アンダーグラフ、3rdアルバム『呼吸する時間』インタビュー

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──一時期のスランプを脱して、今年の真戸原くんはずいぶん曲を書いたそうですね。結果、アルバムが今までになくカラフルで振れ幅の大きな作品になりました。

真戸原直人(以下、真戸原):そうですね、今年の春から夏にかけて一気に曲が生まれました。ただ、アルバム制作というのを意識していたら、逆にここまでいろんな要素は入ってこなかったかもしれないですね。ま、実を言うと、アルバムという意識を極力持たないようにしていたんです。リリースのために曲を作るんじゃなくて、出来上がった曲の中からリリースしていくのがやっぱり美しいじゃないですか。だから、メシを食うように曲を書いてレコーディングしたいし、毎日電車に乗るようにライブをしたい。そうやって音楽をやっていくことが、今いちばん楽しいことなんですよね。

──そういう平熱感が、まさに今作のタイトル『呼吸する時間』が意味するところですね。

真戸原:そう、普段過ごしている時間、そのひとつひとつの瞬間が全部僕らの音楽に繋がってますから。とにかくね、タイトルには命のある言葉をつけたくて。

──とはいえ、一気に曲が上がったことで、アレンジ作業が物理的に大変だったのでは?

中原一真(以下、中原):そうですね。2007年はスタジオ作業がデビューしてからいちばん多かったです。ただ、僕らもアルバムを意識せず、真戸原が曲を書き上げるたびに、1曲1曲に集中してアレンジしていくというのを1年続けて、それが結果アルバムになったという感じなんですよ。だから振れ幅が大きくなったんだとも思いますよ。

真戸原:面白いのがね、メンバーにデモを渡すと、だいたい全部壊れて返ってくるんですよ。メロディ以外は裸にさせられて、新しい服を着せられて戻ってくる(笑)。まぁ、今回は僕が歌詞とメロディを書くこと、歌うことに集中したかったんで、アレンジはほとんどメンバーに任せてたんですけどね。

中原:やっぱりどんなにシンプルなものでもね、何回も演奏して、創って壊してというのを繰り返していかないと、いいものは出来ないと思うんですね。いろんな音をとっぱらっても成立する曲を作るっていうのが、アンダーグラフの基本姿勢ですから。それがあるからこそ、いろんな音を付け足していけるというのもありますからね。

──アレンジからレコーディングに至るまでの作業はスムーズに?

阿佐亮介(以下、阿佐):曲によりけりですよね。「また帰るから」は2年以上前からあった曲で、ギターを重ねたり削ったり、けっこう時間をかけて作り上げた感じなんですけど、「ピース・アンテナ」からは、大変だったけど楽しい感覚のほうが強かったかもしれないです。

中原:リズム隊的には「春前の灯火」とか「セカンドファンタジー」、あと「タイムリープ」あたりはスッとできた記憶がある。

阿佐:ウチはリズム隊はセンスいいんでサクッといくんですけど、その後から僕と真戸原でこもってああでもないこうでもないって言いながら上モノを重ねていくっていう、その作業がやたらと大変なんですよね(笑)。「笑顔」なんて早い段階で出来てた曲だけど、テーマがどうしても出てこなくて、結局いちばん最後にレコーディングした曲ですから。

──確かに12曲聴いていると、リズムは迷いがないですよね。曲それぞれに、目指したところがはっきりわかる。

谷口奈穂子(以下、谷口):まぁ、リズムに関しては、基本的にいつも通りの感覚でやりましたから。

阿佐:でも「ハイスピードカルチャー」は、リズムもかなり重ねたよね。

真戸原:谷口にご機嫌を伺いました。電話しました、“最近どう?”みたいな(笑)。この曲でドラムを重ねてみたいなと思ったんですけど、谷口は自然派のドラマーなんで、もしかしたら抵抗があるかな、と。

谷口:でも、私としてはすごく嬉しい提案でしたよ。ドラムを重ねるなんて面白そうやし、私の重たいお尻を蹴ってもらったような感覚でしたね。実際すごい楽しかったですもん。新たな道が拓けた感じでした。

──でも、これだけ音を重ねると、ライブアレンジもまた一苦労かもしれないですね。

真戸原:まぁ、「楽園エステ」なんかはもうライブでやってみて、かなり手応えがあったりするんで大丈夫かな。ギターを重ねることもどんどん増えていってるんで、阿佐がレコーディングでよく“ライブどうする!?”って話をしてるけど、やってみると案外平気。

阿佐:うん、音源で完成された作品を、ライブでどう表現するかはまた別の取り組みという感じなんで。ま、やるまでが不安だってだけでね、実際は大丈夫だと思います。

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