SOUL BOSSA TRIO、贅沢な時間を演出したライヴ・セッション

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11月2日に最新アルバム『Sunshine, Cloud & Rain』をリリースしたSOUL BOSSA TRIOことゴンザレス鈴木。約1年4ヵ月ぶりとなるこの作品は、まさに“スローライフ”のサウンドトラックともいうべき内容に仕上がっている。毎回、大きな話題を呼ぶヴォーカリストには、首里フジコ、Breath Mark、照屋実穂という3人を起用。三者三様のヴォーカルで、ときにそよぐ風のように、ときにさざめく波のように、アルバムの世界観を芳醇なものに演出している。また、演奏を担当するミュージシャンたちも豪華絢爛。リトル・テンポなどへの参加で知られる田村玄一、元ミュート・ビートの松永孝義、ウクレレやスライドギター奏者としてしられる高田漣などといった面々。シンプルな演奏ながら、楽器が本来持つ最高の音色を提供している。

そんなアルバムの世界観を反映するかのような、コンベンション・ライヴが10/25に行なわれた。

この日の編成は、ヴォーカリストとして起用された3人に加え、アコースティック・ギターに関淳二郎、ウッド・ベースに松永孝義、そしてパーカッションにゴンザレス鈴木というシンプルなもの。

そして、会場となったのは、ライヴハウスでもクラブでもホールでもなく、ゴンザレス鈴木のプライベート・スタジオ。都内某所にひっそりと佇むこの場所で、コンベンションは静かに行なわれた。

ゴンザレス鈴木のゆる~い挨拶とともに、始まったライヴには仰々しいライトも、豪華な演出も皆無。というよりも、むしろ友達のホーム・パーティに来ているかのような親密さに近いのかもしれない。まず登場したのは、この日、たまたま東京に居合わせたという首里フジコ。彼女は沖縄出身のヴォーカリストで、アルバムの1曲目に収録されている「Don't get around much anymore」などを披露して、アーシーな力強さを感じさせてくれた。続いて登場したのが、Breath Mark。独特の歌いまわしで、一種ブルージーな匂いも漂わせる素晴らしいヴォーカリストだ。SOUL BOSSA TRIOでは初となる男性ヴォーカリストとして彼が起用されたことは、この日のライヴを観て十二分に納得できた。最後に登場したのは、このアルバムがデビュー作となる新人シンガー照屋実穂。これまた沖縄出身である彼女は、姉が小さな弟に歌って聴かせるような微笑ましい優しさのあるヴォーカリストだ。今作にも収録された、沖縄民謡を2曲披露してくれた。

今回起用された3人のヴォーカリストに共通していることは、聴き手と歌い手の親密さを表現できるということだと思う。ゴンザレス鈴木は、この最新アルバムで“単純に音楽を楽しむ”ことを提案している。かつてあった結婚式の祝歌しかり、ブルースしかり、民謡しかり。“かつて音楽は、もっと親密で我々と近いものであったはず。肩の力を抜いて、ただ音に身を任せてみよう”と。

また、今作はすべての楽曲がバンドによる一発録り。そして、まさにこのスタジオで録音されたという。しかも、ミキシングの際の音の調整は、必要最低限。この空間で響いた音をそのまま記録したい、という思いでベスト・テイクになるなまで何度も繰り返し録音されたらしい。

そんな場所で行なわれたこの日のコンベンションは、ここが都内であることを忘れさせるほど優雅で贅沢なものだった。

この空気感をパッケージしたSoul Bossa Trioの最新アルバム『Sunshine, Cloud & Rain』は、あなたの音楽に対する純粋な楽しみを再び思い出させてくれるはずだ。
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