Dirty Old Men、タワレコ限定4曲入りシングル「Dirty Old Men e.p.」リリース大特集

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Dirty Old Men タワーレコード限定発売の最新シングル 「Dirty Old Men e.p.」2010.3.3リリース

怖くて殻に隠れていた自分自身をさらけ出して音楽に昇華できたのは 人との出会い、そして音楽の大切さを実感できたからこそ

INTERVIEW

バンド結成から6年。Dirty Old Menのメンバーは、ギターの山下拓実を除いて高校の同級生だという。

「高校2年生のときにバンドを組んだんですよ。ベースの山田(真光)くんは高校1年から3年間一緒。でも1年生の時はひとことも話したことがなかったんです。このバンドを組む前はドラムの野瀧(真一)くんと、Going SteadyとかHi-STANDARDとか、その時流行っていたバンドコピーバンドを組んでました。そのバンドが解散したあとにオリジナルのバンドを組みたいなって思ったんです。オリジナルをやりたい気持ちは1年の時からあったんで、“このままじゃダメだ”と思ったんですよね。で、解散後、山田くんがベース弾けるらしいというので、掃除の時間のトイレで誘いました。そのときに初めて喋ったんですよ」


その2年後、バンド仲間として以前から知り合いだった山下が加わり、現在の4人が揃った。結成当初はHAWAIIAN6のコピーとオリジナル楽曲をライヴで演奏していたという。「メロコアに憧れていた」という理由で、当時の歌詞は英語詞中心。ネイティヴではないがゆえに発音や表現力に限界を感じはじめたときに、地元のライヴハウスで出会ったバンドに強く影響を受け、日本語詩の素晴らしさに目覚めた。

「歌詞は日本語で書いたものを英語の先生に歌詞をつけてもらったりしたんですけど、“表現出来ないよ”っていう言葉が多かったみたいで。だったら日本語の方がいいのかなって。日本語詞の良さを痛感したのは、当時バイトをしていたライヴハウスで日本語詞のカッコいいバンドに出会ったのがきっかけなんです。無名でも格好良いバンドってたくさんいると思うんですけど、ベビーカーっていう茨城のバンドがすごくかっこ良かった。もう解散しちゃったんですけどね。そのバンドに感動して、“俺も日本語で歌詞を書こう!”ってなったんです」

高津戸の書く歌詞は、内省的だったり、物語的だったり。文学的に行間を表現したかと思えば、ストレートに胸を突く言葉をバランス良く配置して、曲の世界を伝える。特に今作「Dirty Old Men e.p.」は、今まで彼が作り上げていた歌詞の世界より更に一歩踏み込んだものが多いように思える。

「歌詞を見ていると、自分ってヒネくれているなって思いますよね(笑)。伝えたいものを遠回し遠回しに伝えることのほうが多いなって。でも、歌の中で“ありがとう”って言葉を伝えるにしても、どのアーティストにも負けたくないって気持ちなんです。そのための言葉の流れを感じたり、ここで“ありがとう”を歌詞に入れたらグッとくるだろうなっていうのはすごく考えます。前までは、今ほど歌詞について考えていなかったんですね。人と違うようにしなきゃって思っていたり、自分を隠したり、なるべく見られないようにしたり。でも今作は自分の気持ちが思いっきり出ている。歌も強く歌ったり、ちゃんと表現できるようになったと思うんですよ。なんの仕事でもそうだと思うんですけど、明日のことなんてわからないじゃないですか。僕も確かなものを探しながら描いていて。人生、不安材料って多いじゃないですか。今回の歌詞を書いているときは、その不安材料が心の中にいっぱい湧いていたんですよ。でも光が見えてほしい、希望というものが最終的にあった方がいいなと思って、すごく悩んで書いた「解いた手」とかも最後は光が見えるような感じになっている」

「解いた手」は、恋人と向き合えない「僕」の心象風景を物語のように描いた楽曲だ。ストーリーを組み立てるうちに、楽曲の分数が8分にもなってしまい、そこから言葉をそぎ落とした結果、行間からも2人の思いが零れ落ちてくるような楽曲になった。

「長過ぎるから歌詞を切ったんですね。歌詞を削るとなると、伝えるためにはもっと言葉を意識しないと伝わらなくなってしまうから、それで悩みましたね。歌詞の良さって、短い文でも伝わるというのが一番いいと思うんです。でも僕はまだまだできてないなって思う。この曲は、夏の終わりと自分が終わる音を重ねている歌詞なんですけど、そもそも映画みたいな曲にしたかったんです。別れて、最後はまた2人は再会するんですけど、このあと、ハッピーエンドなのかどうなのか、難しいところなんです…。僕もよくわかんないんですけどね(笑)。聴いた人にお任せします」

この曲のように、フィクションなのかノンフィクションなのかわからない曲もあれば、“自分が出過ぎてしまった”という「ConcreteEarth」のような曲もある。

「僕、ずっと自分を隠していたんですよ。作家的なところがあって、格好良く見られたいと思って書いていたから、伝わらなかったこともいっぱいあったんだけど、今回は本当に追いつめられていたので、自分を出す部分が出たと思います」

さらに実体験が大きく影響しているのは「パントマイム」だ。これは、昨年のツアーで出会ったファンとの関係や、ファンへの感謝を真摯綴った歌だ。

「全国ツアーに来てくれたお客さんが、泣きそうな顔で“ありがとう”って言ってくれるんですよ。こっちこそありがとうなのに。僕らが音楽をここまで続けられているのって奇蹟だと思うんですよ。みんなに支えられて、僕らがやれているから。それでこの曲を書こうと思って。一番衝撃を受けたのが、癌を患ったファンの方と出会ったことなんです。カップルで観に来てくれたんですけど、つきあい始めてから彼女が癌だということがわかって、入院するときに彼氏さんが、僕らの「moon wet with honey」って曲をiPodに入れて渡したそうなんです。彼女はその曲を聴いて、“彼と半分こずつして頑張れました”って。まだ彼女は闘病中なんですけど、一日だけ病院から外出許可をもらって観に来てくれて。それでライヴ後に“信さん(高津戸)は僕らのヒーローなんです”っていきなり言われて、闘病の話をされて。2人で手をつないで、“私たち、結婚するんです。ありがとう”って言われて、ズシンと来て。こんな“ありがとう”があるんだって。ずっと不安で、俺なんて才能あるのかなって思いながら毎回曲を書いてて、そんな風な人がいるんだって肌で感じました。俺が誰かの光になれているって感動した。この2人がきっかけだけど、みんなに伝えたい曲です。この曲を書いたときに、お客さんに媚びているって思われたらイヤだって思ったんです。でもそういうもんじゃない。この気持ちはもっと重いんだって、悩みながら書きましたね。大切にしなきゃいけない曲だから」

以前よりもっと等身大の自分を表現する術を経て、今後さらに多くの人の胸に刺さる楽曲が誕生しそうな予感がする。

「この作品を作って、自分の中でも改めて音楽に対しての気持ちを知りましたしね。僕なんて音楽がなければただのチャランポランなヤツなんで、いつも音楽に助けられてるんですよ。そのありがたみを感じています。これからももっともっと伝わる曲を書いていきたいと思います」

取材・文●大橋美貴子

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