今回はインタヴュー初登場ということで、菅原紗由理さんという人の背景も伺っていこうと思います。まず、ヴォーカリストになりたいと自覚した出来事を覚えてますか？

菅原：　両親ともに音楽が好きで、自分も小さい頃からよく歌っていたんですが。ヴォーカリストになりたいと強く想ったのは中学生の頃で、ドリカムさんの東京ドームでのライヴ映像をテレビで観たときや、安室奈美恵さんが秋田に来たときに、人生で初めてのライヴを友達と県民会館に観に行ったときに、“あ、自分も歌ってる側になりたい”と思いましたね。

菅原さんの歌を聴くと、元々耳のいい人なんじゃないかなと思うんですが。

菅原：　あ～…それは分かりませんが、とにかくいろんなアーティストの歌を聴いて、いい部分があったら自分のものにしていく感じで、独学というか、最初は真似でしたね。マライア・キャリーさんのフェイクの仕方を研究したり。キーが高い曲は難しいんですけど（笑）。

マライアの何に惹かれたんだと思いますか？

菅原：　初めて聴いたときに鳥肌が立ってしまって。バラードでもアップテンポの曲でも、一つ一つ表情があるというか。心に伝わってくる歌には自然に涙が出たり、寒気がしたり（笑）するんですけど、特にマライア・キャリーさんの曲は、当時の自分にすごく響く何かがあったので。最初の頃の作品は、特に聴き続けてます。

そうなんですね。デビューのきっかけになったフォーライフミュージックの「30daysオーディション」以前も、オーディションに挑戦してたんですよね。

菅原：　そうですね。オーディションでは、ドリカムさんの曲を歌うことが多かったです。あと、地元でのど自慢にも挑戦したことがあるんですけど（笑）、そのときはMISIAさんの曲を歌ったりしました。

人前で歌うことは元来、好きですか？

菅原：　それがけっこう緊張するタイプなので、人の前で歌うことも話すことも抵抗がなかったといえば嘘になるんですけど、でもデビューする事になって、少しずつライヴをするようになってからは、人前で歌うのが今まで以上に好きになりました。それにオーディションに何回も挑戦する中で、人前で自分の意思をきちんと伝えなきゃダメだなぁと思っていたので、普段、学校でも手を挙げて発言するように努力しました（笑）。

それもアーティストへの道のりの鍛錬だったんだ（笑）。どうも菅原さんは「30daysオーディション」で彗星の如くデビューした印象が強いけれど、実はそうじゃないんですもんね。

菅原：　最初は、両親が私の音楽の道に進む夢に対して賛成じゃなかったので。何度も家族で話し合ったり、諦めそうになった時期もあったんですけども、諦めたら夢は叶えられないので。

菅原さんは、中学生ぐらいから歌手を夢見ていたわけですけど、周りの同級生たちの中でやりたいことが見つかっている人って、あまりいなかったのでは？

菅原：　いないですね。高校に入ってもただ単に“大学行こうかな”っていう人が多かったような気がします。周りにも夢を持っている人はいたと思うんですけど、あまり夢を語る人はいなかったですね。私もすごく仲のいい友達にしかそういう話はしなかったです。田舎なんで、「オーディション受けたらしいよ」とか、一気に話が広がってしまうので（笑）。

でも仲のいい友だちには話してたんですよね？

菅原：　はい。

その友だちは今、どんなことを？

菅原：　そうですね、大学に通ってたり、以前からバスガイドになりたいって言ってた友達は、いま東京でバスガイドをやっていて。あとは、看護学校や医療系に進んだりとか、親友たちは、夢に向かって進んでいますね。

ご両親はオーディションのための交通費とかの援助はしてくれたんですか？

菅原：　なかったですね。高校になってからは、バイト禁止の学校だったんですけど（苦笑）、なんとかお金を貯めなきゃいけなかったので、お蕎麦屋さんでがんばってました。時給が650円だったんですけど（笑）、それでも夢を叶えたかったので、8時間ぐらいぶっ続けでがんばって働きました。

ガッツありますね。で、当然、東京にオーディションに行くときは新幹線に一人じゃないですか。何をいちばん考えてました？

菅原：　やっぱり、オーディションで歌う曲の事、あとは何を話そうとかなんですけど。こう、未来の自分というか、ステージに立ってるときの自分をイメージしていました。もちろん、逆に“もしダメだったらどうしよう”っていう不安もあったんですけど、とにかく前向きに、デビューできたらこうなりたいとか、こういう曲が出せたらなぁとか、レコーディング中の自分を想像したりもしてました。

いいイメージトレーニングの時間ですよね。ところで、地元の横手市まで帰るとなると、往復8時間ぐらいかかるらしいですけど、こう、孤独ですよね。しかも東京に着いたら着いたで、人は多いけど知ってる人はいないし。

菅原：　はい。初めて渋谷のスクランブル交差点に立ったとき、自分がちっぽけに感じたりもしたし、交差点を渡る勇気がなかったです。週末にオーディションで東京に行くことは楽しみでもあったんですけど、同時にものすごく不安でしたね。デビューが決まらないのに、もし東京に住むことになったら、私はこれからどうして行くんだろうか？とか。新幹線の改札を抜けてから、緊張して手が震えたり、ご飯も食べられなくなったりもしました。

まぁ、ある意味で戦いに行くワケですもんね。

菅原：　高校の頃は周りから、「夢、決まってていいね」とか「進路決まってラクだよね」みたいなことを言われることも多くて（汗）。

ラクなワケないじゃん！

菅原：　もうホントに（笑）、毎日が戦いのようなものでしたね。でもとにかく、一度自分が決めたことなので、絶対に諦めないで叶えたいっていう気持ち一心でした。

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