期待の新鋭、カルメン・グレイの音楽ルーツとは?

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北欧から興味深いアーティストの作品が続々と届いている今日この頃だが、ことにフィンランドの豊作ぶりには目を見張るものがある。9月5日には、この国におけるロックの先駆者というべきハノイ・ロックスの新作、『ストリート・ポエトリー』が発売されるし、9月19日には「危険な美形バンド」として前評判も高いラヴX(エックス)のデビュー作、『ディヴァイン・インサニティー』がようやく国内リリースを迎えることになった。さらに9月26日には、ラヴ・メタルの伝道者、HIMの待望の新作『ヴィーナス・ドゥーム』が、そして同日、BARKSでも何度か情報をお伝えしてきた弦楽メタル軍団、アポカリプティカの『ワールズ・コライド』も登場することになる。

そんな空前のリリース・ラッシュのなか、すでにステイタスのあるアーティストばかりではなく、次代を担うべきニュー・カマーたちにも当然ながらいち早く目を付けておきたいところだが、今回ここでご紹介するカルメン・グレイもまさにそんな注目に値する一組。発売されたばかりの『ザ・ポートレイト・オブ・カルメン・グレイ』は、このバンドの正真正銘のデビュー・アルバムである。

カルメン・グレイが聴かせてくれるのは、気恥ずかしくなるほどの哀愁味を漂わせたメロディと、80年代のアリーナ・ロックに通ずるスケール感を併せ持った、彼らなりのロックンロール。いかにも大観衆の合唱がよく似合いそうだ。屈折感のあるダークな美学テイストと同時に、昭和の歌謡曲に通ずるようなちょっと懐かしい匂いを感じさせもする。北欧のロック・バンドと聞いただけでマニアックな印象を抱く音楽ファンもいるかもしれないが、良い意味で、間口が広くて敷居の低い“ポップで聴きやすい作品”と言っていいだろう。今回、日本デビュー実現に際して話を聞くことができたフロントマンのニックラスに音楽的なルーツについて尋ねると、次のような言葉が返ってきた。

「俺が育ったのは首都のヘルシンキから400~500kmほど北に離れた田舎町で、家も貧しかったから、少年期には、なかなか好きなバンドのコンサートなんて観る機会には恵まれなかったんだ。昔、ヘルシンキにガンズ・アンド・ローゼズが来たときも当然観に行きたかったけど、金銭的に無理だった。初めて観た大きなコンサートは2001年頃のAC/DCかな。で、初めて買ったCDはガンズ・アンド・ローゼズの『アペタイト・フォー・ディストラクション』と『GNRライズ』。正確に言うと、CDじゃなくてカセットだったんだけど(笑)。俺にとってアクセル・ローズは、どんなに悪名高い人であろうと(笑)、今でも神様みたいな存在さ。メンバー全員、ほぼ同じような音楽的ルーツを持っているはずだと思うけど、ちょっと違うのはドラマーのO.J.かな。彼はかなりメタル寄りで、パンテラが大好きだったりするし、フィンランドのメタル・バンドにも詳しいんだ。全員に共通するフェイヴァリット・バンドは、ガンズにハノイ・ロックス、スキッド・ロウあたりだと思う。ていうか、このへんのバンドについては全員、“嫌いなわけないじゃん!”って感じだね(笑)」

と、いうわけで僕のアンテナの向かう先にはどうやらかならず熱心なガンズ信者がいるようだが、そんなことはさておき、ニックラスの発言はこれから何度かに分けてお届けするつもりなのでお楽しみに。同時に、カルメン・グレイに限らず、これから続々と登場することになる「フィンランドからのニュー・アイテム」に関する情報も引き続きお伝えしていく。とにかく2007年、フィンランドは無視できそうにない!

文●増田勇一
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