エントリーからハイエンドまで様々なヘッドホンをあれこれ試している日々だが、ここのところ出会うアイテムが、どれもこれも楽しくてゴキゲンなものばかりだ。「こいつは凄ぇ」と感嘆することしきりで、脳みそがエンドルフィンでびしょびしょである。私の普段の行ないの良さに対する神様からのご褒美なのか、それともヘッドホン周りの目覚ましき技術革新の賜物なのか…ま、後者なわけだが、今回紹介するSONOCORE(ソノコア)社のCOA-803のサウンドもご機嫌すぎて、私の高揚感は鎌首をもたげたまま収まりがつかない。

◆COA-803画像

▲筐体はABS樹脂で質感は高くないものの、軽量で使いやすい。独特なデザインは好みの分かれるところか。
COA-803のこのブっといサウンドは、どう表現すれば伝わるだろうか。牛丼で注文するならば「低域特盛で」というところだが、全体のバランスは崩れることなく、圧倒的な低域の量感&説得力を持つ、今まで聞いたこともないような濃密サウンドを叩き出してくる。おもむろに低域を強く出すだけなら簡単だろうが、それによって中域や高域が犠牲になってしまっては元も子もないわけで、COA-803の特筆ポイントもまさにここにある。尋常じゃない弩重低音をドスバス叩き出しながら、その推しの強さに埋もれないしっかりとした他音域がきっちり担保されていて、この絶妙な素晴らしいバランス感が、前例を見ない新世界なのだ。

低域の押し出し感は恐ろしく強くて、イヤホンの中では間違いなくトップクラスだと思う。しかし、その低域もタイトで引き締まっているので、ボワついたような気持ち悪さもないし、曇りも感じさせない。高域もシャキッと出るのでメリハリもあり、中域はむしろしっとりと落ち着いた品の良さすら漂わせている。もちろんセールスポイントとなっているCO-Axial(コアキシャル)テクノロジーの恩恵だと思うが、重要なのはスペックではなく、COA-803の持つ突き抜けたこの「音楽を楽しく響かせる能力」だ。強力な低音だけに好き嫌いははっきりするだろうが、はまるともう抜け出せない。再生機器としてのカタログ値よりも、数字で測れない音楽表現ツールとしての素養が、どうにもステキすぎる。

COA-803は、ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥやビクターのHA-FXT90と同様、ダイナミック型のドライバーを2発搭載した新設計のカナル型イヤホンである。いずれも低音に注力しているモデルだが、UE350やSONY XB系など低域再生を得意とする他モデルと比較しても、COA-803の迫力には遠く及ばないというのが素直な感想だ。

要はチューニングの思い切りが勝因なのだと思う。躊躇なく舵を切りまくった設計の男っぷりがもはや感動的で、「やるなら徹底してやってやるぜ」という腹をくくった覚悟にも似た信念が、奥底に隠された琴線を激しくかきむしるのだ。「おめー馬鹿だな、ロックだぜ!」と杯を交わしたいぞ。実はこのあたりの凄みは、Atomic FloydのSuperDartsと同じ匂い…なんだけどね。

▲同軸上(コアキシャル)に配置された2つのドラバーが最大の特徴。
▲御覧の通り、お互いを吸い寄せるほどの強力な磁力がモリモリ。くっついて持ち上がっちゃうイヤホンって、これまでありましたっけ? ネオジム磁石恐るべし。聞かないときは首に掛けておけば肩こりにも効きそう。
そして何よりありがたいのが、想定価格6,500円という破壊的なコストパフォーマンスだ。徹底した低音主義を貫きながらも、低音支配的とは言わせない他音域の主張も保たれた完成度を考えると、ここまでの練り込みには随分と手間暇がかかっていることだろう。つーか、偶然でこんな完成度になるはずないし。そんな背景も含め、フィット感も上々、遮音性もOK、タッチノイズもとりわけ騒ぐほどのこともなく耳掛け(SHURE掛け)も可というCOA-803が6,500円というのは、強烈な価格破壊の引き金に他ならない。暴れん坊、日本上陸である。

高い分解能やきめ細かいディテールの表現などを求めるのであれば、マルチBAドライバーのハイエンド・モデルに目を向けるべきだが、COA-803が打ち出す有無を言わさぬ押し出しの強さは、もはやカナル型ヘッドホンにあらず、もうオーバーヘッドのヘッドホン並みのインパクトだ。

COA-803で一番気持ちのいい音? そりゃ、なにはともあれドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』『カマキリアド』に決まっとる。…知らない? ならば、倖田來未の「キューティーハニー」で。エンドルフィンとアドレナリンの脳内大放水、止まりません。ヘッドホン/イヤホン好きであれば、COA-803の凄さには感嘆すると思うんだけどなぁ。低音嫌いだったら…、そりゃ、すいません。

text by BARKS編集長 烏丸

SONOCORE COA-803
・オープンプライス(想定価格:6,500円)
・イヤフォンタイプ:カナル型イヤフォン
・ドライバー:ダイナミック型(10mmウーハー、6mmツイーター)2Way、CO-Axialテクノロジー
・周波数特性:16Hz~20kHz
・インピーダンス:16Ω
・定格入力:3mW
・最大出力:10mW
・音圧レベル:115±3dB(At 20Hz 126mVrms)/99±3dB(At 1KHz 126mVrms)
・ケーブル:1.2m Yケーブル
・プラグ:3.5mmステレオミニピン(金メッキ処理)
・重量:約15グラム
・付属品:シリコンチップ(大、中、小)、フォームチップ(限定付属品)
・色:ケーブル、シリコンチップ、フォームチップは黒。
・発売日:2011年10月1日
・保証期間:1年

◆sonocoreオフィシャルサイト
◆BARKS ヘッドホンチャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
◆AKG K3003(2011-09-18)
◆Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
◆Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
◆Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◆ORB JADE to go(2011-08-22)
◆YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
◆NW-STUDIO(2011-08-09)
◆NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)
◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
◆Westone ES5(2011-07-21)
◆SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
◆クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
◆GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◆SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
◆フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
◆ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
◆フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
◆アトミック フロイド(2011-05-26)
◆モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
◆SHURE SE215(2011-05-13)
◆ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
◆ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
◆ローランドRH-PM5(2011-04-23)
◆フィリップスSHE9900(2011-04-15)
◆JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◆フォステクスHP-P1(2011-03-29)
◆Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
◆ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
◆Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
◆Westone4(2011-02-24)
◆Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
◆KOTORI 101(2011-02-04)
◆ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
◆ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
◆SHURE SE535(2011-01-13)
◆ビクターHA-FXC51(2011-01-12)