D'ERLANGER、果てしなくヘヴィで、眼もくらむほど美しい最新アルバム『D'ERLANGER』リリース大特集

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D'ERLANGER 最新アルバム『D'ERLANGER』2009.11.11リリース特集

最新アルバム&全国ツアーが決定

INTERVIEW

「やっとD'ERLANGERになった。そんな気がしたんだよね」

今作の命名者であるTetsu(Ds)は、その動機をこう述べ、さらに次のように説明している。

「再結成をして、日比谷野音からまた新たに始まって、武道館のステージにも立って。さらに過去にはやったことのないようなツアーもして、国外でのライヴも初めて体験して。そんなプロセスを経ながら、ようやく本当にD'ERLANGERになれた気がする。今の自分たちとして、ベストと言っていい状態にね。もちろんさらに上を目指すつもりだから、本当は“ほぼベスト”と言うべきなのかもしれないけど。世の中全般が下降気味な状況だろうと、俺たちはそこから遮断された世界にいるような感覚でもあるし、とにかく階段は一段ずつでものぼっていきたい。もちろん、必要以上に先のことまで約束したりはできないけどさ(笑)」

穏やかな表情で彼の言葉に同意しながら、kyo(Vo)が言葉を重ねていく。

「ここに至るまでにD'ERLANGERとして過ごしてきた時間が、とても濃密だった。その時間の流れが、そのままこのアルバムの制作過程でもあったというか。だからアルバムをこう名付けることにも納得できたし、今ではむしろ、このタイトル以外には考えられないという感じ。実際、今のバンドの状態が確実に封じ込められた作品だと思う。確かに時間が豊富にあったわけではないけども、CIPHER(G)から提示される楽曲というのが、どれも強い“匂い”をあらかじめ持っていたから、歌詞を書きたいという衝動にも駆られたし。そんな部分も含めて、D'ERLANGERの“バンド力”が存分に発揮された作品というか」

バンド力。その言葉を持ち出されたら、こちらも深く頷かずにはいられない。D'ERLANGERのライヴに接していていつも感じさせられるのは、その“力”が尋常ではないことだ。ステージはこのバンドにとって何かを再現するためではなく、音同士の会話を楽しむための場なのである。が、もちろん玄人好みの難解なセッションが繰り広げられるわけではない。陰と陽、静と動、愛と憎、生と死。表裏一体の関係にあるさまざまなリアルが、その瞬間の感情や閃きを重んじながら表現されているのだ。ときには本音をぶつけあうように、あるいは愛を囁きあうように。また、ときには皮肉や冗談すらも投げかけるようにしながら。だからこそD'ERLANGERのライヴは官能的でありながら激烈で、見惚れてしまうような美しさと、見る側の本能を呼び起こすような野蛮さを兼ね備えている。

オリジナル・アルバムとしては通算第5作。復活後のアルバムとしては3枚目(つまり“現在”が“過去”を超えたということでもある)にあたる今作には、そんなD'ERLANGERの特質が、これまでの作品以上に熱いままの状態で封じ込められている。実のところ、その制作は相当な急ピッチで進められることになった。なにしろ7月25日に自己初の国外公演となる台湾でのライヴを終えた時点では、曲作りの作業すらも本格的には始まっていなかったのだ。が、結果的にはその台湾公演で“未知の領域”へと足を踏み入れたことも功を奏し、D'ERLANGERの“今”と“これから”に対するヴィジョンは、4人のなかで、より明確で曇りのないものとなった。

「俺が提示するものに対して各々が妄想を働かせるための時間が、確かに少なかったとは思う。そこはいつもながら申し訳なく思っているんだけども」

収録曲すべての作曲を手掛けているCIPHERはこう語っているが、SEELA(B)は、時間的な余裕が皆無だったことを認めながらも次のように述べている。

「だからこそ迷っている暇はなかったし、結果的には効率も良かった。すべて終わったときにも達成感ではなく“上手くやったな”という感覚があった(笑)。結局、そうやって追い詰められたほうがいいんでしょうね、このバンドの場合は」

彼はまた、「どんなに追い詰められても,結局は“どうにかなる”ことを自分たちでもわかっているところがある」と言い、「どうにかできてしまうのが、このバンドのすごいところでもある」と語る。さらにTetsuは「十代の頃から“結果オーライ”でやってきたからな」と笑う。が、それに続いた「だからこそ、ずっと新鮮な気持ちでいられるんだと思う」という発言こそが、まさに核心を突いている気がする。

このアルバムには、意外なほどにポップでありながらバンドの本質にも忠実な「Angelic Poetry」や、この作品にとっての核ともいうべき「LOVE/HATE」、さらにはD'ERLANGERの過去に精通している人たちならばタイトルを目にしただけで反応せずにいられないはずの「Your Funeral My Trial」と「EASY MAKE,EASY MARK」を含む全12曲が、あくまで4人の“今”に忠実に収められている。そこには息苦しいコンセプトも、過剰な戦略も存在しない。そしてCIPHERは、次のように発言している。

「言葉で説明して理解してもらうんではなく、聴いた結果として伝わるものであって欲しい。結局、ずっとそういう考え方をしてきたし、要は常に過去のどの作品でもない何か、今のD'ERLANGERにしかない新しい何かを求めているわけですよ。だからこそ常に、不変のものと進化/変化の両方がある。どう転んでもD'ERLANGERであるのは当たり前なんです。だけども、そこに胡坐をかいていたくはないので」

この言葉にこそ、D'ERLANGERのD'ERLANGERたる所以がある。そして、まさにこの発言をそのまま音に変換したのが『D'ERLANGER』という作品なのである。

取材・文●増田勇一

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