“今、もっとも泣ける歌”を歌うjimama、その心の内を語る

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jimama “今、もっとも泣ける歌”として全国区へ広がった沖縄からの新しい風、jimamaが贈る初のベスト・アルバム

沖縄チャートNo.1を記録した名曲たちを完全収録

──シングル「大丈夫」がロングヒットを記録しましたけど、リリースした後の反響はどうですか?

その時は自覚がなかったんですけど、あとからすごく反響があって。最初は何が起こっているのか分からなかったんです(笑)。でも、実際に「大丈夫」がいろんな人たちに届いているんだなって、聴いてくださった方からのメッセージを見て強く感じました。インストア・ライヴでお手紙を頂いたり、ブログにメールでメッセージを頂いたり。

──それだけたくさんの人の心に届いているわけですから、大事な曲になりましたね?

本当に「大丈夫」な曲になりました(笑)。逆に、いただいたメッセージに励まされていますね。

──聴き手に向けてもそうですけど、自分に向けても届いてくるというか?

それはありますね。誰かに“大丈夫”って伝えているつもりが、自分にも向けられているようで何だか不思議です。それを受けて、今回のベスト・アルバムではロング・ヴァージョンを収録しました。歌詞も足してあるんですけど、頂いたメッセージに対してお返しができれば、アンサーソングになればと思って書きました。

──そのベスト・アルバムですけど、こうして改めて楽曲を並べてみると、自分の歩みを振り返ることができますね?

そうですね。ターニング・ポイントになっている曲だったり、自分の居場所を探している頃の曲だったり。その時の自分の状態を表している曲をセレクトしたつもりです。これまでの経緯、軌跡、そういったものが分かりやすく、聴いてくださる方に届けられればいいなと思いました。

──ターニング・ポイントになった曲というと?

「でいご」がそうですね。「ブーゲンビレアの下で」も自分の中では久々のラブソングとして書いた曲だったので、ちょびっと恥ずかしい(笑)。

──でも、こうしてみると、優しいラブソングが目につきますよ。「ふたりの時間」は、まさにこれから結婚して幸せになる2人の曲だし。

はい。この曲は、これからの生活を共に過ごしたいというところに絞って作っていて。ただハッピーなだけではなく、ふたりの間に流れる居心地の良さを感じてもらえたらなぁと。「ブーゲンビレアの下で」は、これから自分達で「ふたりの時間」にあるような気持ちを育んでいけたらいいねというメッセージです。あとは男女のラブソングというより、普遍的な愛をテーマに歌っています。いろんな形の愛をパッケージできればと思いました。

──「でいご」は家族の歌ですね。

これはおじいちゃんのことを思って書いたんですけど、私が沖縄に帰って初めて書いた曲です。これも大きなターニング・ポイントの曲ですね。初めて誰かに向けて書いた曲で、それまで自分に向けて書いていたんですけど、この曲をきっかけに視線が外に向けられるようになりました。言葉もここからシンプルになって、ストレートに書けるようになりました。

──シンプルな言葉を選ぶようになったのは、何がきっかけだったんですか?

地元の環境、付き合い、関係性、というところが大きいですね。家族も近所付き合いもそうですけど、ものすごく温かいんですよ。たとえば、家族でもない他人が心配してくれたり、声をかけてくれたり、そういう環境にいると心が素直になってく気がします。きついことを言っているように聞こえても、全然きつくない、むしろ自分を心配してくれている優しさがあったり。だからなのかな、「でいご」でおじいちゃんのことを思うと自然に素直に書けたんです、気持ちが原点に、幼かった頃の私自身にさかのぼっていったんでしょうね。「でいご」をお客さんの前で歌ったとき、反響が今までにないぐらい大きいもので、そこではっとしたんです。伝えるというのはこういうことなんだって。

──沖縄という風土のオープンな人間関係が曲の原動力になっているというか?

やっぱ地元ですもんね。でもウチナンチュー(地元民)は飾らない超ストレートな気質なので、そんな沖縄に居るから私の歌詞もストレートにシンプルになっていったのかなという気がします。誰しも故郷に戻れば気持ちが裸になって、安らげますよね。とくに気張る必要も強がる必要もないでしょう?それは故郷から一度外に出た人であれば皆同じ気持ちなんでしょうね。

──沖縄では誰もが知っている有名な曲になっていますね。

嬉しいです。飲酒運転撲滅運動のCMで長きに渡って使って頂いたことでより沢山の人に知ってもらう曲になったと思います。それでみんなの耳に残ってくれて。沖縄の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

──沖縄といえば、同じ沖縄出身のKiroroの玉城千春さんとの共作「Daddy」もありますね。

はい。千春ちゃんが書いた歌詞に、私が曲を付けました。私、歌詞が先にあって曲を後につけるのって実は大の苦手で。だけど、彼女の「Daddy」の歌詞にすごく感動して…。がんばって書きました!彼女とは大学の学園祭で同じステージに立ったことがあって、それから数年たって再会した時に盛り上がって。今は公私ともに仲良くさせてもらってます。

──「想い文」は失恋した女友達に向けて書かれていて。

jimama:この曲を書いた当時、仲の良かった人が彼氏のことで悩んでいたんです。早く元気になってほしいなという気持ちで書きました。これ、「でいご」を抜いて沖縄でチャート1位になったんです!最初は女性の方なら共感してくれるかもって思ってたんですけど、幅広く支持していただいた様で、驚いたし嬉しかったです。

──「命の花」はスケール感のある歌ですね。

この曲は偶然にも慰霊の日(第二次世界大戦で沖縄の戦闘が終結した日)に書きあげた曲なんです。比嘉富子さんの書かれた『白旗の少女』っていう本があるんですけど、それを読んで、ものすごくたくさんの思いがこみ上げてきて。現代人って、生きることに関して安易になっているところがあるじゃないですか。でも、当時の人たちは毎日を生きるのが必死で。生きたくても国のため、家族を守るために命を捧げなければいけなかった事実。その状況が、あまりにもショックで衝撃的で。

──過酷な現実を体験した時、初めて命の大事さに気づきますよね。この曲もシンプルな言葉で伝えられていて。

そうですね、この本に出会えて本当に良かったです。少しでも多くの人に、そういうことに気づいてほしいです。この本をいろんな人に読んでほしいです。いまだに思い出すのが辛くて語れないお年寄りの方もいらっしゃいますけど、こういうことを知ることは大切だなって感じます。

──「街」は今回の収録曲の中で一番古い曲ですね?

はい、アナログ盤を聴いているような手触りがあって、あえてそういうサウンドにしてます。今の私の詞の書き方とだいぶ違っていて、この当時は抽象的で内省的な世界を描いています。自分を探している時期だったと思います。自分のことを全て知っていると言い切れる人っていないと思うし、人ってずっと自分を探し求める旅をしているような気がして。当時の自分の気持ちが強く反映された曲でもありますね。

──そういった変化がはっきりとわかりますね。

ここ(街)がスタートなので、自分の中ではこれからも大切にしていきたい曲です。

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