【BARKS編集部レビュー】あきらめかけていたあなたへ、ER-4Sに続くカナル型ヘッドホンBauXar EarPhone M

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2011年も年末に向け各ヘッドホン/イヤホンの新製品が続々と登場するようで、ヘッドホン界隈はにわかに盛り上がってきている。ことカナル型に限って言えば、重低音に特徴を持つ傾向の新製品が目立つようで、ここのところのトレンドであろうか。

◆BauXar EarPhone M画像

基本フラット好きと言いつつドンシャリもばんざいという雑食性の私だけど、一方でEtymotic Research(エティモティック・リサーチ)のER-4Sに代表されるような、透明感あふれる不純物のないクリアな高音も大好物である。痛い歯擦音は抑えながらも、キラキラと反射するスワロフスキーの輝きのごとく清らかなクリスタルトーンの高域の美しさを求めると、行き着く先はER-4Sだったという人も多いのではないか。

繊細で細かなディテールまでもしっかりと描いてくれるER-4Sのサウンドには、私も概ね満足…だけれど、本当はもうちょっとローが肉厚だったら嬉しいし、なによりケーブルのタッチノイズのでかさに悩まされ、どうしても外出時には手が出ない。

そんな状況下、ER-4Sのようなサウンドながらも
・もう少し低音が出る
・ケーブルのタッチノイズが小さい
・遮音性は同等で
・できればインピーダンスも50Ω以下
という、理想的すぎるモデルはないものかと物色する日々でもあった。カナルワークスからカスタムIEMのCW-L01が登場したことで希望は叶い、大きな満足は得られたものの、カスタム製作という性格上、多くの人にお薦めできるものでもなく、市販モデル探訪の旅はひっそりと続行されていた。

そしてついに出会いを果たしたのが、このBauXar EarPhone M(ボザール・イヤーフォン・エム)である。BA型ドライバー1発ならではの歯切れの良さに冴えわたる透明感を併せ持った持つサウンドで、高域も演出されたようなキラキラした感じではなく素直で下品さがない。

既存の機種で比較すれば、やはりER-4のストイックさをほどよく緩めて小さじ一杯の低域を追加したサウンドという感じであろうか。ざっくりとした傾向としてはクリプシュImage X10にも似た清潔感漂うトーンだが、X10よりも低域も高域も押しが強く輪郭がはっきりしており、ボーカルもくっきりと鼓膜に近い感覚で肉感的に響いてくれる。

このBauXar EarPhoneM、バランスド・アーマチェア・ドライバー1発の設計で2007年に登場したモデルなのだが、力強さと繊細さと透明感と瑞々しさを高次元に保ちながらも、相反するかのプッシュ感も持ち合わせており、このバランス感覚が著名モデルのどれともまた違う魅力あふれたものだ。

4年も前に登場しておきながら未だマイノリティな存在なのは、販路が極めて限定的で、ほとんど宣伝もされていないためだ。アマゾンで購入可能なのが唯一の救いだが、私の知る限り一部の東急ハンズと秋葉原のダイナミックオーディオでしか販売されていない。大型量販店にもイヤホン専門店にも入荷はないため、試聴も叶わず知る人ぞ知る隠れた名機としてひっそりと存在している状況だ。

サウンドのよさと遮音性も高さは随一で、まさにER-4S級。ただしそれは、きっちりと装着された時の話で、装着に関してはかなりピーキーだ。外耳道にダブルフランジのイヤーチップがみっちりと密着する必要があり、装着が半端だと低域も出ず高域のヌケも悪く、最悪なサウンドになる。このストイックさを考えると、店頭での試聴では実力が全く伝わらず「なんだこれ、こいつクソ」…と、いわれなき評価を受けてしまいそうな気もする。市場に試聴機がほとんど無いのもそういう理由なのだろうか。

実際私は、ハウジングのケーブル付け根が耳介と干渉し、通常のはめ方では満足すべき装着に至らない。あやうく「なんだこれ、こいつクソ」である。耳掛け(SHURE掛け)することで干渉がなくなり、ケーブルのタッチノイズも激減し、素晴らしい再生環境がお目見えした。遮音は完璧だけに圧迫感もそれなりで、長時間使用すると耳穴に多少の痛みが残る。はずすときはゆっくりとねじるように抜かないと鼓膜を痛めてしまいそうなほど、気密状態が保たれている。装着時のぐぐぐと強く深く突っ込む感覚は、ER-4やX10以上のおらおら感である。

ちなみにBauXarというブランドは、タイムドメイン理論に根差した純国産のスピーカーブランド。タイムドメインとは、原音を忠実に再現することを追求する理論で、音源に刻まれたサウンドをそのまま出すことを徹底追及すると、共振を抑えた正確にレスポンス鋭く反応するフルレンジ小型スピーカーがベストという理論が成り立つ。このEarPhone Mはタイムドメイン理論に則ったものではないが、その考え方を踏襲して開発されたもので、レスポンスの観点からBAドライバーが起用され、アルミ削りだしの円柱形の筐体内に、振動を排除すべくドライバーをシリコンで浮かすという、タイムドメイン特有の構造を有しているのが特徴だ。

単に「BA型ドライバー1発のフルレンジ」とみれば、23100円という販売価格は高額で、エティモティック・リサーチER-4Sをはじめ、ファイナルオーディオデザインheavenシリーズ、オルトフォンe-Q7、クリプシュImage X10、グラドGR8といったモデルとのガチンコ競合となるところ。ただ、このサウンドと高い遮音性は、他どこを見ても存在しないワンアンドオンリーの立ち位置を確立している。

スペックがどうの特性がどうの以前に、音楽を楽しく必要な音を過不足なく届けてくれる心地よさこそがBauXarの真骨頂であり、そしてこのEarPhone Mも、淀みのないサウンドを徹底追求しただけのことなのかもしれない。そしてそのコンセプトこそが、誰も到達していなかったポジションに到達するために必要だった最後のワンピースだったようだ。

text by BARKS編集長 烏丸

BauXar EarPhone M
23100円(税込)
・型式:バランスド・アーマチュア
・ボディ:φ7.6mm アルミ円筒ボディ(グレーアルマイトカラー)
・出力音圧レベル:108dB/mW
・インピーダンス:16Ω
・質量(コード除く):約10g
・コード長:約1.1m(Y字型コード、φ3.5mm L型金メッキステレオミニプラグ)
・付属品:ポーチ、スペア用イヤーピース×1ペア

◆BauXar EarPhone Mオフィシャルサイト
◆BARKS ヘッドホンチャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー
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◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)
◆AKG K3003(2011-09-18)
◆Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
◆Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
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◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)
◆ORB JADE to go(2011-08-22)
◆YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
◆NW-STUDIO(2011-08-09)
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◆FitEar MH334(2011-07-29)
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◆アトミック フロイド(2011-05-26)
◆モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
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◆ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
◆ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
◆ローランドRH-PM5(2011-04-23)
◆フィリップスSHE9900(2011-04-15)
◆JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◆フォステクスHP-P1(2011-03-29)
◆Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
◆ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
◆Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
◆Westone4(2011-02-24)
◆Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
◆KOTORI 101(2011-02-04)
◆ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
◆ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
◆SHURE SE535(2011-01-13)
◆ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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