を作って自分でパーソナリティになってというのが最初なんですけどね。でも5人いるので、けっこう労力がいるんですよ。年間にアルバム1枚分くらいは作ってる。

小林:だからアルバムを作ろうとすると、すでにナオミちゃんの曲はあるわけです。皆でそれを聴いて、僕がアルバムに入れたい曲を選ぶんです。で、それに合わせて僕が残りの曲を作るという(笑)。すごく楽でいいです。

──メインで作品を作るのは小林さんですが、小林さんの作品のタイトル、メロディ、歌詞はとてつもなく観念的で個性的です。まず歌詞で使っている古典的な言い回しの言葉は、どういうところから出てくるのですか?

小林:小説とか漫画かなぁ。最近は全然読まないんですが、昔は太宰治とかが好きでしたね。でもそんなに意識して作り上げてるわけではないです。締め切りが近い時にバァッと書くだけで(笑)。落ち込んだ時は何もできないので、どちらかというとハイの時に書きます。怒ってても悲しくても前向きになっている時ですね。真面目な話、曲よりも歌詞の方に時間がかかります。だから、曲が先にできていて、あとで歌詞を当てはめていくんです。

──2ndアルバムはロックバンドっぽい音だったのが、今回はちょっと大人しめのミックスになっていますね。

小林:迫力よりも、色々な音を使って遊んでいるところを聴いてもらいたくて。一曲一曲を“小品”にしたかったということにもつながっています。こういうカンジで実験してみたいことがたくさんあったんです。ちょっと一息つきたかったというのもあるかな。とにかく、迫力重視で聴きにくくなるということは避けたかった。

ナオミ:かわいらしい曲はかわいらしいままでいてほしいというのもあったし。今回の曲はそういう音作りに合ったものが集まったので、この方向性で問題はなかったと思います。

──インストの練習曲というのが2曲入っています。

小林:大した理由はないんです。曲の並びを考えた時に、この2箇所に空間が欲しかった。でも“8つ”って言ってるのに10曲になっちゃうから、楽曲としてとらえられないように練習曲ってことにしておこうみたいな。でもアルバム全体を考えて最良の位置を探しました。「スタッカート」を際立たせたかったので前に置いたし、「主従関係」も今まではやらないタイプの曲なので、その前に滑走路みたいなものをつけたかったんです。

──こういう緻密に音を重ねていくというのは打ち込みで作った方が早い。でもロックバンドということにこだわっているのがジムノペディの特徴ですね。このこだわりは?

小林:打ち込みも今後絶対にやらないというわけではないんですが、バンドの熱いカンジが好きなんですね。ちょっと無理してでも6人だけでやるということに、今の時点ではこだわっています。今は6人でやることが大事な時期だと思うんです。今後のことを考えると、6人でやることが勉強になるし、もっと大きくなっていきたいんで。ライヴもそうで、打ち込みを入れると、なにか熱さが足りないような気がして。だから、バンドというものにこだわっていきたいです。

──今回のアルバムで、メンバーで一番人気があるのは?

小林:アコーディオン?

ナオミ:アコーディオンかな。


小林:「アコーディオン、あげる」ですね。ワルツの曲です。

──歌詞の中の“ソシレファソ”ってG7のコードですね。どういう意味を込めているんですか?

小林:いや、ただ語呂がいいから…。きっとこれを弾いてみる人もいるんだろうなと(笑)。メロディもこの音階とは違うんですよね。この曲は歌詞の中で一切の答えを言ってないんです。それが自分ですごく気に入ってて。聴く人によっていろいろな捉え方をしてもらえればいいなと思います。自分で良くできたと思う曲は、こういう部分が多いんですね。

ナオミ:この曲は、笑いたい時、泣きたい時とかいろいろな状況が出てきます。その都度そんな気持ちになって、すごく喜怒哀楽が激しくて歌ってて楽しいです。

──最後に、アルバムの聴きどころをどうぞ。

小林:すごく聴きやすいアルバムだと思うので、気軽に聞いてみてください。

ナオミ:同じく。ジャケットがおいしそうなので、ぜひ買ってくださいね。

取材・文●森本智

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