【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】 第1回 「僕とオリ盤」

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初めてオリジナル盤で聴く『Stage Fright』に、僕は本当にブッ飛びました!! ブンブン唸るベース、躍動感溢れるドラム、縦横無尽に駆け巡るオルガン。ギターの太い音、ピアノの繊細なタッチ、声の表情、迫力。今まで聴いてきた『Stage Fright』とは全くの別物と言っていいくらい印象が違うのです。「これが“本物”の『Stage Fright』か、これがThe Bandの出したかった音か」と、大きな大きな衝撃を受けました。こうなってくるともう作品に対する解釈が違ってきます。それまで持っていたイメージを根底から覆されたようなものです。そして必然的に、他のアルバムもオリジナル盤で聴きたいと思ったのです。

The Bandに限らず、この年代の作品のCD化されたものには音のよくないものが多いとかねがね思っていたので、僕にとってこれは目から鱗でした。実際オリジナル盤には、CDはもちろん、それまで集めていた日本盤や再発盤のレコードと比べても、圧倒的にと言っていいくらい音のいいものが多く、ときにはミックスやテイクが違うんじゃないかと思ってしまうほど。どう音がいいのかというとこれもまた様々ですが、音が太かったりふくよかだったり。あたたかみや深みがあったり、粘りや迫力があったりするのです。

さて、ではその“オリジナル盤(=オリ盤)”とは一体どういうものなのか。

“オリジナル盤”。つまりは“初版”。たとえば'69年リリースのアルバムならば、その'69年の発売当時にプレスされたレコード。それがオリジナル盤の本来の意味だと思います。でも実際には、その発売当時と同じ仕様ならオリジナル盤と言ってしまうことが多いようです。

たとえば、先程も話に出てきたThe Bandの1970年リリースの3rdアルバム『The Band / Stage Fright』。レコードのレーベルは緑色の“グリーン・キャピトル”レーベルがオリジナルとされています。しかし、この“グリーン・キャピトル”レーベルは1969年から1972年まで使用されたと言われています。ということはつまり、1970年リリース当時にプレスされたものでなくても、1972年までにプレスされたものならオリジナル盤として出回っているということになるのです。

こういった曖昧さからか、“オリジナル盤”という呼び方自体を嫌う方も多いようですが、僕は実際的に最も広く使われているのはこの「オリジナル盤=発売当初と同じ仕様のもの」という定義だと思うし、それでいいと思っているので、この連載では基本的にその考え方で通していこうと思います(補足:実際にはその中でも早い時期のプレスなのかどうかを見分けることが可能なものもあります。いわゆる“マト番=マトリクス番号”(←これの呼び方にも賛否両論あるようです)や、レーベルやジャケットの仕様が微妙な違い、等々)。

では、なぜオリジナル盤は音がいいのか。
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