GIRL NEXT DOOR「偶然の確率」にみる、偶然ではないヒットの方程式

ツイート
9月3日にリリースされた、avexが全社を挙げてプッシュする超大型新人・GIRL NEXT DOORのデビューシングル「偶然の確率」。聴いて誰しも思うのは “avexっぽいサウンド” ということ。まさしく “Produced by avex traxと呼ぶにふさわしいサウンド” だ。

では、“avexサウンドって何だ?” と思考を巡らしてみる。

avexは、今となっては大塚愛やDo As Infinityなどに代表されるロックアプローチのアーティストも増えてきてはいるが、まず思いつくのはクラブカルチャーと密接した「踊れる」サウンドだろう。SUPER EURO BEATに始まり、小室哲哉で確立された部分が大きい。しかも、日本人好みに味付けされた、日本独自の要素を持ったサウンドである。

その特徴は、派手に演出された華やかなサウンド。具体的な音を出すなら「オーケストラヒット」だ。トレヴァー・ホーンが作ったと言われ、YESの「Owner Of A Lonely Heart」で浸透した、オーケストラ全体が “ジャン” と鳴らした音を素材としたもの。一昔前は、あらゆるレコード会社の作品で聴くことができたオーケストラヒットだが、今となってはちょっと古臭いイメージすらしてしまうだろう。しかし、だ。「偶然の確率」では美味しいところにオーケストラヒットが存在する。この部分に、逆に初志貫徹した潔さすら感じてしまうのだが、それ以上に、このオーケストラヒットによって「偶然の確率」は、理解しやすい曲に仕上がっている。理解しやすい、わかりやすい曲=親しみやすい曲であることは言うまでもない。

エレキギターのロックなアプローチもavexサウンドの(というより、むしろJ-POPの)特徴といえるだろう。クラブミュージックではテクノがベーシックとなっているため、海外の正統派クラブシーンにおいてヘヴィーなギターが登場することはほぼ皆無に近い。クラブサウンドにロックなギターを乗せるというのも日本の音楽シーンから派生した、サビでサウンドの厚みを出すために取り入れられた手法だ。他にもリフ的な使い方、ソロになった時の派手なパフォーマンス。ギターサウンドとの組み合わせは、あらゆる面で効果的であり、もちろん「偶然の確率」でも用いられている。

4つ打ちキックをベースに、あらゆるジャンルを取り込み、独自の解釈で組み上げられたavexサウンド。これはつまり日本人らしい、日本人のためのものといっていいだろう。

そして、聴く楽しみから歌う楽しみへシフトしていった日本の音楽文化では、カラオケで楽しめなければならなかった、ということも忘れてはならないポイントだ。

クラブミュージックは単調な音の繰り返しによる抑圧から解放されることによって快感を得る音楽であるため、長い時間をかけて曲が展開する。しかし、それではカラオケで盛り上がれない。日本では、メロディーもコード進行も、1コーラスの中で物語があり、めまぐるしく変わっていく凝縮されたサウンド、なおかつ、歌いやすさが求められた。「偶然の確率」のメロディーはというと、1オクターブ+2度内に収まっているため、ほとんどの人でも歌いやすい。さらに、サビで転調することで、毎回違った次元へと連れていってくれる感覚になる。

20年間蓄積されたノウハウで構築された純度100%のavexサウンド。いわばavexサウンドの集大成ともいえるGIRL NEXT DOORの「偶然の確率」は、偶然ではない方程式のもとで作られたヒットの要素を盛り込んだ曲なのである。

GIRL NEXT DOORからのコメント動画
GIRL NEXT DOORフォトアルバム
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス