【BARKS編集部レビュー】新参カスタムIEMブランドLEARは「速い・安い・美味い」の衝撃3拍子

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中国ブランドDUNUの紹介記事でも触れたところだが、中国~東南アジアのイヤホン事情は、今恐ろしく熱い状況だ。中国のカスタムIEMブランドROOTHの魅力は、2回決行したリモールド(SHURE SE530の8ドライバー化とUE TF10のリモールド)でお伝えしてきたとおりだし、同じく中国のUnique Melodyも積極的なグローバル展開を見せており、世界中から大量のカスタムオーダーを受けている状況にある。

◆LEAR画像

▲LEAR LCM-2B。9モデルの中で真ん中に位置する価格帯のモデルだが、2ドライバーのベース強化モデルというこれが一番人気だとか。

▲LEARのサイト。3×3=9通りのモデルが用意されている。

そんな中で、今回は、香港の旺角(モンコック)という街にあるLEAR(リア)というカスタムIEMブランドを紹介したい。ビックリ価格でサウンドばっちりという驚愕のブランドで、これまでの常識から激しく逸脱したコストパフォーマンスをぶちかますブランドだ。

オフィシャルサイトを見れば一目瞭然なのだが、機能的というか合理的というべきか、LEARのラインナップは非常に個性的で興味深い。基本モデルはLCM1、LCM2、LCM3という3シリーズで数字がそのまま搭載ドライバーの数を示しており、それぞれに3種類のサウンドスタイルが用意されている。末尾に付いているF、C、Bという型番がそれで、F:フラット、C:クリスタルクリア、B:ベースを意味しており、全部で3×3=9通りのサウンドスタイルがラインアップされている。

今回私が手にしたのは、9モデルの中で最も人気が高いという、2ドライバーのベース強化モデルLCM-2Bだ。インプレッション(耳型)を発送してから4週間弱で完成品が手元に届くというスピーディーな対応もありがたいが、何より嬉しい誤算はそのサウンドの素晴らしさだった。

いや、実は最初に耳にしたときは、やっちまったか…と思うほど冴えない音だった。全体に膜が張ったように音は抜け切らず高域も頭打ち、低域強化モデルという割には太い低音は出ずボアボアとしまりのない音で、値段相応のクオリティーかとうなだれてしまった。こんな音じゃ紹介もできんな、とレビューをあきらめたのも束の間、ものの30分程度で曇り部分がみるみると晴れてきて、その後ろからくっきりとしたキレの良い音が少しずつ顔をのぞかせてきた。そうなりゃ俄然テンションは再燃するわけで、これはもしかするともしかしちゃうかも、とちょっとした躁状態だ。

その後50時間程度の間にみるみるとサウンドは向上し、最終的には素晴らしく引き締まった低音がドッカンドッカン出る最高にロックなサウンドを叩き出すアイテムとなった。高域も刺さらずそれでいてスコーンと抜けるハイのチューニングも良くできている。いわゆるドンシャリだとは思うが、ミッドの薄さを感じさせない抜けの良さとタイトさは、2ウェイならではの美点が存分に活かされているところ。そもそも小さなライブ会場だってアリーナクラスのコンサートだって、ロックのライブでは身体が震えるほどの低域が会場を支配しているし、そこに刺激的な中高域が響き渡る。あの会場の空気感をそのまま耳元で再現したら、ちょうどこれくらいのバランスだと思うんだよなぁ。

▲左からLEAR LCM-2B、Ultimate Ears UE 5 Pro、カナルワークスCW-L10。いずれも2ウェイ2ドライバーの構成を持つモデルで、基本的には同系統のサウンド。とにかくタイトで余計な付帯音のないソリッド&パワフルな音。低域の出方はLCM-2Bが最もパワフルだ。

▲右がLEAR LCM-2B、右がUnique MelodyのMerlin。低域充実のカスタムIEMとしてはUnique MelodyのMerlin(ダイナミック×1&BA×4のハイブリッド)が有力なモデルの筆頭だが、LCM-2Bの低域は量感的にはほぼ同等。LCM-2Bの方が引き締まっているので、ドライブ感はむしろ上。ゼンハイザーIE8/IE80にも似た柔らかさも含めた質感の高い艶めかしい低音のトーンに目を向ければ、Merlinに軍配が上がるところ。

▲左からLEAR、Ultimate Ears、Unique Melodyの各ジャック部分。LEARには特徴的な角度がつけられている。

▲クッキーが入っていそうな四角いスチール缶に入って送られてくる。説明書、円形のキャリングケース、ポリッシュクロス、クリーニングツールが付属する。

シェルのフィット感もパーフェクトだった。フィットの甘さによる歩行時のノイズも発生しないし、みちっと耳にへばりついたまま完璧な遮音が安定してキープされる。作りはコンパクトで軽く、ハウジングには必要最小限の空間しか用意されていない。2つのドライバーはノズルのすぐ下に位置し、鼓膜からの距離は最小限であるよう設計されている。ドライバーの設置やネットワークの取り付けなどは機能的で、省スペースとともに生産効率の向上や製作コスト削減への実践を垣間見せるところだ。

一方で、価格が価格だけに傷汚れひとつない美麗シェルというわけではないし、ブランドロゴも左右で位置がずれているなど、仕上がりはざっくりしており良く言えば大らか、厳しく言えば大雑把なところもある。ただし、シェル自体の透明度は他社と比べても随一の品質で、非常に美しいことは写真からお分かりであろうか。カーボンやチタンプレートといったフェイスプレートの飾り付けオプション類が一切用意されていないのはさびしいところだが、逆に、極力制作ラインをテンプレート化し、ローコストでどれだけ魅力的なサウンドを提供するかを最優先とする姿勢の表れなのかもしれない。

ケーブルも完全自家製とみえ、カスタムIEMではデファクトスタンダードとなっているいわゆるWestone系ケーブルとは全く違うオリジナルケーブルが付属する。とはいえ、コネクタ部の作りは共通しているので互換性は確保されている。付属ケーブルの皮膜はちょっとエナメルっぽい光沢をもつもので、多少タッチノイズが出るようだ。実際の使用上では問題視するレベルではないが、それよりも癖がつきやすく、くるくると輪を書いてしまうことがある。ワイヤーはないが、特に不便は感じない。ジャックはL字型ではあるが、斜め120度くらいの角度が付いており、不用意な力が加わったときに端子への負荷が少しでも分散されるよう気遣われているようだ。

さて、肝心な価格をお伝え忘れていたが、LCM-2Bは2,998香港ドルだ。おおよそ1香港ドル≒10円なので、なんと3万円ということになる。LCM-3(F、B、C)でも3,998香港ドル(≒4万円)、フルレンジシングルドライバーのLCM-1(F、B、C)に至っては1,998香港ドル(≒2万円)というから、初カスタムIEMへのチャレンジにも、複数を使い分けるカスタム猛者の新アイテムとしても、是非ご注目頂きたいアイテムなのだ。

9モデルをラインナップし「自分のスタイルにあったものを選び、音楽リスニングあるいはステージで使ってほしい」というのがLEARからのメッセージ。どのモデルがいいか迷うようであれば、まずはLCM-2Bでいつもの音楽を聴いてみて欲しいなあ。とにかく楽しくなるサウンドだから。この価格でこのサウンドだなんで、ちょっと興奮が収まらないっす。予備でもうひとつ色違いを作るか、別モデルにチャレンジしてみるか…さて、次はどうしよう。わくわく。

text by BARKS編集長 烏丸

LEAR LCM-2B
・Frequency response:20Hz~16kHz
・Impedance:10 ohm @1000Hz
・Sensitivity:116dB
・Driver:Dual Balanced armature
・Price:HKD 2,998

LEAR
●LCM-1F、LCM-1B、LCM-1C
1,998香港ドル(≒2万円)
●LCM-2F、LCM-2B、LCM-2C
2,998香港ドル(≒3万円)
●LCM-3F、LCM-3B、LCM-3C
3,998香港ドル(≒4万円)
◆LEARオフィシャルサイト

BARKS編集長 烏丸レビュー
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◆SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
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