【BARKS編集部レビュー】高度な設計に裏打ちされた快楽トーン、Bowers & Wilkins C5

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またまたゴキゲンなやつと出会ったぞ。バウワース アンド ウィルキンス(B&W)のC5という、当ブランドにとって初となるカナル型ヘッドホン・モデルだ。

◆B&W C5画像

一見して目を惹くのは、その異質なデザイン。「セキュア・ループ・デザイン」と名付けられたこのケーブルのループ部分は、その大きさを自由に動かし耳介内側の窪み部分(耳甲介)にフィットさせるためのもの。使用して分かるのは、フィット感を向上させるというより「耳穴に対しベストな挿入状態をキープする」ためのもので、すばらしくシンプルで機能的だ。ベストな位置を定めたら、セキュア・ループを広げ耳の窪みに沿わせればピタッとホールドされる。その効果は完璧で、何度もはめ直したり角度を変えたりするという“イヤホンあるある”から完全解放してくれる。

そして、短いシシオドシのような筐体の反対側には、銀色のメッシュ状の網が張られているようにみえる。この非常に個性的な造形は「マイクロ多孔質フィルターシステム」というもので、メッシュではなく極小の金属球が敷き詰められたものらしい。球の隙間が非常に小さな通気口の役目をしているのだと思うが、肉眼で確認できる大きさではなくパッと見た感じはファイバーケーブルの束の切断面のようなルックスで、サウンドにどのような効能を与えるものなのか…さっぱり想像もつかない。音響フィルターのようなものであれば、特定の周波数帯域だけ外へ抜くという設計なのだろうか…。素人の私には分かるべくもないけれど、通常使用においては、これによって音漏れするような心配もなく、外音が耳に入ってくるということもない。ボリュームを最大にし爆音にすると確かに盛大に音が漏れてくるが、カナル型としてはごく標準的な遮音性も持っているので、音漏れが気になるほどの音量で聴くこと自体、かなり危険な行為になるはずだ。

なお、イヤーチップは薄いシリコン素材なのだがしなやかさに乏しくちょっとパリパリしている質感なので、サードパーティーのイヤーチップを試してみると、更なる遮音性と心地よい装着感、低域のコントロールもできるかもしれない。

ケーブルは無酸素銅のツイストケーブルで、クリア・コードが高級感を醸し出している。ちょっと残念なのは多少癖がつきやすいところで、巻いたまま時間をおくとブタのしっぽのようにケーブルがくるんと輪を描いてしまう。なおタッチノイズは低域のモサモサとした音が乗る。ちょうど100Hzくらいの音域のノイズだが、許容範囲程度なので実用ではさほど問題にはならないだろう。ちなみに、耳掛け(シュア掛け)は構造上不可能だ。

先に気になる点、マイナスポイントを挙げ切ったところで、肝心のサウンドの話を。意匠やアイディアが個性的で素晴らしいのみならず、最も魅力的なのはサウンドそのものだった。

肉感的で非常にダイナミックなサウンドで、生々しい。決して分析的ではなく、“楽しく音楽を奏でる”ことにのみ注力したかのような聴き疲れのないトーンを奏でてくれる。作為的な響きがなく分厚くもナチュラルなトーンだ。強いて似たサウンドを探すとすれば、モンスターのマイルス・デイヴィス・トリビュートから800Hzあたりの中域の押し出しをもう少しすっきりさせ低域を2割増しさせた感じ、あるいはSHURE SE215に低域のハリと深みを追加した感じであろうか。バランスとしてはUE350に中域を追加しフラット目にチューニングしたらこのようなサウンドになりそうだ。

低域は十分すぎるほど出ているが、量感たっぷりながら他の音域を一切邪魔していないのが明らか。引き締まった硬質でタイトな音…というわけでもないのだけれど、不思議とリファレンス・モニター系のようなすっきり感も持ち合わせている。モニター系といえばSONY MDR-EX1000を思い起こすが、B&W C5に耳が慣れると私の好きなMDR-EX1000サウンドがすっかすかの音に聞こえてしまう。C5にはEX1000のような繊細なディテール描画能力はなく、出音はずいぶんと大雑把なのだけれど、つい「EX1000よりいいぜ!」と能天気に叫んでしまいそうなプッシュ感が何とも魅力的だ。

質感が高いというわけでもなく、ちょっと雑なところもあるが、“カッコよく鳴らす”という、理屈じゃない心地よさのようなものがあって、どうにも忘れられないトーンを叩き出す。明らかにマルチドライバーのハイエンドモデルの方が分解能も高くいいサウンドだとは思うんだが、ついつい手を伸ばしてしまうような、この気持ちよさはなんだろうか。男目線で申し訳ないが、いわば「決して美人ではないのだけれど、たまらなく可愛らしい女の子」という感じで、エレクトロやクラブ系サウンドなどは、まさに生の現場にいるようなアンビエンスがぞくぞくするようなリアル感で伝わってくる。パンテラも激気持ちいい。カヴァレラ・コンスピラシーなんか、マーシャルのキャビに頭を突っ込んでいるのかと思うほどの音圧だ。昇天2秒前。あぁ。

頭を冷やし冷静に分析してみると、この魅力を生み出す最大の要因として、高域のすっきり感が抜群であることに気付く。おそらくマイクロ多孔質フィルターシステムなる効能を最も受けているのが、この帯域なのではないか。雑味感がなく非常にさらさらしたここちよいハイで、間違いなく量感はあるのだけれど、さっぱりしているので耳に優しい。トーン自体は中庸な質感なのだが、耳当たりの良さが独特で、繊細な奥行き感が心地よさにつながっていることが分かる。鳴っている楽器の倍音成分やアンビエント、ミックスで付加されたリバーブ成分などの微細な空間描写を非常に丁寧に描写してくれる点がずば抜けているようで、結果、音の立体感やしっかりとした定位感が楽しめる、非常に能力の高いイヤホンに仕上がっているという印象だ。

そして、実は欠かせぬ重要なポイントがひとつ。どうやらB&W C5の魅力を引き出せるかどうかは、音源の品質に関わっているようだ。圧縮が強いと途端に広い音場も残念なほど狭くなるし、実につまらない音に変貌する。高域の魅力も途端に失われてしまう。C5の持つ能力を最大限に享受するのであれば、最低でもビットレートは256kbpsは必要だと思う。また、アンプの特性も非常に素直に出してくれるので、逆に好みのサウンド環境を既に作り上げているような達人であれば、そのサウンドを高品質に鳴らしてくれるちょっとワイルドなリファレンスモデルとしてB&W C5は非常に価値の高い一品になることだろう。

B&W C5に限った話ではないが、耳への挿入角度がかわるとハイのヌケが変わってしまう。音源や再生環境の高品質化や適切な耳への挿入など、ピーキーな要素も否めないのだけれど、はまったときの絶妙なバランスは、オーバーヘッドに肉薄する素晴らしいサウンド再生をもたらしてくれる逸品だ。iPod対応コントローラーを搭載したモデルではあるけれど、iPod直結ではないハイエンド環境でその能力を高く発揮するという、“ユーザーを選び、ユーザーに選ばれる個性的なオーディオ機器”として一目置かれるアイテム、というのが率直な感想。…もちろん私は、背伸びしてでもB&W C5に選ばれたい、です。

text by BARKS編集長 烏丸

Bowers & Wilkins C5
ノイズ・アイソレーション・イン・イヤー・ヘッドフォン
・セキュア・ループ・デザイン
・マイクロ多孔質フィルター
・ネオジウム・マグネット
・CCAWコイル
・超軽量9マイクロメーター厚振動版
・透明なツイスト・ケーブル(OFC)
・iPhoneと互換性のあるリモート・コントロール
ドライブ・ユニット:2xφ9mm
インピーダンス:32 ohms
周波数レンジ:10Hz to 20kHz
歪(THD):1%以下
感度:118dB/V 1kHz時
入力:3.5mm ステレオ・ミニ・ジャック (ケーブル先端)
ケーブル長:1.2m
重量:20g
仕上:グロス・ブラック
付属品:キャリングポーチ、イヤーチップ(3サイズ)、変換プラグ(2種類)、取扱説明書

◆B&W C5オフィシャルサイト
◆BARKS ヘッドホンチャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー
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