サイモン・ラトル&ベルリン・フィル演奏会レポート:ジルベスター・コンサート2009

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世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を率いるサー・サイモン・ラトルの動向を追いかける連載ニュースの第三回目。今回は2009年12月に行なわれたベルリン・フィルのジルベスター(大晦日)・コンサートの模様を紹介する。

ベルリン・フィルのジルベスター・コンサートと言えば、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートと並んで、クラシック界随一のイベントである。2009年も例年通り12月29日から31日まで3回行なわれ、大晦日はARDドイツ第1放送で生中継された。出演者は、サー・サイモン・ラトルの指揮に、ラン・ランのピアノという組み合わせ。ラン・ランは、ドイツではクラシックの枠を越えるスターであり、今シーズンはベルリン・フィルの「ピアニスト・イン・レジデンス」にも招かれている。曲目は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』第2幕と、ロシアものをあまり指揮しないラトルとしては、珍しいプログラムであった。

実際の演奏会の前には、TV中継の権利をめぐってひと悶着あり、20年数来のパートナー、ZDFドイツ第2放送との契約が不延長となった。そこにライバル局のARDが飛び込んで、2010年および2011年以降の放送権を獲得したという。大晦日の定番番組を手にしたARDは、ドイツ最大のコメディアン、ハラルド・シュミットを司会者に立ててさらに話題をさらい、漁夫の利を得た格好。ちなみに2011年の指揮者には、小澤征爾が予定されているという。共演は話題の美人メゾ、エリーナ・ガランチャというから、日本の聴衆には見逃せない回となるだろう。

当日の演奏は、ラン・ランが彼一流の派手なアクションを見せ、聴衆の喝采をひとり占めにしたかと思いきや、実際の頂点はむしろ『くるみ割り人形』の方であった。ベルリン・フィルの華麗な演奏技巧とラトルの洗練された音楽作りが、作品の夢見るような音楽を引き立て、新聞評でも絶賛を博している。コンサートマスターは、9月に入団した樫本大進が務めており、日本人にとっては特に誇らしい晩であった。

城所孝吉(音楽評論・ベルリン在住)

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◆サイモン・ラトル・オフィシャルサイト
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