新たな音世界を提示したイベント<WHAT'S THAT SOUND??>

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8月20日、ラフォーレミュージアム・ロッポンギには、Four Tet(フォー・テット)、Mugison(ムーギーソン)、Caribou(カリブー)という一筋縄では決していかないアーティストが集結していた。もちろん、先日お伝えしていた(https://www.barks.jp/news/?id=1000010724)エレクトロニカのイベント<WHAT'S THAT SOUND??>に出演するためである。

この日トップバッターを飾ったのはMugison。アコースティック・ギターとMugibox(ムーギーボックス)というさまざまな機材を詰め込んだ大型のスーツケースを片手にステージに上がった。彼のステージはとにかくユニークだったというほかない。ギターの弾き語りで始まったかと思えば、かのMugiboxを使って観客の声をサンプリングし、その場でループさせてトラックにしてしまったり。さらに、「Heavy Metal」や「Rock'n Roll」など独自の解釈を行なった楽曲を披露し、エレクトロニクスと生演奏を織り交ぜた実験的な要素を多分に含んだパフォーマンスを見せてくれた。この手のライヴはともすると小難しく、取っ付き辛いものになりがちなのだが、そこはMugisonなのか、いい意味で非常にユルい、暖かいステージになっていた。

2番手は元マニトバことCaribouだ。Mogisonのシンプルなステージとは打って変わって、ドラム・セット2台にギター、鉄琴、キーボード…というバンド編成。さらに、VJがアニメーションを流すという凝ったステージングをみせてくれた。彼らのパフォーマンスで何が驚いたかといえば、メンバーのマルチ・プレイヤーぶりだろう。Caribou a.k.a.ダン・スナイスはキーボードを弾いていたかと思えば、次の瞬間にはドラムで強烈なビートを刻む。そして、別のタイミングでは、笛を吹き、鉄琴を叩き……。曲によっての他メンバー2人の配置転換はもちろんのこと、一曲の間でも目まぐるしくパートが変化していく。そんな彼らを見ていると、ポップ・ミュージックの追求には、もはや旧来の“バンド”という概念の形態では、収まりきらないのはないか、という思いすら抱かせた。圧倒的な演奏力をベースに、かつてないポップ・ミュージックを演奏する彼らのパフォーマンスにオーディエンスの熱気も最高値に達していた。

そしてトリを飾ったFour Tet。Caribouのパフォーマンスでテンションが上がったオーディエンスたちは、このライヴで宇宙に連れて行かれてしまった。そう、彼はステージの上で一人コンピューターを操って、ヒップホップやドラムンベース、ロック、ポップ、ハウスなどはもちろん、現代音楽やジャズまでも飲み込んだ彼の音楽で、会場を違う世界へと変貌させてしまったのだ。立ちつくす者もいれば、踊り狂うものも。彼の奏でる音は、まさにこのイベントのタイトル「WHAT'S THAT SOUND??(なんだこの音は??)」通り、ポジティヴな驚きと発見に充ちていた。しかし願わくば、彼が手掛けたmixCD『Late Night Tales』で聴かせてくれた、彼のルーツでもあるバンド的なアプローチでもライヴを観てみたいと思った。フリッジとも違う、Four Tetのバンドサウンド。彼ならば、きっとかつて誰も聴いたことのない音世界を提示してくれるはずだ。
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